2010年12月31日

インターネット原理主義 〜年末の長いつぶやき〜

TIMEの今年の人(Person of the year)は、Facebook創業者、マーク・ザッカーバーグでした(読者投票は2万票にも届かず10位)。
一方、読者投票で38万票以上を取り1位となったウィキリークスの編集長、ジュリアン・アサンジは選ばれませんでした。
票差は実に36万以上…。

その件で秀逸なツイート:

"Share government's secrets, go to jail. Share normal people's secrets, TIME man of the year!"
(政府の秘密をシェアすれば投獄。一般人の秘密をシェアすればTIMEの『今年の人』!)
anasqtiesh via @nofrills

Facebookの人権侵害
Facebookの情報が企業や政府にダダ漏れだということは前から割と問題になっています。
(詳しくはCriticism of Facebook @Wikipedia)

例えば、友人がアメリカに行った時の話。
友人は旅行がてら小遣い稼ぎもしようと思ってたらしく、そんなことをFacebookに書いたらしい。
アメリカに着くと、入国審査で「本当に観光目的なのか」をしつこく聞かれる。
友人がそうだと言うと、なんとプリント・アウトされた友人のFacebookのページを目の前に置かれ「じゃあ、これはどういうことだ!」と問い詰められた。
結局、友人は送還された。。

この話を聞いた時、驚くよりも「やっぱりそうなってきたのか…」という諦め、それから恐怖を感じました。

警察や諜報機関に重宝される(ギャグじゃないよ…)だけでなく、企業もまたfacebookの恩恵を受けています。勝手に自分の写真がどこかの広告に使われていたり、プライバシー保護の設定が頻繁に変わったり。(どんだけ変わってるかチェック!)

ちなみにElectronic Frontier FoundationがFacebookのプライバシー・ポリシーがどれだけ悪化しているかを検証しています。→Facebook's Eroding Privacy Policy: A Timeline


現在の利用規約の2.1

Facebookで、またはFacebookに関連して投稿したIPコンテンツを使用する、非限定的、譲渡可能、サブライセンス可能、使用料なしの、全世 界を対象としたライセンス(以下「IPライセンス」)を弊社に付与します。このIPライセンスは、コンテンツが他の人と共有され、その人がそのコンテンツ を削除していない場合を除き、ユーザーがIPコンテンツまたはアカウントを削除したときに失効します
写真もプロフィールも企業や警察に配り放題。
Facebookで誰とも共有されない写真とかないって…。アカウント削除も難しいし。
そもそも企業への情報流出はミスでも何でもなく、ビジネス・モデルに織り込み済みの現象なのです。

さらに4.登録とアカウントのセキュリティには
Facebookでは、ユーザーの皆様に実名および実在の情報を提供していただいています。
とな。つまり、ニックネームとかはそもそもありえない。
4.3
アカウントが弊社によって停止された場合、弊社の許可なく新たなアカウントを作成することはできません。
一度消したら、2度と使えない。
4.7
ユーザーは連絡先情報を正確かつ最新の状態に保つものとします。

こういったことでパーソン・オブ・ザ・イヤーってことなのでしょうか。

(ちなみにmixiの利用規約は一応まともで、「ユーザーご本人の同意を得ずに第三者に提供することは原則としておこないません」となっています。ただし、ゲームなどのアプリケーションは第三者がやっているため、そっちから漏れることもあります。ってか実際ありましたね。→ミクシィ、4200人の情報が3日間「露出」

ネットの魅力はDistributed(分散型)であること
こうした問題の原因のひとつ、それは、Facebookが中心型だということ。
一ヶ所に情報が蓄積され、その莫大な情報によってFacebookが権力と化す。まさに中央集権!

インターネットの本来すごいトコって、双方向どころか複数方向でのやり取りが可能だということだと思います。
BitTorrent(日本ならWinnyも)に代表されるPeer to Peer(P2P)はその最たる象徴。
中心がなくても成立する構造です(特にピュアP2P)。


そりゃ、アナーキーです。

んでもって、イデオロギーとしてのアナーキーでなく、そこにもうシステムとしてちゃっかりしっかり存在し機能しているアナーキー。
さらにはオープン・ソースコピーレフトCreative commonswikiなどなど、
知的財産所有権にカウンターパンチ!
それによって下手したら何千年続いてきた私的所有の概念にローキック!
(ウィキリークス、東京発の公電2717点にOIIP[International Information Programs/国際情報プログラム]のタグがついているのもうむうむと納得してしまう。)

あと、みんなで作ったりやり取りした方が早いし効率的だし面白いじゃん!という至極当たり前なコトがAndroidとかLinuxなどなどの発展を見ると本当に実感できます。受動的なユーザーにでさえ。

クローズド・ソースを死守しようとするMicroSoftやAppleは企業に嘘ついたり脅したりまでしてWindowsやMacを使わせようとしてます。
あの老舗リークス、もといCryptomは、MicroSoftが個人情報を当局に売り渡すだけでなく、読み方ガイドまで作ってあげていたことを暴露しています。
(暴露→サイト閉鎖→利用者怒る→プロバイダー謝る、の過程も含めてちゃっかり公開されてます)

一方、Linuxの生みの親、リーナス・トーバルズは他のOSを敵視するなんて的外れなことはせず、「OS縁の下の力持ち」論を語っています
リーナス・トーバルズ氏「OSは誰からも見えない存在になるべき」

とにもかくにも、理念と実践が一致しちゃう、それがインターネット。(だって実践が先立ってるから)

今さら、何をそんなことと思う人も多いかもしれないけど…。
ちゃんと考えるようになったのはここ1、2年なんだもので…。

Youtube(またはニコニコ動画)とFacebook(またはmixi)を使ってるだけじゃネットの魅力の半分も分かりません。
なぜならそれらは中心型だから。いやはや、勿体ない。

そんな中、SNSも中心型をやめて分散・水平ネットワーク型にしようぜぃという動きが当然ながら出てきました。いわゆるDistributed social network
いろんなプロジェクトがある中、ついに本格的に始動したのがDiaspora
私はまだ使ってないから、どんな感じかは何とも言えないけど、分散型ソーシャル・ネットワークっていうアイディアには大賛成。

ちょっとでも意識的にオープン・ソースのものを選ぶだけでも、もうそれだけで人はネット活動家を自称していいと思います。
あと、crypto-anarchismによってちょっとシャイで臆病な人も、情報発信するネット活動家にもなれます。
(Tassaもチキンです。犬ですが。)

OSはLinuxを使い、ブラウザはFireFox、SNSはDiaspora(例えばですよ)。
そうしたらもう立派なインターネット原理主義者(かもしれない)。。

2011年はインターネット原理主義がはびこりますように。
よいお年を!




※ネット活動家の読み物
Christopher Kullenberg 2010. Det nätpolitiska manifestet[ネット・ポリティクス宣言]. Ink bokförlag.
テッサ・モーリス=スズキ (2004) 「知の囲い込み」(『自由を耐え忍ぶ』第4章)岩波書店

2010年12月28日

ついに完成!全公電、タグ・フル表示の一覧表! #cablegate #wl_jp

全公電の発信元、日時、タグなどが公開されていることは以前書きました
だけど、タグは略語で分かりにくく、いちいち確認しないといけない。だから、この全公電リストも見づらい。

で、面倒くさいからTassa Leaksで作りました!
タグが略語でなくフル表示されるデータベース表を★
Cabletagsという素晴らしく便利なサイトを元にして作りました)

すごい地味ですが、これからどんな公電がアップされるかが気になる方や、すでにアップされた公電のタグについて改めてチェックしたい方、さらには全公電を入手したけど検索が面倒いという人にまで、いろいろ活用できる便利な表になるかもしれませぬ。

※当然のことながら、公電の中身は含まれていません!

Every leaked United States embassy cables with source, date, time and full tags, excluding body text.

all-cables-full-tags.csv at Google fusion tables(リンク):
http://www.google.com/fusiontables/DataSource?snapid=120740

all-cables-full-tags.csv at Google Docs (53.7 MB)(ダウンロード via Google):
https://docs.google.com/leaf?id=0Bznx-0VjnZqyNzBkYmM1Y2YtNDUxOS00NDY2LTkxNDUtYjk5ZmM1YjE0MWU2&sort=name&layout=list&num=50

all-cables-full-tags.csv.zip at Ubuntu One (5.3 MB)(ダウンロード via Ubuntu One):
http://ubuntuone.com/p/Vd4/

Analysis made by:
http://tassaleaks.blogspot.com

---------------------------------------------------------
Original leak:
http://wikileaks.ch

Original CSV file:
http://www.guardian.co.uk/news/datablog/2010/nov/29/wikileaks-cables-data

Wikileaks Cable Tags explained:
http://cabletags.wordpress.com

明石康がLTTE問題で頑張ったらしい:日本に関するリーク 〜その5〜 #cablegate #wl_jp


タミル・イーラム解放のトラLTTE)関連の公電がノルウェー紙のアフトンポステンから出ていました。

日本のタグはついていないもののLTTEと交渉する明石康氏の活躍が書かれています(この人が1999年、都知事になってたらどうだったんだろうな…。自公が推したのがまずかったのか)。
内容としては「不都合な真実」というより、大使とか特使とかいう人たちって結構真面目にまともなことやってるんだ、と思わせるある意味「好都合な真実」。
また、newsworthyと言うより、歴史的資料。いわゆるオタク向けかもしれません。

ただし、なぜスリランカに駐在するノルウェー大使や大塚日本大使がアメリカ大使に一部始終を報告しているのかは疑問。他の国の大使全員にこういった報告をしているとは思えないから。

以下、公開された3公電の冒頭要約部分のみ邦訳しました。

#03COLOMBO755
2003.05.06

***
件名:ノルウェー人、日本人がタイガー[訳注:タミル・イーラム解放のトラのこと。以後タイガーと表記]に、話し合いに戻り、支援国会議に出席するよう勧告

1.C)要約:ノルウェーと日本の代表者はタイガーが和平交渉に戻り、6月の支援国会議に出席するよう説得を執拗に試みた。今のところ、タイガーは協力的ではない。彼らの考えを変える次なる機会は、日本政府からの明石特命大使が5月7日、タイガーのリーダーであるプラバカランに会うときである。その他の和平関連のニュースは、首相が5月6日の議会演説でタイガーに対し懐柔的だったということだ。現時点では、タイガーが強硬路線から譲歩するかどうかは半々といったところである。要約終わり。

***

#03COLOMBO773
2003.05.08 

***
件名:タイガー日本特使に会う、和平交渉に戻ることに関してはどっちつかず

1.C)要約:日本の明石特使は5月7日タイガーのリーダー、プラバカランに会い、LTTEが和平交渉に戻るよう勧告した。明石は、タイガーが東京で開かれる支援国会議に出席するかどうか最終結論を出すのに1週間の猶予を与えた。プラバカランは、スリランカ政府が彼らの長年の要求 ーー 援助と安全保障ーーを飲むなら、タイガーも協力的になると示唆しながらも、彼の応答はどっちつかずのものであった。要約終わり。

***

(話は横道にそれるが、この公電ではLTTE側のGeorgeという通訳についての言及があり、彼のスキルには問題ありということや、大塚駐スリランカ大使が空手の茶帯を持っているということでプラバカランと話が盛り上がったということまで書かれている。どうでもいいっちゃいいけど、ちょっと面白い。)
結局、LTTEは東京には来なかった。

その3年後。
停戦合意が破られたり、すったもんだあって、EULTTEをテロ組織と指定する寸前の時期。

#06COLOMBO872
2006.05.25

***
1.C)要約:スリランカ政府代表は、軍隊の少なくともある一分子は非正規の武装勢力と協力関係にあることを認めた。政府はこれを取り締まろうとしており、政治的解決のための提案も進めている。EUは5月29日か30日にLTTEをテロ組織と指定する模様だが、この問題をどう処理するかで内部でも意見が分かれており、このことは東京での議論に影響を与えるかもしれない。ノルウェーのハンセン=バウアー特使はスリランカ政府に想定を吟味するよう強く求めており、また関係各位が交渉につくための新たな方法を模索してもいる。要約終わり。

***

会合の模様(Tamil Netより

ちなみに去年5月にプラバカランは殺され、LTTEは政府に制圧されました。
LTTEはノルウェーで活動している人も多く、ノルウェーでの関心は高め。
Aftenpostenでは、LTTE関連の公電をここに挙げた以外にもかなりアップしています。

[追記]
公電の文書番号を追加しました。
Aftenposten紙が公開した公電のまとめサイトを参考にしました。
nofrillsさんに教えていただきました。

2010年12月27日

暴動の裏に国家の民衆操作あり 〜アフテンポステンより #cablegate


1217日、ノルウェー紙のアフテンポステン(Aftenposten)がウィキリークスから25万の米国外交公電全てを入手したと発表した。
どんな公電があるのか、ちらっと見たが、やはり北欧関連の公電が多い。その中には、日本でも割と報道されたムハンマド諷刺画事件に関する公電もあった(ちなみにスウェーデンでも似たようなことがあり、Lars Vilkという諷刺画家は家を燃やされたり、講義中に襲われたり、未だに命を狙われまくっている)。諷刺画は各国のイスラム教徒らを怒らせたのだが、シリアでは政府が影で暴動を起こすよう操作していたという内容の公電。

まず、暴動が起きた翌日の公電。


***
2006.2.5 反欧暴徒がダマスカスで発生、4大使館が荒らされる

(C)要約:2月4日午後、欧州で発出た預言者ムハンマドの諷刺画に怒った暴徒が、ノルウェー大使館と、デンマーク大使館、チリ大使館、スウェーデン大使館の3つが入っている建物を荒らし回ったり、火をつけたりした。暴徒は第一の大使館(ノルウェー)を破壊し、他3つの大使館(丁・智・端)を著しく損壊した。数百人のシリア機動隊がアメリカ大使館の警護にあたり、怪我人も出ず、物の損壊もなかった。デンマークは、ノルウェー同様、大使を帰国させ、同国民にシリアから即刻出国するよう促した。誤算が出たり、統制不能に陥ったり、恥をかくことになるにもかかわらず、シリア体制側はこの暴動のおかげで正統性を高めることになり、いくつかの方法で利益を得たようだ。要約終わり。

***

そして、その3日後。


***
2006.02.08 暴動の数日前から状況激化にシリア・アラブ共和国政府が関与していたと、シャイフ認める

(C)要約:影響力のあるスンニ派のシャイフが2月6日の事件に関するの詳細を伝えてきた。それによれば、ダマスカスの暴動が起きる2日前から、状況悪化にシリア政府が関与していたと言えるだろう。政府の関与とは、首相官邸と大ムフティの間の情報のやりとりも含まれる。シャイフはまた、シリア政府当局が、事件の罪をなすりつける2、3のスケープゴートを特定しようとしているとも言った。これとは別に、デンマーク大使に確認したところ、Awqaaf省(宗教省)大臣が暴動の前日、モスクでの金曜礼拝で、状況を煽ったということが分かった。要約終わり。

***

具体的な内容としては、

・金曜礼拝に来ていた教徒に対し、どんな表現でもいいから諷刺画への怒りを煽れと説教者に命じた。
・広場で旗を立てたり、垂れ幕をかけるのには通例許可がいるのだが、どうやら許可をとった上で「暴徒」は旗を立てたんだとか。
・政府やムフティと通じている富豪実業家が、携帯のショート・メールを使ってデモに来るよう呼びかけを行った。
・デモが十分荒れ、欧米に「怒りのメッセージ」が伝わったところで、今度は実力行使で暴徒鎮圧にかかった。
・今は煽動者のスケープゴートを誰にしようか思案中。

と、いうようなことが書かれている。

個人的にはスウェーデンは何もしなかったんかい!とちょっと思ったり。

ある政治的意図&権力が暴動(その反対とされる「民主」革命も含め)を操作するということがままあるということの一例になったのでは。
こういった政府の民衆操作はあまりにも多いので、「またか…」と、こちらも麻痺してくる。
でも、やっぱりひとつひとつこの事件はこのような操作があったということを確認した上で、批判の土台を作るのはやっぱ大事。自戒を込めて、慣れたらあかん。

2010年12月24日

知的所有権を克服できるか #cablegate #wl_jp


まず、嬉しいお知らせ。
ついに国連が、米州人権委員会と一緒にウィキリークスに関する共同声明を発表しました。
同サイトのアメリカの、私企業に働きかけて同サイトをシャットダウンするような強引なやり方をはっきり非難し、情報アクセス権など言論の自由を守れとしっかりくっきり言明しています。邦訳はこちら

で、本題。
アメリカがスウェーデンの知的所有権・著作権強化に影響を与えようとしたことが分かる公電を以前のエントリで紹介しました。

その公電自体はウィキリークスには、まだアップされていなく、SVTで伝えられただけでした。とあるブログで原文の一部を紹介していたのですが、1219日に、海賊党の党首、Rick Falkvingeのブログで全文が公開されました。

前回のエントリを上書き(全訳アップ)したので興味のある方はご覧になって下さい。

611が、アメリカがスウェーデンに課した6箇条の内容となっており、前回はその部分が欠けていました。アメリカが、インターネットの規制に関してどのような具体的な指示を出したかが書かれています。

そして興味深いのは、1415段落。特許医薬品の値下げについてアメリカが好ましく思っていないことが書かれています。端的に言えば、アメリカの製薬会社が稼げるようにしたいから。一見、インターネットと何の関係もなさそうなこのテーマも、知的所有権という大きなテーマでつながっています。

知的所有権や著作権は私的所有の極致です。情報や音楽といった無形のものまで線引きされるわけですから。でもネットという場は囲い込み(エンクロージャー)には向かない。(海賊党のTrobergとアサンジの写真にはCopy-rightの代わりに、Creative commonsのマークが燦然と輝いている。)だから、私的所有の矛盾が一番現れる場所なのかなと。
(医療知識も共有され、公平に提供されるべきなのですが、いったん市場化してしまうと難しい。ヒポクラテスの誓いなんて簡単に破られている現実…)

そのネットを無理やり私的所有の枠に当てはめようと、アメリカはずっと「努力」してきました。ACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)含め、言論の自由を追い詰める政策が世界規模でとられてきました。青少年健全育成条例もその流れのひとつ。子どもが重要な鍵を握るのは、件の公電の11を見れば一目瞭然。知的所有権の普及教育がミッションの1つとなっています。(こういった議論に関する素敵なエントリ→青少年条例案・GFWほか各人権侵害政策の現状

件の公電(20093月)には、知的所有権(IPR)が専門の警察官はスウェーデンにはいないとなっています。しかし、その「努力」のかいあって、20096月には15人のファイル共有問題専門の警察官が誕生しています。
参照記事Fler poliser satts in mot fildelare(Svenska Dagbladet)
(ちなみに記事によると、この15人はそれぞれ違う部署から引っ張られてきたそうです。その部署の穴はどうするんだ…と、まず思ってしまう。)

そういった文脈で考えても、冒頭で触れた共同声明の意義は大きいです。とても。
とりわけ、4と5はプロバイダーなどの私企業の恣意的な決定でユーザーの権利を侵すことはできないとはっきり述べている。

この路線が各国で受け入れられれば、今回のウィキリークス騒動の最大の成果となるかもしれません。そしてその成果が、もう出始めているかもと思わせるニュース↓

P2Pとかその辺のお話)

深刻なリークもあり、やるせない気持ちにもなる中で、180°とはいかなくても、30°くらいは世界はひっくり返るかもと思わせてくれた共同声明でした。


2010年12月21日

老舗リークスとウィキリークス

[追記]
今年4月、ガーディアン紙がすでにCryptomeのウィキリークス・リークについて詳細にまとめていました!
Who watches WikiLeaks?(これ訳した方が早かった…)
norfillsさんのツイートで知りました。

***

とある新聞のコメント欄に、
「なんでウィキリークスなんてのがこんなに騒がれてるのか、俺にはちっとも分からんよ。だって、こんなの新しくも何ともないだろ。」
とありました。

私はまた、お馴染みの「ウィキリークス意味なし」論者か…と思っていたのですが、よく読んでみると、

告発サイトなんてものは前からあったのに、何で今さらウィキリークスだけがこんなに注目を浴びてるの?ということをこの人は言いたかったようでした。

告発サイトは確かに昔からありました。
(ウィキリークスはプレゼンがとてもうまかった、ということは大きいとお思います。アサンジも表に立つ人間という点では、かなり好ましい見た目と話術がありますし。)

そういった老舗リークスとも呼べるようなサイトの代表格がCryptomeです。



Cryptomeは1996年から、在野の研究者と、設計者のJohn YoungとDeborah Natsiosによって運営されいて、2010年11月までに58,000のファイルを公開してきました(25ドルでそのアーカイブDVDも売っています)。

サイトいわく、
Cryptomeは政府が発行を禁じているドキュメントを受け付けます。特に、表現の自由、プライバシー、暗号、民間及び軍両用のテクノロジー、国防、諜報、密約(公開または機密になっている書類)についてのドキュメント。ですが、それらに限られているわけではありません。

とのこと。

戦争関連のリークは、特に注目を集め、その結果、政府からもマークされるようになりました。
(サーバーダウンとか、FBIがやってきたりとか)

先輩にあたるCryptomeを、当然ウィキリークスも認知していたわけで、ウィキリークスとCryoptome設計者のYoungは2006年から2007年にかけてメーリング・リストを通じた交信がありました。

全部をきっちり読んだわけではないのですが、どうやら最初は協力的だったYoungが徐々にウィキリークスのやり方が気に入らなくなったようで、その結果、「秘密のメーリング・リスト」でのやり取りを、なんと自分の告発サイトで公開してしまったのです。

Youngはウィキリークスのやり方はCIAとかソロスのやり方と一緒だ、と非難しています。
「中国の反政府活動家がこっそり米国や中国からたんまりもらっている[ウィキリークスだって、裏からもらってるんじゃないか?ということが言いたい]。何が連帯だ!」

「お前らは詐欺師だ!俺はこのメールを公開するからな!」

とかなり強い調子。

それに対してアサンジは
「ジョン、それはやめてくれ。君はこのメールを受け取ってるんだから、隠し事なんてしてないって分かるだろう。」
「我々がCIAの手下だって君が思ってるとしても、メーリング・リストにいる人間全員をそういう風に扱う(晒す)べきじゃない。」
と答えてます。

まあ、結局Youngは公開したわけですが。

これを読んでいると、初期の手探りの状態も垣間見れます。(誰がメンバーなのかお互い分からない、そのことを楽しみながらもちょっと不安である、とか、自分の電話番号は公開しないで~とか)

あのダニエル・エルズバーグにもコンタクトをしていたようです。
リークの達人であるあなたに指示を仰ぎたい、そして保護者の立場になってほしいとお願いしています。ちなみに、そのメールには、2006年の時点ですでに13ヶ国から100万以上のドキュメントを受け取っていると書かれています。

なかなか返事が返ってこないもんだから、「ああ、ちゃんと届いてるかな。迷惑メールに分けられてるとかないかな。誰かエルズバーグのメール・ボックスをチェックしないか。」と心配していたよう(笑)

2007年の1月にやっと返事が来たと思ったら
「いやー、君らのサイトは相当やばいね。幸運を祈るよ。あと、サイトで僕を引用してくれたのは嬉しいけど、あれ、本当はアビー・ホフマンが言ったんだよ。自分はバカで傲慢だったかもしれないなあ。でもあの時ほど僕はもう若くないから。」
とだけ書かれていました。

個人的に印象的だったのは、アサンジの「言葉づかい」に対する洞察。

「僕たちは言葉づかいについて一貫性を持つべきだ。単語やフレーズは、使われ方や経験と共鳴して、意味を抽出する。たとえば、『よくある質問』のところで、『倫理的なリーク』というフレーズがたまに使われているが、僕たちはこのフレーズを常に使うべきなのか?『リーク』という言葉自体はネガティブな意味をを帯びる。『倫理的』は非常にポジティブだ。『倫理的なリーク』はポジティブ。だけど、『リーク』に『倫理的』をくっつけている限り、『リーク』だけ切り離したとき『リーク』は非倫理的ということになる。このフレーズや他の言葉から離れてみることはできないだろうか?『倫理的リーク・ムーヴメント』。力強い。だけど、このフレーズで僕たちのヴィジョンの熱気は消えてしまわないだろうか。

僕らなりの『イラク自由作戦(Operation Iraqi Freedom)*』の言葉を、僕たちは見つけなければ。もっとも病的で邪悪な僕たちの敵でさえも、夜には思わず口ずさんでしまうようなそんな祈りと浄化の言葉を。

僕らには新たなフレーズが必要だ。『リークまとめ役』、『メール送信ボランティア』、『倫理的漏洩者』『WLサーバー・オペレーター』などなどに替わるフレーズが。」

*訳注:「不朽の自由作戦」への挑戦として。

以下、原文。
> We should be consistent in our use and invention of language. A word or
> a phrase extracts meaning from its resonance with other usages and our
> experiences.  For instance in the FAQ we sometimes use the phrase
> "ethical leaking". Should we always use this phrase? 'leak' by itself
> carries a negative. 'ethical' a strong positive. 'ethical leaking' a
> positive. But it does isolate 'leaks' as being non-ethical unless we
> stick 'ethical' on them. Can we make a movement from this phrase and
> others? 'The ethical leaking movement'. Powerful. Can it survive the
> heat of our vision?

> We must find our own 'Operation Iraqi Freedom' s -- blessings and
> sanctifications that even our most diseased and demonic opponents will
> find themselves chanting to each other in the night.
>
> We need a phrases for 'leak facilitator', 'mail drop volunteer',
> 'ethical leaker', 'wl server operator' etc, etc.

言葉が思想や運動を形作る、ということを大事に考えている人なのだなと感じました。
また、リークが誰かを傷つけるかもしれないということに対して、決して無頓着でなかったということも感じ取れます。

ちなみに、これに対して仲間の1人は、
確かにWLが批判されるとすれば、無差別なリークという点かもしれない。でもWLが倫理的だということを強調しておくのはいい考えだとおもうけど。
と応答しています。

話が脇道にそれて申し訳ないのですが、wikileaks.infoというWLのコピー・サイト(ミラーでなく)を巡る議論があるようです。

このMLを見ると、wikileaks.infoはwikileaks.orgと同時にできたことが分かります。

今確実に分かっていることというと、
wikileaks.infoは

非公式サイト
wikileaks.orgのドメインがリダイレクトされている
今のところ有害サイトではない(将来的な可能性は示唆されている)
ロシアの犯罪集団のサーバー(Webalta、通称Wahome)にある
wikileaksは認知してきた(少なくともアサンジがガーディアンで公開ツイート・チャットに参加した12月3日までは)

などです。

このロシアのサーバーというのがSpamhausが懸念している一番の原因と思われます。
実際、有害サイトは多いので。
でも、どんなサイトでも放置状態、規制がないので、「危ない」サイトにとっては使い勝手がいいのも確かです。だからなのか、Anonymousもこの危険なサーバーを利用しています。
これ以上のことは、分かりません。
点と点をつなげていろんなことを想像できますが、はっきりしたことが言えない今、とりあえずは、このサイトについてはここまでにしておきます。

2010年12月19日

東京発の公電の基本データ #cablegate #wikileaks

なかなか東京からの公電はアップされないですね。
でも、全公電の日付とタグは公開されているのをご存知でしょうか。
例えば、ガーディアン紙。
初日の報道で基本的なデータを紹介しています。

WikiLeaks embassy cables: download the key data and see how it breaks down

同記事にあるリンクの
DATA: every cable with date, time and tags, EXCLUDING BODY TEXT (via Google fusion tables, subject to heavy traffic)
(Google経由で)

または

DATA: every cable with date, time and tags, EXCLUDING BODY TEXT (Zipped CSV file, 3.1MB)
(ダウンロード形式で)

で、公電の発信元、日時、タグがチェックできます。
(今更という感じもしないでもないですが…)

東京発の公電のほとんどが2005年〜2010年。
それ以前は1985年が2点、1990年、1992年、1993年、1995年が1点ずつとなっています。
その理由は、同記事を読むと分かります。

今回リークされた公電はSIPRNetというインターネット・システムが使われています。
(Top secretがないのは、そうした情報のやり取りは別のシステムで行われているから。)
911以降、情報の共有化を目指し、各国にある米大使館がSIPRNetにどんどん参加するようになりました。
つまり、それ以前はあまり使われていなかったからなのです。

議題が分かるタグを見てみると、
2717点の公電にOIIP(International Information Programs/国際情報プログラム)のタグがつけられています。

さらに、

2026点にPINR(Intelligence/諜報機関)
1861点にELAB(Labor Sector Affairs/労働部門)
300点にPHUM(Human Rights/人権)
36点にPINS(National Security/国防)
32点にPHSA(High Seas Affairs/公海)
2点にPROP(Propaganda and Psychological Operations/プロパガンダ・心理操作)

のタグがついています。

国別で見ると、

456点が KN(Korea (North)/北朝鮮)
209点がCH(China (Mainland)/中国本土*)
60点がRS(Russia/ロシア連邦)

とあります。
(全部のタグを調べたわけではなく、思いついたものや、パッと見て多そうなものをチェックしただけですので、あしからず。)

なんてことを、ちんたら調べてたら…
もっとすっきり、さっさと整理してくださった人が!(英語ですが)

Wikileaks and Japan – an idea of what to expect (1985-1995)

Wikileaks and Japan – an idea of what to expect (1)  

(上記エントリ、いずれもTokyo Digital journalismから。 )

このエントリを和訳した方が良かったかも…。
同ブログで、アフガニスタン戦争のWar Logsの中から日本に言及した資料をピックアップして、目次まで作っている…。
これを見て「科学ジャーナリズム」という言葉を、改めて心に留めようと思いました。
いや、仕事が早い!

全公電中でJA(日本)のタグがついているのは 7122点。
5697点が東京発の公電と言われているので、単純計算すると1425点は他国にある米大使館からの公電ということに。

余談ですが、エルサレムの大使館からの公電も2217点と多い。
てか、エルサレムに米大使館があったことすら知らなかった。

あらためてデータを見ると面白いかもしれません。

2010年12月17日

ストックホルムでの自爆「テロ」とWikiRebels放送のタイミング

先週土曜日11日にストックホルムで自爆「テロ」(これをテロと言うべきなのか、私には分からない)が起きました。

その事件に関する不可思議な点について同ブログで言及しました。

補足すると、軍関係者が事前に事件がどこで起こるかなどを知っていたという記事、Dagens Nyheter(DN)ではまだ読めます。

DNや他紙は、TT(スウェーデンの通信社)からの情報をもとにこの報道をしました。TTは、かなり慎重にニュースを流すことで有名です。そのTTが「信用できる情報筋によると」と言っているのは重要な点だと思います。
(情報筋を曖昧にしているのは、情報提供者の特定を防ぐためだと思います。)

TTが国防軍や公安にこの情報に対するコメントを求めたところ、ノーコメントだったそうです。

私自身はいまだに、この件に関する訂正記事を見つけられていません。


ところで、SVT(スウェーデン・テレビ)が製作したWikiRebelsというドキュメンタリーについてのエントリーを覚えていますでしょうか?
(普段は海外からアクセスできないSVT Play(SVTのネット配信映像コンテンツ)も、この番組に限ってはアクセスできるようになっているんだとか。)

放送は12日。自爆「テロ」の翌日でした。

本来であれば、ドキュメンタリーのあとに、討論番組Debattが予定されており、そこにはウィキリークスと協定を結んでいる海賊党の副党首、Anna Trobergも出演予定でした。

 しかし、自爆「テロ」のために討論番組は中止。

番組ページのコメント欄には
「今日、見れる番組ができた(^_^)」との視聴者のコメントに続き、

Troberg本人が

「残念だけど、今日は私を見ることはできないよ。昨日の爆破事件のせいで、ギリギリになって番組の一部は延期になっちゃたから、私は出ないんだ。でも番組(ドキュメンタリー)は見てみて!絶対見る価値あり。」

とコメントを返しています。

タイミングがよすぎるなあ、というお話。。


Assange&Troberg

ちなみにTrobergという名字を訳したら、「信山」。信がつくなんて、よくできた名字。

スウェ─デン議会選挙がウィキリークスに与えた影響 #cablegate #09STOCKHOLM141


[追記]
とんでもない誤訳をしてました。公電の題名、AARGH! SWEDISH PIRATES SET SAIL FOR BRUSSELSのAARGHは海賊(党)の雄叫びで、これを書いた人間の悔恨の叫び(もぉぉぉぉ!)ではないです。訂正しました。 

[追記2]
 公電の特定タグは09STOCKHOLM141と判明。
また、海賊党の公式ホームページに、公電に関する英語の記事が載りました。

 
***

海賊党がアメリカにとって脅威だったのは間違いありません。
彼らは、まったく自由なインフラ作りを呼びかけたわけですから。

今回リークされた外交公電によって、アメリカの海賊党を潰したいという意図が白日の下さらされました。

海賊党に関する公電を紹介します、と言った翌日、偶然にもガーディアン紙で海賊党関連の公電が取り上げられました。
どんな内容の公電に関心があるかというのを読者に募集したところ、海賊党関連のものも多かったようです。(問い合わせたのはネット・ユーザーが多いから、ということかもしれませんが)
WikiLeaks cables: You ask, we search

ガーディアンで取り上げた公電は
「がおぉぉぉ!スウェーデンの海賊がブリュッセルに出航した(AARGH! SWEDISH PIRATES SET SAIL FOR BRUSSELS)」というタイトルのもの。

パイレート・ベイを閉鎖に追い込んだ政府決定が気にくわない若者が支持したという分析があり、

著作権や特許権関連の法律を変革し、盗聴法案に反対である海賊党は、選挙の勝ち組だと書かれています。(公電ではwiretapping lawと率直な表現が使われているのが面白いです。)

すでに記事の翻訳が!
→ 海賊党の成功、スウェーデン政府に対する若者の不信 (ウィキリークス・ウォッチ・ジャパン)



さて、実はもうひとつ海賊党関連の公電があるのですが、チェックしたら、実はこれ、まだウィキリークス本家に上がってないのです。
SVT(スウェーデン・テレビ)のニュース映像でのみ、テキストが見れたのですが14日に期限切れとなってしまいました。
この放送されたテキストをあるブロガーが転載し、それをTassaが訳したというわけです。

そのブログはこちら→ Krafsklotter

ウィキリークスにまだアップされていない公電ですが、

・SVTが放送したということ
・ガーディアンの関連記事
・公電が打たれた時期の政治状況

を考慮すれば、これは本物だと思います。
(SVTがウィキリークスに申し込んで、公電25万を取得し、独自取材で発見したということだと思います。)

ただ、本家にないものなので、アップされるまでは転載するかは個人の判断にお任せします!

また、件のブロガーは何かのソフトウェアを使って、テキストをコピーしたと見え、欠けや変な表記が混じっています。また、公電は完全なものではありません。

SVTがカラーにした部分を本翻訳文でもカラーにしています。

***
要約。

スウェーデンが2009年の監視国(Watch List)という立場でなく、スペシャル301条を率先して進めていく立場を取り続けることを、ストックホルム大使館は推奨している。我々は、国際知的財産連盟(IIPA)と米国製薬工業協会(PhRMA)が異なる勧告を出していることを認識している。スウェーデン政府は、昨年我々と話し合ったスペシャル301条イニシアティブ行動計画の6項目のうち5項目を達成した。また、スウェーデンおけるインターネット上の海賊行為を是正強化するためにスウェーデン政府がやり遂げなければならない微妙な国内政治問題がある。大使館[訳注:原文ではpost]からの勧告は以上の2点に基づいている。スウェーデン政府は、善意を持って、非常に否定的なメディアの風潮と若者の間で盛り上がっている運動に取り組むこと。例えば、我々が特に注意したいリスクがある。それは、ファイル共有問題に関するメディアの否定的な見方が、2009年6月の欧州議会選挙で海賊党に有利に働くというリスクだ。

2.(SBU) この公電は、スペシャル301条2008年レビュー(B参照)の結果、我々がスウェーデン政府に提示したスペシャル301条イニシアティブ行動計画の達成率を再検討したものである。大使館【post】はスウェーデン政府内と非常に建設的に関係を築き、ス政府高官の重要人物とも通じており、良好な関係を持っている。昨年のレビュー後にあった行動により、法的枠組みを強化され、海賊行為に立ち向かうより良い法的手段もが整った。パイレート・ベイ公判はストックホルム地裁で現在審理中である。公判最終日は3月4日で、判決は3月25日あたりに出ると言えるだろう。

3.(SBU)[ストックホルム大使館]は、現時点でウォッチ・リストはスウェーデンに対し逆効果だと思っている。ウォッチ・リストに入ることに対する、政治的及びメディアの否定的な反応は考慮に入れなければならない。この件に関する主要責任者である法務大臣は、しかと覚悟しており、何が喫緊の問題かということも分かっている。ネット上の海賊行為を抑える適切な次の段階については、現在、企業・エネルギー・通信省と争議している。今や、知的財産権強化法[IPRED法のこと]の実施はついに4月1日施行されようとしており、 パイレート・ベイ訴訟の最初の地裁判決もすぐであるから、法務大臣の注意は他の重要問題に向けられている。とりわけISPの責任問題や追跡能力を上げるさらなる手段についてである。(法務大臣に牽引されている)ス政府は、この問題を推進するために繊細でバランスのとれた行動をとらなければならない。時期は、スウェーデンがEU議長国になる直前、オバマ政権の初期、欧州議会選挙の選挙活動が始まる頃だ。

要約終わり。


背景 ----------
4.(U) 国際知的財産連盟(IIPA)は、スペシャル301条年次報告をアメリカ合衆国通商代表部(USTR)に送った。報告では、ネット上で広がる海賊行為や、スウェーデンで問題になっている犯罪的著作権侵害を是正する効果的な法執行が難しいということが認められている。またIIPAは、スウェーデンが2009年、スペシャル301条にの監視国となるよう要請した。産業界からの要求があったにもかかわらず、スウェーデンは2008年には監視国と指定されなかった。むしろ、比較的最近になって徐々にスペシャル301条イニシアティブとして名前が上がるようになっていた。イニシアティブの一部として、大使館【post】はスペシャル301条行動計画をス政府に伝え、そこには米国政府が2008年中に達成を望む6項目も載っていた。



行動計画の進捗状況報告
5(U) 2008年スペシャル301条イニシアティブ行動計画には6つの特定領域における勧告が入っていた。ス政府は、程度は異なるが、このうち5つの領域で役割を果たした。6領域における進捗状況について次の6-11のパラグラフにある。
6(SBU)産業協議会/ISP[インターネット・サービス・プロバイダー]の責任:2008年の秋/冬に、ス政府は産業協議会を開いた。一連の協議会は、プロバイダーと著作権団体による自主的な産業協定について議論するという明確な目的があった。産業界関係者が伝えたところによると、プロバイダーは自主的に何か行動することは気が進まないようだ(プロバイダー側は[気が進まないのではなく]できないと言っている)。2008年秋の協議会第1ラウンドは何の成果もなく終わった。法務大臣は現在ス政府内で、第2ラウンドで承認が得られるよう動いている ーー つまり、自主的な協定ができない場合は立法化すると脅しをかけている。産業・エネルギー・コミュニケーション省大臣が率いる中央党にはある程度の抵抗があり、交渉はス政府高官レベルで行われている。

7(U)差止請求権:まったく成果がなかった1項目は STOCKHOLM 00000141 002 OF 003 行動計画第 2項、差止請求権である。スウェーデンの現行法の中に適当な手段があると、ス政府は主張しており、新法導入をするつもりはない。(それとは反対に、レンフォース[Cecilia Renfors*]委員会の勧告、つまりファイル共有問題について調査を委任された政府研究によって、産業界の主張は裏付けられたことに留意。ス政府はレンフォース勧告は実行されないということを明言している。留意点、以上。)

*Cecilia Renfors...スヴェア上訴審裁判所(高裁にあたる?)の裁判長。2007年に『ネット上の音楽と映画 ー 脅威、それとも可能性?』というレポートを発表している。

8(U)知的財産権強化[IPRED]法の実施:225日に法案は議会で承認され、新法は2009年4月1日から発効となる。微妙な政治的要因により、連合政府にとって法案をまとめる最終作業は非常にデリケートなものとなった。多くの議論や交渉が公で行われ、個々の議員には相当なプレッシャーがあった。ゆえに、法案可決はス政府の勝利であり、その勝利は表面上よりもずっと大きいものだ。もともとの法案と比較した場合、主な変更は、本法律は溯及効がないということ。つまり、IP番号から特定される個人が誰か、ということを提出するよう裁判所が指示を出せるのは、法律施行後の著作権侵害に限るということである。もうひとつの変更は、裁判所は比較評価基準[proportionality assessment]を作成するということ。つまり個人情報にアクセスするための著作権保有者のニーズと、IP番号をから特定される人物のプライバシー保護とを、はかりにかけるということ。法律が定めるところでは、一定規模の侵害でなければ、裁判所が[個人]情報を提出するような決定は出せない。 普通、そのような場合は、あるひとつの映画なり楽曲が繰り返しアップ・ロードされるような侵害が起こった時である。そういったことはたいてい、著作権保有者に深刻な損害をもたらすからである。著作権で保護されているものを相当な規模でダウン・ロードした場合も同じ決定がなされるだろう。侵害の規模がわずかで、部分的なダウンロードであるとすれば、裁判所の評価プライバシー保護が優先されるべきであり、個人情報は提出されるべきではない、というのが法律で定めてある。ス政府は、法律がどのように使われているかを監督、評価し、重大な著作権侵害が起こった場合、実際に使われることを保証するといった規定を法案は含んでいる。こうした監督行為は法律が施行されと同時にただちに開始される。

9.(U) 警察や検察にIP番号から個人を特定する権限を与えるのは、低級な(つまり懲役刑でなく罰金が求められるような)著作権犯罪に絡んでいるときである。法務大臣は法整備の変更を目標にしてきた。そうやって警察と検察がIP番号から個人を特定するための情報にアクセスできるようにするために。こういった種類の犯罪(懲役でなく罰金刑が課される)に対するスウェーデン語のよくある表現は、「低級な犯罪[crime of lower dignity]」である。現在、法を施行する役人たちがこうした情報を得ることができるのは、侵害が懲役刑に当たるようなときだけである。ス政府は法整備の変更に賛成し、このような変更を実現するのに必要な段階を提案するための研究の一部をなしている。提案された変更は最近ほかの研究と区分けされ、早くも2009年1月下旬にアスク法務大臣に報告された。法整備の経過は遅く、がっかりさせられもするが、ス政府はすでに法律強化に必要な変更については賛成している。


10.(SBU)警察と検察: 現在、
知的所有権と著作権問題に専門的に従事しているフルタイムの検察官が2人いる。警察はというと、訓練は受けてきたが、知的所有権と著作権問題のみに注意を向けることは許されていないと我々は理解している。彼らは、処理すべき優先事項がある地域で通常業務に戻っている。2人の検察はこのことが問題であると警告している ーー 捜査員の応援なしで、残務処理に追われている ーーということも我々は理解してきた。検察官らは知的所有権にとりわけ従事してきた捜査員の応援を頼んでいるが、今日、そのような捜査員はいない。スウェーデン警察庁長官がこの捜査員不足に対しどう対処しようとしているかを、法務大臣は長官に繰り返し尋ねてきた。ス政府はその必要性を分かってはいるものの、来年の予算案は、厳しい経済情勢のため、法案可決のための分はそれほど増えないであろう。この分野における追加予算が重要な影響をもたらすだろうということを強調するために、大使館[post]はス政府と産業界と一致協力できる。

11.(SBU) 公教育:2008年秋、ス政府は特に若者に向けた新しい情報教材を発行した。教材はスウェーデンの学校に広範に配布されるだろう。アスク法務大臣の職員は目下、閣僚が公の議論に入っていくことについての是非を検討している。知的財産権強化法とパイレート・ベイ訴訟に対しネガティブな(STOCKHOLM 00000141 003 OF 003 )注目が集まったことを考えれば、この決定はまったく目立っていない。ス政府は数年前-- leadingQticians [ママ(おそらく指導的立場の政治家)]が議論をしなかった時 --すでに絶好の機会を逃してしまったのではないかという危惧を抱いている。 現時点でデリケートな問題にどう取り組むか。

パイレート・ベイ ----------
12.(U)2006年5月31日にパイレート・ベイを強制捜索した後、ネット海賊行為の問題が激しくスウェーデンで議論された。報道では、当時、また現在も、権利保有者と米国政府による影響力に関して好ましくないとしている。パイレート・ベイ強制捜索は、ス政府が米国政府の圧力に屈したというように語られた。逆効果でないにしても、この微妙な状況によって、大使館が知的財産権問題における公的役割を果たすことは難しくなった。裏では、大使館はすべての利害関係者とうまくやっている。捜査の18ヶ月後、検察は、パイレート・ベイのビット・トレントのウェブページを管理したために、著作権侵害を助長したという理由で4人に対する起訴状を提出した。訴訟は現在トックホルム地裁で審理中であり、公判は3月4日に完了する予定だ。判決は3月25日頃と予想される。つまり、スペシャル301条のレビュー終了前だ。しかし、どのような結果になろうとも高裁に控訴という形をとるだろうと確信している。これは、最終的な評決が数年間は分からないままだということを意味する。

米国製薬工業協会(PhRMA)問題 --------------------------
13.(U)
米国製薬工業協会(PhRMA)も、スウェーデンをスペシャル301条の監視国に指定することを要請している。要請はス政府の製薬市場における規制緩和への決定と、再構築に投資するという目的でスウェーデン市場での特許医薬品の値下げ計画が伝えられたことに、要請は基づいている。値下げは、10%になると考えられている。

14(U)社会福祉省によると、ス政府は特許医薬品の値下げは計画していないが、[自由]価格システムに基づいた価格モデルを維持するつもりのようだ。中央政府機関である歯科・医薬品(TLV)医薬品値上げの原則を提案し、どのように製薬市場の収益性が算出され追跡調査されるかを提案するよう命じられた。TLVは今年41日、ス政府に提案の発表を行う。
15(U)3月2日の現時点で、ス政府が実際に10%の全般的な値下げすることが確認できるような決定や文書は何もない。ゆえに大使館としては、スウェーデン製薬業界の規制緩和を考慮して、同国がスペシャル301条のウォッチ・リスト(監視国)に載ることを勧告しない。しかしながら、4月1日のTLV報告書の結果として、特許医薬品の全般的な10%値下げが決定された場合、大使館はス政府に対し、再びこの問題についての高位高官レベルでの提唱を行うだろう。

***

この公電、何も知らないTassaにとって、翻訳するのは非常に難しかったのですが、かなり興味深いです。

補足すると、スペシャル301条はアメリカ合衆国の知的財産権に対する対外制裁に関する条項です。

知的財産権保護について問題のある国を、問題のある順に
「優先国」 (priority foreign country)
「優先監視国」 (priority watch list)
「監視国」 (watch list)
の3段階に指定。

海賊党などの台頭により、スウェーデンは監視国指定されそうになっていたというわけです。

この公電はガーディアンが公表した公電(09STOCKHOLM355)より前に打たれたと思われます。
「ああー、海賊党なんて変なの出てきちゃったよー。厄介だなあ。」と思ってたのが、この公電。
09STOCKHOLM355公電は、「うわ!欧州議会に海賊入ってきやがった!」と事態の「悪化」を嘆いています。

2010年のスウェーデン議会選挙前に、海賊党はウィキリークスと協定を結んでいます。
その意義について、「P2Pとかその辺のお話」さんの
スウェーデン海賊党、Wikileaksと手を結ぶ から引用↓

「Wikileaksにとって、スウェーデン海賊党からの支援は、重要な意味を持つ。もし、海賊党が来月の総選挙にて議席を獲得した場合、同党はスウェーデン政府内部からサイトを運営することになるのだが、法的手続きにより同サイトを停止しようとしても、議員特権を行使してはねつけることができるようになるのだ。」

しかし、今年9月の選挙活動期間中、普通の人は海賊党の「か」の字も聞かなかった。。
結果、海賊党は議席獲得最低得票率4%に及ばず、議会入りを果たすことはできませんでした。

もし、議会入りが実現していれば、ウィキリークスがサーバーをあっちゃこっちゃ移す必要もなく、公電公開はもっとスムーズに行われていたでしょう。

まさかスウェ─デンの国政選挙がウィキリークスの運命を左右することになるとは、さすがにTassaも思い至りませんでした。次の選挙は4年後です。遠いなあ…。

※ちなみに知的財産権強化法(IPRED法)ついてのエントリーも同ブログで読めます!(すごい…)

2010年12月14日

インターネットで覇権を握るのは?

予告しておきながら伸び伸びになってしまったアメリカのインターネット支配についてと、それに対するカウンター・ムーブメントのお話です。

ルート・サーバはアメリカがほぼ独占している

アメリカのインターネットにおいて覇権を握っているといったようなことを、ちっらと前に書きました。
その理由のひとつはルートサーバにあります。
ルートサーバとはドメイン名空間の頂点にある情報を保持するサーバだそうです。
(ウィキペディアより。なにせTassaはPC素人。否、素犬。)

世界に13あるうち10のルート・サーバをアメリカの企業や軍が所有しています。
ドメイン・ネーム・が始まった当初は、ストックホルム、アムステルダム、そして東京のルート・サーバ3つだけでした。
(ちなみにストックホルムのルート・サーバは大学が実験的に始めたもの。東京のも大学間のプロジェクトによるもの。)
一部の人には常識なのかもしれませんが、私は知らなかった。



EveryDNS.netはwikileaks.orgのドメインを潰したことは記憶に新しいです。
しかし、たとえこの会社のような個々のDNSサービス会社がドメイン潰しを拒否したとしても、最終手段としてルート・サーバから働きかけることができるそうです。

つまり、どんなに末端のDNSサーバ会社が頑張っても、その気になればルート・サーバから切断してしまえる。

2008年、ウィキリークスがスイス銀行に関するリークをした時、カリフォルニアの裁判所である決定がなされました。

以下、BBCの記事「Whistle-blower site taken offline」より引用&大意訳。

***
[…]同サイトのドメイン名を管理しているDynadot社は、サーバからウィキリークスのすべての
トレース(形跡)を抹消することを裁判所が決定し、メイン・サイトは切断された。
また、当裁判所で新たな決定が下されるまでは、wikileaks.orgのサイトや他のサイト及びサーバにアクセスできるようなドメイン名を阻止するよう、裁判所はDynadot社に指示した。
他の決定は、現在のドメイン名が別のドメインとして登録されないようドメイン名をロックすべしという決定もなされている。
ウィキリークスは決定は憲法違反であり、サイトは強制的に検閲されている、と主張した。
[以下省略]

[…]the main site was taken offline after the court ordered that Dynadot, which controls the site's domain name, should remove all traces of wikileaks from its servers.
The court also ordered that Dynadot should "prevent the domain name from resolving to the wikileaks.org website or any other website or server other than a blank park page, until further order of this Court."
Other orders included that the domain name be locked "to prevent transfer of the domain name to a different domain registrar" to prevent changes being made to the site.
Wikileaks claimed that the order was "unconstitutional" and said that the site had been "forcibly censored".

***

ドメイン名を他のDNSサービス会社に移すのを阻止することはDynadot社ひとつではできません。考えられる方法はいくつかありますが、たとえばルート・サーバからドメイン名を潰すことも可能です。
(と、知り合い談。詳しい人、教えて下さい~。)

2008年のこの時は、ウィキリークスがドメインを喪失する前に、すでに情報が出回ってしまったために、サイトを潰しても情報を止めることはできませんでした。

[追記]
日本語で読める当時の記事がありました→内部告発サイト『Wikileaks』が強制的に閉鎖――国外サーバーで対抗(ワイアード)

同じくミラーが増殖した今の状況では、ルート・サーバから切断しようとしても情報の削除はより困難になったと言えるでしょう。

ルート・サーバをアメリカがほぼ独占している状況を見ると、「硬直した資本主義は寡占へと向かう」のはインターネット界でも同様であることが分かります。
一方で、インターネットは自由に情報を共有しやすいインフラでもあり、多くのハッカーやPCオタクはそういった自由な気質を好むように思われます。
なので、一部の企業が制限できるような不自由なネット環境はイヤだ!とそれに対抗しようとする勢力もまたインターネットで生まれたわけです。

海賊党の登場

そういったグループのひとつが、海賊党(Pirate Party)です。スウェーデンの海賊党WikiLeaksとの公式協定も結んでいます。

(とりわけネットにおける)情報の民主化が喫緊の問題であり、それ以外のことには関わらないという政策理念を持っています。
でも、言論の自由があらゆる社会問題を論じることの根本にあり、インターネットが普及したことを考えれば、これは大げさでないと思います。

こちらのサイトで海賊党に関する記事の翻訳が沢山あります(このサイト、本当にすごいです)↓

P2Pとかその辺のお話

そんな海賊党がスウェ─デンで誕生したのは2006年。そして知名度を上げてきた2009年に欧州議会選挙がありました。若者を中心に多くの支持を集め、議席を獲得。

今年のスウェ─デン議会選挙

ところが2010年、スウェ─デン議会選挙のあった今年、海賊党はまったくと言っていいほど話題になりませんでした。

注目を集めたのは、スウェ─デン民主党という反移民政策を訴えている政党。彼らの作った選挙用コマーシャルは過激と話題になりました。チャンネル4ではCMに一部ぼかしでも入れないと流せないという事態に。とは言え、賛否両論ありながらも、しっかりその名を知らしめたスウェ─デン民主党。議会での議席を獲得するための必要最低得票率を満たし、20議席をスウェーデン議会に置くことになったのです。

そこで、私が思ったのは単純に、「他の少数派政党に対していくら何でも不公平なんじゃないか」ということ。ニュースで毎日これでもかというくらい「宣伝」してもらったわけですから。確かに海賊党が2009年のEU議会選挙で、同じようにメディアの注目を集めたのは間違いありません。なので、新しめの党が注目を集めるものだ、といえばそれまででしょう。

スウェ─デン民主党に対するメディア・スクラムの裏に何があったのかは分かりません。しかしながら、海賊党が注目を集めなかったのはあながち偶然ではない、ということが今回のリーク公電で明らかになったのです。
その公電について明日、詳しく書こうと思います。

ストックホルムでの自爆「テロ」にまつわる不可思議な点


ストックホルムのドロットニング通り(Drottninggatan)とオロフ・パルメ通り(Olof Palmes gata)の交差点で、1211日夜、1人の青年が車を使って自爆し、亡くなりました。
この事件は他国でも大きなニュースになりました。

ところで、この事件にはおかしな点がいくつかあるので、それらを列挙したいと思います。
いずれも噂レベルでなく、大手メディアが報じたものです。

【不可思議な点】
軍の関係者は事件が起こることを知っていた?
とある軍関係者が知人に対し、「ドロットニング通りは危ないから近づかない方がいい」という旨のショート・メッセージを数時間前に送ったとの報道がありました。

青年の携帯電話からスウェーデン保安警察、通称Säpoとスウェ─デンの通信社 、TTに犯行予告が送られたのは12分前。どうして数時間も前に現場が「危ない」、と分かったのでしょうか。(ちなみにこの通りは街の中心地にあるショッピング・ストリート。)
分かっていたのなら、なぜ何の対策もしなかったのでしょうか。

これに対し、ベアトリス・アスク(Beatrice Ask)法務大臣は「メディアの言うことだから、信用できない」との返答をしています。

しかも大手紙Svenska Dagbladetからは「軍関係者は爆破前に警告していた(Försvarsanställd varnade före dåden)」という題の記事が検索できなくなっています。キャッシュでは見れますが。

不自然な録音の声
自爆をしたとされている青年が犯行について事前に語っていた録音があります。
少し穿った見方かもしれませんが、私は内容よりも、その音声の不自然さが気になりました。
ひずみがある、と言っているのですが、なぜひずみが生じたのでしょう…

【この事件によって何が起ころうとしているのか?】
FBIスタッフをスウェ─デンに派遣
事件後、アメリカのFBIは応援部隊を送るとSäpoに申し出ました。Säpoはこれを承諾。FBI爆弾処理班の7人がスウェ─デンに入国します。実に迅速です。アスク法務大臣からは「国際間で警察の協力体制が機能している良い例だ」とのコメント。世界のどこかで自爆テロが起きる度に、アメリカはFBIのスタッフを送ってくれるのでしょうか。

警察の権限強化
ある専門家は、この事件で「数十人から数百人が巻き込まれる可能性もあった」としながらも、自爆テロによって負傷する確率は「衛星か隕石が頭に落ちてくるのと同じくらい」とニュース番組で発言しました。
(つまりこの事件、ハザードは高いがリスクは低い)

しかし、新聞ではこの専門家の話の前半しか取り上げられていない。また、ほとんどの識者、政治家の今回の事件に対する見解は「危機的状況であり、治安強化が必要」。

現在、通信傍受の権限はスウェーデン国防電波局(FRA)にあります。FRA法によると、建前として、国外からの通信のみが傍受可能であり、スウェ─デン国民の通信を傍受するのは違法ということになっています(でも、そんな区別は無理。Gmail.comだって国外からの通信に含まれてるのだ…)

しかし、この事件を機に警察に傍受権を与え、国内の通信傍受もできるようにしようという発言が法務大臣からありました。また、野党である社会民主党も、選挙前は通信傍受法そのものの廃棄を訴えていたのに、Säpoに傍受・監視の権限を拡大しようという公式発言がありました。

どの国でもそうですが、こうした事件が起きると、治安強化という名の下でいろんな政策が通りやすくなります。警察を増やしても、根本的な解決にならないということで北欧社会はもともとやってきたはずなんですけどね…。(厳罰化の世界的な広がりについては社会学者ロイック・ヴァカンの本がおすすめです。)

イスラム教系移民に対する差別
自爆をした青年がイスラム教徒だったことから、イスラム教徒に対する差別が高まるのではとの危惧もあります。
9月の選挙で議会入りを果たしたスウェ─デン民主党(移民排斥政策を提唱)の党首秘書官Alexandra BrunellはTwitter上で「#ついに(#Äntligen)」というハッシュをつけたツイートをしました。1人の人間の命が失われた事件に対して、です。これにはさすがに各方面で反感を買いましたが。

WikiLeaks関連の報道、SVTで昨日はゼロ
リーク公電が注目される中、この事件によってメディアの関心は若干ウィキリークスからそれてしまったような感じがします。日にちが経ったからニュースで取り上げるのが減る、というのはそれほどおかしなことではないとは思います。しかし、この事件は、ほとんどメディア・スクラムの様相を呈してきています。

このタイミングでこの事件が起きたことは偶然なのでしょうか。

[追記]
在ストックホルム日本大使館からは以下のメールが送られているそうです。


ストックホルムで起こった自爆テロについて以下のとおりお知らせいたします。

1.報道によれば、12月11日午後5時ごろ、ストックホルム中心部のオーロフ・パ
ルメ通りで、クリスマス前の買い物客でにぎわう中、 連続して2回の爆発があり
、1人が死亡、2人が負傷する事件が発生しました。
最初にガス缶を積んだ自動車が爆発し、数分後に約300メートル離れたブリッガ
ル通りで2度目の爆発が発生しました。

2.上記事件の背景は現時点では不明ですが、爆発の直前に、スウェーデン軍の
アフガニスタンへの派兵やスウェーデン人作家が過去 にムハンマドの風刺画を
描いたことを引き合いに犯行をほのめかす内容の電子メールが、警察及び報道機
関あてに送付されており、 この事件との関係も言及されています。
また本件に関し、警察の発表によりますと自爆テロの可能性が高く、ビルト外
相はテロ事件であるとの見方を示しています。

3.在留邦人の皆様におかれましては、テロ事件や不測の事態に巻き込まれるこ
とのないよう、最新の関連情報の入手に努め、テロの 標的となりやすい場所(
不特定多数が集まる場所、政府・警察関係施設、公共交通機関、観光施設など)
を訪問する際には、周囲の 状況に十分注意を払うなど慎重な行動をとるように
してください。
また、テロ事件が発生した場合の対応策を再点検し、状況に応じて適切な安全
対策を講じられるよう心掛けてください。
さらに、緊急事態に備え、連絡手段を常時確保できるよう心がけてください。

2010年12月13日

Googleの良心 ~ transparency report ~

WikiLeaksと少し話はそれますが、ネット上の検閲の話です。

ご存知の方も多いと思いますが、GoogleではTransparency Reportというのを公開しています。

Government Requestsは政府からの削除要請を示し、

Trafficは正常値を100とした場合の実際の通信量を示しています。

もちろん、技術上100になることは難しいです。でも極端に低いのは何らかの人為的な介入があると見る方が自然です。

これを見ると、中国は開き直って検閲しているけれど、それに対し、多くの「民主国家」もまた実は検閲をしているのが分かります。

Trafficを見ると、日本でもかなり不自然な下がり方をしています。

また、Government Requests、アメリカが最多です。
(ロシアなんかが低いのははわざわざ公式な要請をしなくとも削除ができるからという見方もできますが…)

もちろん、筋の通った(reasonable、な)削除要請もあると思います。
また、これはGoogleからの情報で、情報が偏ってないかとか、他の検索エンジンではどういう結果になるのかとかも考慮しなければいけません。Google自身もこの統計は完全ではない、と言明しています。


ただ、私はこれがGoogleの良心であり、経営精神なのだと感じました。
グラフは曖昧な感じだし、本当はもっとデータを出していいような気もしますが、それでもこういった情報がある、ということ公開していることはすごく大事です。

Google自身、Traffic FAQでその意義を説明しています:

We believe that this raw data will give people insight into whether or not our services are accessible in a given country at a given time.
 (この生のデータを示すことで、私たちのサービスがどの国でいつアクセス可能であるのか、そうでないのかについての見識を持っていただけると思います。)

中国は「社会の和」のためということで検閲を正当化。
(Blogger、You tube、facebook、そしてなんとウィキぺディアまで全面禁止。Twitterは初めから存在しない。)

アメリカなどの「民主国家」が「言論の自由」があると表面上は言いながら、検閲をする。 日本でも「反戦」「スペクタクル社会」の落書きに対し、「建造物損壊」で懲役1年2カ月、執行猶予3年の判決が出たりしてますし…。


どっちがいいなんて、もはや無意味な議論なのかもしれません。
(無論、規模で言ったら中国の公式&非公式の検閲は他国の比にならないことは確かですが)

ブログ削除に関して

12月11日未明から本日13日の夕方頃まで当ブログへのアクセスができませんでした。
心配してくださった方々、ありがとうございます。

11日にBloggerのディスカッション欄に書き込みをした所、すでに何人もの人が文句を言っているのが分かりました。

技術上のトラブルとのことですが、Bloggerはあまりはっきりした回答をしていません。
バグと言っているのですが、バグならどういう種類のものだったかなど、いまいち釈然としません。

ちなみに8日の時点でこんな内容の投稿をしたブロガーがいます(このブロガー、むしろBloggerよりも詳細な説明をいろんなところでしてくれてます。何者なんだろう?)。


The Real Blogger Status より抜粋

***
Recently, a number of blog owners have found themselves with deleted or locked blogs, and mysterious messages mentioning "Unusual activity on your account". When they try to surf their blogs, they see

    The blog you were looking for was not found. If you are the owner of this blog, please sign in.

Upon signing in, they see their dashboard, and no mention of the missing blogs. Possibly they see the advice

    You are not an author on any blogs yet, create one now to start posting!

【訳】
現在、何人ものブログ持ち主が、自分のブログが削除されたかロックされていることを確認。「あなたのアカウントで異常行為」があったとする謎のメッセージも確認された。ブログを見ようとすると以下のメッセージが表れる

あなたが探しているブログは見つかりませんでした。もしこのブログの持ち主である場合、サイン・インしてください。

サイン・インをすると、ダッシュボードはあるのに、なくなったブログについて何も書かれていない。以下の指示が表示される場合もある

まだブログを作成していません。ブログを作成後、投稿してください。

***

なぜ突然いくつものブログが消えてしまったかは分かりません。

また、最近になってGoogleがバックアップのためにと「電話番号」登録をするのを促すメッセージを出してくるのも、少し気になります。

WikiLeaksや検閲、言論の自由に関する議論が盛んになっている今、こういうことが起きてしまうと疑心暗鬼になってしまいます。(技術上のトラブルでも十分問題ですけど!)

いずれにせよ、これ以上のことは分からないので、私はとりあえずGoogleを信頼して、BloggerでTassa Leaksを続けていきたいと思います。

今後ともよろしくお願いします!

2010年12月11日

ロシア版ウィキリークス&新しい告発サイト

実はこんなサイトがあった。

Kompromat.Ru
http://www.compromat.ru

ロシア版WikiLeaks。一番古い資料は1999年。エリツィンがダメになるあたり。
目的は、情報にアクセスする自由、自由な精神の向上、及び文化・科学・教育活動、これらに対する国民権利の行使を可能にすること。らしい。

でもYulia LatyninaEcho of Moscowでお馴染み。って有名じゃないか…。)いわく、このサイトは玉石混交。かなりガセネタもあるんだとか。
でも、こういうのがロシアにもあったのね。

変わって、こちら新しい告発サイト「オープンリークス」の話。
アサンジのワンマンが気に入らなくって、やめた人たちが作ったから、ノウハウもそれなりにあるのだろう。理念はウィキリークスと同じらしい。

Dagens Nyheterでの記事によると、

ウィキリークスとの相違点は
・受け取った漏洩情報を直接公開はしない。アクセスは既存のメディアやNGO、NPO、労組などの団体に限定される。

・漏洩情報をどう公開するかは、それぞれの団体の責任となる。

ということらしい。でもそのアクセスできる団体をどう規定するのかとか、情報の精査も個々の団体に委ねられるのかとかは不明。

まあ、「ウィキリークスの情報を使って記事を書いてる新聞に対して、怒っている政治家がほとんどいないのは、興味深い。」と言ったのにはうなずける。
もしこういった新聞がソースがウィキリークスであることを伏せた場合どうなるのか、それがオープンリークスで分かるかもしれない。

[追記] 12/23
オープン・リークスについての日本語で読める詳細な記事(日経)↓
ウィキリークス離脱組が新告発サイト 元ナンバー2が明言

2010年12月9日

真っ当なビジネスとは #WikiLeaks

[追記]
Flattrの共同設立者の1人、Peter Sundeは、Pirate Bayの立ち上げ人でもあります☆
そりゃあ、WikiLeaks応援するわな。 

 ***

企業による資金ルート遮断作戦によって苦戦しているウィキリークスに力強い味方が!
DataCellというアイスランドの中間支払い処理を行っている会社です。

Andreas Fink(アンドレアス・フィンク)CEOは、VisaMastercardの決定を不服とし、ウィキリークスの寄付金の送金サービスを続行するとホームページで発表。以下抜粋&翻訳。

***
127
[一部省略]
言論の自由は、検閲や制限なく話せる自由だ。言論の自由は国連人権宣言第19条で認められ、国際人権法で認められた人権である。さらに、欧州、アメリカ大陸、アフリカそれぞれの国・地域の人権法でも認められている。[訳注:アジアと書かれていないのが考えさせられる…]
ウィキリークスが何か罪を犯したなんて、考えるのもバカバカしい。もし、ウィキリークスが犯罪的ならば、同じ情報を流している CNNBBC、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、アルジャジーラといったその他大勢も犯罪者ということだ。だけど、誰も彼らに[そういった意味で]触れようともしない。まだニューヨーク・タイムズを購読することもできるし、クレジットで買うこともできてるだろう。
世界のどこかで、何かの犯罪で、ウィキリークスが組織として告訴されたということも聞いていない。結論は、ウィキリークスは我々の人権のために闘っているのだから、彼らに寄付するのはただただ名誉なことである、ということだ。
DataCell はクレジット・カード支払い処理を手伝いながら、ウィキリークスのために業務を行うまでだ。このことをいろんな視点からどう捉えることもできる。[だが]我々は誉れ高い組織のために、彼らがサーバー上での読み込みと、人々が読みたがっているメッセージ[おそらく公電]の配信とに必要な資金を得る手伝いをしている。
VisaMastercardのような世界規模でのクレジット・カード決済を独占している大企業が、法律よりも政治勢力を優先しなければならないと考えているなら、何億ユーロという損害を覚悟しなければならないし、相当な取引を失う覚悟もしなければならない。このことで、世界規模のクレジット・カードが終焉するということも十分ありうるだろう。

アンドレアス・フィンク
DataCell ehf CEO


***

翌日には、さらに強調するような文章を掲載。


***
128
[一部省略]
ウィキリークスに対し支払い処理を行っているDataCell ehf は、寄付が再び可能となるよう即刻、法的措置を取ることに決めた。ウィキリークスがVisaのブランドに傷をつけたとは思えない。ウィキリークスへの支払い停止は顧客との合意を反故にするものだ。Visa利用者はウィキリークスへ寄付する意志をはっきりと示しており、Visaはその要求を満たせていない。ウィキリークスへ送金をする場合に比べれば、送金を阻止する方が、彼らのブランドをもっとずっと傷つけることになるだろう。大勢のVisaの顧客が、私たちに、寄付が実際できるかということを確認してきた。また彼らはVisaが彼らを拒否したことを不服としている。Visaが私たちを締め出そうとしている政治的圧力の下にいるのは明らかだ。Visaのような世界クラスの会社は政治に関与すべきではないし、送金という得意分野で普通にビジネスをすべきだ、と我々は強く信じている。ギャンブルやポルノといったビジネスに対し送金することは、彼らにとって何ら問題ない。人権を掲げるウィキリークスへの寄付の方が倫理に反するというのが何故かなんて、私の理解を超えている。

VisaはウィキリークスとDataCell ehf に対し大きな損害を与えた。支払いを7日間以上差し止めるということはありうるかもしれないが、今後一切の寄付を拒否するというでは、寄付そのものが成り立たなくなる。これは明らかにウィキリークスにとって財政上の大きな損失を引き起こすわけで、これこそが差し止めの唯一の目的のように思われる。これはVisaのブランドがどうこうの問題ではなく、政治問題だ。Visaはこういったことに関与すべきでない。

寄付をしたいという方は振込を利用してください。 そして、地域にあるVisaの取引会社に行って、Visaを使ってウィキリークスに寄付をしたいというあなたの誠実な要望を分かってもらってください。その間、私たちウィキリークスをサポートすることに全力を尽くします。

アンドレアス・フィンク
DataCell ehf CEO
***

こういう粋なCEOもいるんだな、とちょっと感動しました。
まあ、リスクもあるけど、いい宣伝にもなるし、なかなかしたたかな社長さんなのかもしれません。
でも、こういうCEOが成功できる世の中になるようWikiLeaksは頑張ってるのだと考えれば、この反応は当然か。

それからスウェーデンのMalmö(マルメ)にあるFlattrという会社もウィキリークス支援を発表しました。
以下、SVTの記事の一部翻訳:

***
社長のLinus Olsson(リーヌス・オルソン)氏は
「現時点で何の判決も下されていないのに、(送金停止を)続けるのは違法だ。」

「アサンジ氏はスウェーデンで一個人として起訴された。ウィキリークスが起訴されたわけではない。」

「ウィキリークスに寄付したいという人がいるなら、我々はその手はずを整える。警察とのゲームに付き合う気も、勝手な規約を作るつもりもない。」

と、語っている。

今のところ、約3500人がFlattrを通じてウィキリークスに寄付をしている。寄付金は目下増加しており、おそらく一連の騒動が増加の原因だろう、とオルソン氏。
寄付金は直接ウィキリークスに行くのではなく、同サイトの運営の法的支援をしているオランダにある基金に送られる。
MastercardVisaPaypalのような大企業は、違法行為をしているとの理由でウィキリークスとの関係を切っている。
MastercardVisaとは異なり、Flattrのホームページに対する外部からの攻撃はない。

***


ちなみにFlattrはソーシャル・マイクロ・ペイメントという画期的な寄付システムを採用しています。
この方式だと送金遮断はかなり難しくなるそうです。興味のある方は、ホームページをご覧下さい。(てか、この紹介文かなり愉快な書き方してるな…。)

さらに!Paypalが堪忍したのか、口座資金凍結を取り消したようです!
口座への新たなる寄付は制限されたままですが、口座にすでに送られた寄付金はウィキリークスへ送金されるそうです↓
Paypal släpper Wikileaks-tillgångar


[追記]
Flattrに関する翻訳元になった記事は、SVT textにしかありません。時間が立つと消えてしまうので、一応原文を張っておきます。

Malmöföretag hjälper Wikileaks

Malmöföretaget Flattr är ensamt om att
förmedla donationer till Wikileaks.

Ingen är vare sig dömd eller åtalad
för läckorna från Wikileaks, och så
länge det gäller kommer Flattr att
fortsätta förmedla pengar till
organisationen, säger Linus Olsson,
bolagets styrelseordförande.

-Och det Assange anklagas för här i
Sverige rör enbart honom som person,
inte Wikileaks, säger Olsson till TT.

-Om någon vill stöjda Wikileaks med
pengar, ordnar vi det. Vi ska inte
leka poliser eller stifta egna lagar.

Hittills har ca 3.500 personer donerat
pengar till Wikileaks via Flattr.
Bidragen har ökat på senare tid enligt
Olsson, sannolikt som följd av all
uppståndelse.

Bidragen går inte direkt till
Wikileaks, som inte är någon formell
organisation, utan till en stiftelse
i Nederländerna som juridiskt stödjer
verksamheten.

Stora företag som Mastercard, Visa och
Paypal har brutit med organisationen
med motiveringen att den sysslar med
illegal verksamhet.

Till skillnad från Mastercards och
Visas hemsidor har Flattrs sajt inte
utsatts för några attacker utifrån.


英語で読める記事はこちら(The Local)。

ウィキリークス応援団 2


まだまだウィキリークスを支援する人はいっぱいいます。
ミラーサイト*もすごい勢いで増殖してます。さっき見たら1300を超えていました!

*コピーサイトと書いたら、「コピーは情報が古いままだけど、ミラーはオリジナルとシンクロして常に情報が書き換えられるからミラーサイトと言うべき。」というご指摘を頂きました。

すごいことに、国家単位の応援団まで現れました。
なんとボリビアは政府サーバーでWikiLeaksのリーク内容のホスティングを開始しました。
南米の左派が強い国では、ウィキリークスを支援する政府がいくつかあるようです。
エクアドルは、「うちの国に逃亡しないか?居住権も無条件であげるよ。」と申し出てくれましたし。

う〜ん、これは心強い!

さらに、ブラジルの大統領もウィキリークスを擁護!

国連職員のフランク・ラ・ルエ(Frank La Rue)言論表現自由の権利の促進・保護に関する特別報告官も「米国はアサンジ氏に対して立件することはできないだろう。もし、それでも立件するとすれば、この件は言論の自由にける非常に悪い例となる。」と言っています。

偉い人!(じゃなくてもいいけど、特に偉い人!)ウィキリークス応援宣言を出してください!

建前の復権:WikiLeaksの意義 〜アサンジ氏のインタビューより〜


フォーブスでのインタビューの翻訳が日経新聞で読めるようになっています。



以下、告発の意義を語っているところの抜粋。

WikiLeaksの根本的な意義

今回の案件[注:公電のこと]も、同じようなものになるだろう。言語道断な法令違反や倫理にもとる行為もいくつか明らかになるが、それに加えて、その背後にある意思決定の構造、社内の経営倫理といったものも明らかになる。そこに非常に大きな価値がある。
イラク戦争の機密文書についても同じで、多数の犠牲者を生んだ注目すべき[注:報道価値の高い]事件の記録も含まれているが、そこから戦争の全体像が分かることに大きな意義がある。

企業に関わるリークが50%くらいだというWikiLeaksが、健全な市場を作る一助となる

不誠実な企業が誠実な企業よりも内部告発によってマイナスの影響を受けるということは、誠実なCEOが誠実な会社を経営しやすくなることに他ならない。それが我々の基本的な考え方だ。オープンで誠実な企業と、閉鎖的で不誠実な会社とのせめぎあいの中で、我々は後者に対して社会的評価の面でとほうもない負荷をかけようとしている。

最終的には、質の高い製品を作る誠実な企業が、質の低い製品を作る不誠実な企業に対して競争優位に立てる状況が生まれるのだ。また従業員を大切にする企業の方が、大切にしない企業よりも有利になる。

私に特定の思想や経済思想の持ち主というレッテルを貼るのは誤りだ。私は様々な考え方を学んできたが、その1つが米国流のリバタリアニズム(絶対自由主 義)、市場重視のリバタリアニズムだ。このため、こと市場に関してはリバタリアンの立場をとるが、政治学や歴史の知識もあるため、自由市場は自由になるよ う働きかけなければ最終的に独占が生じることは理解している。ウィキリークスは資本主義をより自由で、倫理的にするためのものだ。

***

この数十年間、国連の舞台などで人権とか自由についてのいろんな取り決めが行われた。それは、多くの場合、建前となってしまうかもしれないけど、でもそれでうまく事が運ぶこともある。
今の現状、例えばWikiLeaksへの露骨な圧力とかを見ると、もうその建前すら無視され崩壊しつつあるんだなってことが、はっきりしてしまったような気がする。

一国レベルの法律も国際法も、1人の人間を捕まえるためにこれだけ『例外』を作れる。1つのウェブサイトを閉鎖するためにこれだけの『例外』が許される。そしてACTAを始め、この建前をも反故にしてしまうような新たなルール作りが進行している。

ウィキリークスは建前を現実世界で通じるものにしようとしているんだと思う。
今まで決めてきたルールに本質的に忠実であろうとしているだけなんじゃないか。

誠実な行いが評価され、不誠実な行いが正される、そんなことがまったく当たり前でない世の中を、どうにかして変えたいという意志が原動力。そのためには、なんとなく企業が悪いとか、政府が悪いと言うのではなく、誰のいつのどんな意思決定が、どんな結果を招いているのかをきちんと指摘することが必要。

だから、ウィキリークスを支援する人を名指しで評価し、反対に潰そうとする人を名指しで非難することも大事だと思う。

それにしても、この人は本当に頭がいい!と心底思った。
PCだけじゃなく、数学、物理も学んできたとかもそうだけど、話の運び方が巧みで。
インタビューとかチャット上の質問とか、ほとんど即答しなきゃいけないような場面でも、完全に理路整然と無駄なくしゃべってる。小論文でも読んでるような気分になる。
あと、言葉のセンス。ガーディアンの一問一答で、「各国政府が権力基盤をfiscalise[会計化]してきた」みたいなことを言ってたけど、うまい造語だと思った。アサンジさんが発明した言葉じゃないんだろうけど、現代政治を一発で表現する動詞だと思った。
WikiLeaksの意義をいろんな人が書いているけど、結局この人の表現が一番説得力があって洗練されてると思う。

あんまり彼本人に関心を寄せてはいけないとは思いつつ、スゴいと思わずにはいられない…。