2011年3月19日

本日の募金活動(in ストックホルム)の詳細と、その言い訳

ストックホルムで募金。
結構、勇気がいる。なぜなら日本はi-land(industri land/先進国)。
そして愛国心ってやつもなかなか見せ辛い(そう思ってるの私だけ?)。
面と向かって批判する人はいないけど、ハイチ、四川、チリ、ニュージーランドetc.の時、何かしたかと言われたら、心配しただけ。

純粋にちょっとでも役に立てばいいという思いや、
遠く離れた北国でも心配しているよというメッセージになればいいという思いや、
何か行動して自分の気持ちを落ち着けたいというエゴからでも、何でもいいと思う。

募金はしないという選択をとる自由と同じくらい、「心配なんです」という気持ちを表現する自由はここにもあると思うのです。

(本当は、日頃から日本大使館で「情報公開の徹底を」呼びかけるデモもするべきだったのかもしれないけど…。)

世界中で大変なことが毎日起きてるけど、悲劇の競争をするんじゃなく、大変な思いをしてる国のいろんな人が「おたくも大変なんですよね」と声を掛け合って、団結できたらいいなと思います。
今日、タイ人の友人が日本のために黙祷してくれた。ありがたかった。私はリビアの未来も祈るよ。

***

Att samla in donationer i Stockholm kräver lite mod eftersom Japan är ett i-land och att ordet patriotism är negativt laddat i Sverige (är det bara jag som tänker så?).


Det finns få som skulle kritisera en sådan aktion direkt inför oss. Men det är ett faktum att om någon frågar mig vad jag gjorde åt jordbävningarna i Haiti, Sichuan, Chili, Nya Zeeland osv, kan jag bara svara att jag tänkte på dem.
Jag tror dock att människor kan donera till Japan av flera anledningar -- för att man helt enkelt tror att det ska hjälpa någon, om än i liten grad. Eller för att man tror att handlingen kan bli ett meddelande att vi som bor i det här landet i norr tänker på dem i Japan. Eller helt enkelt av en egoistisk vilja att dämpa sin oro genom att göra någonting.

Det finns frihet att inte donera. På samma sätt finns det frihet att uttrycka sin känsla "jag är rädd om er".
(Faktiskt skulle jag demonstrera inför den japanska ambassaden för att kräva på information transparens, men jag är för feg att göra det ensam...)

Tragedi händer varje dag i hela världen. Istället för att vi tävlar vilken är ledsammare hoppas jag att vi kan säga till varandra "jag är rädd om dig". Jag vill ha en sådan solidaritet.

Min thailändska kompis bad tyst för Japan idag. Jag ber även för Libyens och de andra kämpandes framtid.
 
***
以下詳細、Facebookより転載(英・瑞・日)
https://www.facebook.com/event.php?eid=209792519034185&index=1

***
We, Japanes living in Stockholm, are organizing the 2 days donation campaign together with Swedish Red Cross at Sergels Torg in Stockholm for the earthquake in Japan.

We may be so far away and feel powerless.
But let us help and support the victims of the earthquake who are still waiting for the relief aid.

...
March 19th Saturday
12:00 - 14:00 in Sergels Torget

March 20th Sunday
13:30- 14:30 in Sergels torg

 
The money donated for this event will be sent to Red Cross in Japan through Swedish Red Cross.

For further information, please contact: prayforjapaninstockholm@yahoo.co.jp

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Men anledning av jordbävningskatastrofen i Japan organiserar japanska medborgare i Stockholm tillsammans med svenska Röda korset en två dagar lång hjälpkampanj.
Katastrofen har skett långt ifrån Sverige och det är lätt att känna sig maktlös. Många av katastrofens offer väntar fortfarande på hjälp. Tillsammans kan vi hjälpa dem.

Lördagen den 19 mars, klockan 12.00–14.00: Sergels torg
Söndagen den 20 mars, klockan
13.30–14.30: Sergels torg

Pengarna som doneras i samband med kampanjen skickas till Röda korset i Japan genom svenska Röda korset.

För mer information, vänligen kontakta: prayforjapaninstockholm@yahoo.co.jp

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ストックホルム在住の皆様へ

ストックホルム市内において今週末、街頭募金活動を行います。

【3月19日(土)】

集合:12:00 Sergels torg(T-centralen駅付近の広場)
活動:12:00-14:00(その後希望者のみ今後について話し合い。15時半には完全解散。)


【3月20日(日)】☆時間が変更になりました。

集合:13:15 Sergels torg(T-centralen駅付近の広場)
活動:13:30-14:30

※募金を集める方は両日とも身分証明証必須

参加については、1日1時間のみでも、結構です。
身分証明書持参必須でお願いします。
ご家庭に簡単なプラカード(画用紙にメッセージ)などが作れるのであれば、今回私たちがスローガンにしているPray for Japanや日本の国旗などを書いて私たちの活動の趣旨が分かるようなものを持参して頂けると嬉しいです。

ご参加頂ける方、詳しい情報については下記へご連絡ください。
prayforjapaninstockholm@yahoo.co.jp

2011年3月18日

原発に関する外国政府の対応など(スウェーデン・SVTの報道を中心に)

[追記]
有志の方によって集められた日本各地のガイガーカウンターの数値を表示している放射線モニタのまとめサイトができています↓
放射線監視モニタ: http://pow-source.com/311

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映像を見ているとあまりにも辛いので、文字媒体のニュースをなるべく見るようにしています…。

まず、東京在住の方で放射線量が気になる方はこちらのページの「1時間ごとの測定値」のところが参考になります(他の自治体の資料は文科省やその転載サイトがPDFで測定値を公開しています。なんでPDFなのかという疑問はさておき…)。

また、IAEAによれば、放射線量の推移は悪くない動きだとのことです。ただし、30km圏内は大変な数値になっています。ある箇所では1時間に80〜170マイクロシーベルトが、別のポイントでは26〜95マイクロシーベルトが観測されたとのことです。(Radiation Monitoringの部分をご覧下さい。)

残された作業員や自衛隊の方、本当にごめんなさい。
無責任かもしれないけど、どうしてもの時は逃げてほしいです。助かるための職務放棄なら、私は絶対に責めません。[追記3 みなさんは特攻隊ではないのです。もし逃げても誰も責めないはずです。兵役拒否をした人間を村八分にした戦中の日本とは違うはずです。]

本題。外国政府は自国民に対し退避勧告や渡航禁止などの措置をしている(※)一方で、原発事故に対する協力を申し出ています。

本日(3/17)のSVTによるライブ・ニュースより一部抜粋。

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日本時間 17:05
インタファクス通信によると、ロシアは外務省を通じて、原発事故における復旧作業協力を日本へ申請した。

日本時間 16:29
AFP通信によると、フランスは今日木曜、95トンのホウ素を載せた飛行機を日本へ送るという声明をエリック・ベッソン産業エネルギー相が出した。

ベッソン産業相は仏テレビで、日本に(福島原発事故の復旧作業に有効である)ホウ素供給を土曜日の時点で打診していたが、「あの時点で必要だと思わなかったか、返事をする時間がなかったのだろう」と説明している。

ホウ素は中性子〔訳注:放射能の中でも一番遮断が難しい〕を引きつけるものであり、また原子炉の核分裂を抑えることにも使える。

〔原文テキスト〕
13.05
Nyhetsbyrån Interfax uppger att Ryssland via utrikesdepartementet har erbjudit Japan hjälp med katastrofarbetet vid kärnkraftverket.

12.29
Frankrike kommer på torsdagen att skicka ett flygplan med 95 ton av grundämnet bor till Japan, uppger energi- och industriminister Eric Besson enligt AFP.

Besson förklarade i fransk tv att Japan erbjöds en leverans av bor - användbart i bekämpandet av kärnkraftshaveriet vid Fukushima - redan i lördags, men "antingen ansåg de då att de inte behövde det, eller så hade de inte tid att svara".

Grundämnet bor drar till sig neutroner och kan användas för att dämpa kärnklyvningen i reaktorn.

***


ホウ素が使い物になるといいですね。

現在、原発への賛否が世界中で問われており、ドイツでは運転を開始してから30年以上経っている原発を一時停止しました。選挙を控えた上での選択だと言われています↓
ドイツ、1980年以前に稼働した原発7基を一時停止へ(ロイター)

Tassaの住むスウェーデンでも昨日、原発反対のデモがあり、Sifoの世論調査によれば原発の賛否について「分からない」という回答が一年前の3%から21%に上昇したそうです(とは言え、原発廃止派は25%で、原発支持は依然55%と半数以上)。↓
Var fjärde svensk: Avveckla kärnkraften(スウェーデン人の4人に1人が:原発廃止を)

スウェーデンの原発政策について、ひとくちメモ
スウェーデンは70年代に脱原発運動が盛り上がり、1984年以来新たな原発建設を禁止してきました。また、2010年(つまり去年!)までに原発の完全停止する計画がありました。しかし、右派政権に交代したあたりからその流れも変わり、現在でも3つの原発にある10の原子炉(9原子炉が高経年化)が稼働しています。そして2009年、与党は現在ある原子炉を新しいのに替えることを発表しました。なので、事実上、脱原発から方向転換したことは確かです。
だからと言って、今現在原発を増やすという話はありません。積極的なのは全政党の中でも、連立政権(穏健党、国民党、中央党、キリスト教民主党)の中の国民党くらいです。ただし世論は半々ぐらい。

参照:
Kärnkraften rysare för regeringen (2010/03/18 -- Rapport)

Kärnkraftverk (Wikipedia)

退避勧告(※)例えば、福島原発80km圏内からの避難勧告を米国は出しており、スウェーデンもそれに続いています。民間でもそれぞれ対応をしているようです。


Svenska företag hjälper medarbetarna lämna Japan(スウェーデン企業、従業員が日本から出国できるよう手配)
上記記事には、出国する準備をする女性、本当に出国すべき事態なのか戸惑う男性、日本人の彼女を残してまで出国したくないと日本に留まる男性などの短いインタビューが掲載されています。
また、IKEAは1800人の社員とその家族を関西へ移動できるよう手配したそうですが、行くかどうかは個人に任せるとのこと。Erikssonは顧客のため携帯電話通信が機能するよう努める一方で、業務の必要がない社員とその家族を一時的に帰国させるとのこと。


またジャーナリストたちも帰国するようです↓
SVT-journalister lämnar Japan(SVT記者、日本から出国)

ところで、Aftenposten紙が原発関連のWL公電をアップしました↓
NUCLEAR POWER: EARTHQUAKE CAUSES FIRE AND LEAK OF RADIOACTIVE WATER AT NUCLEAR POWER PLANT

2007年の中越沖地震の際に起きた柏崎刈羽原発の事故に関してです。
秘密と言うより、そういうとをずっと叫び続けてきた人たちのかき消されてきた声が公電という形で出てきたという印象。
チェルノブイリ以来、原発について特集を何度もしてきたという鈴木耕さんの記事は非常に考えさせられるものでした↓
『時々お散歩日記』もし、原発が…(マガジン9)

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[追記2]
ウィキリークス・ウォッチ・ジャパンさんで原発関連、2公電の冒頭要約部分が翻訳されています。
淡々と公電翻訳を続ける姿勢、渋いです。見習わねば…。

東京公電:過去35年間に3度しか改訂されていないIAEAの耐震安全性ガイドライン08TOKYO3432
東京公電:電力会社や経済産業省による原子力についての隠蔽08TOKYO2993

2つ目の公電には原発、とりわけ六ヶ所村の再処理工場の稼働に反対してきた河野太郎さんについて書かれており、本人も公電公開を受けて公式サイトにてコメントしています。
ウィキリークスに公表された記事に関して

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六ヶ所村、浜岡…。そしてスラップ訴訟まで起こされている山口の上関原発建設反対運動。いろんな人が書いています。いや、書いてきました。
今じゃなくてもいい。落ち着いてからでも、開かれた情報・議論があることを切に願って。

また、被災地へ物資が早く届きますように。
茨城県や千葉県の被災地や、病院など必要なところにはちゃんと電気が供給されますように。
(参照:『保坂展人さんのどこどこ日記』より、「震災と同時の福島第1原発で広がる重大事態」。保坂さんも原発のことを追求してきた方々の1人です。)

エントリのタイトルが不適当な上、まとまりなくってすみません。

追伸:
日本の地震・津波・原発に世界の目が向いてる中、リビアのカダフィ政権は市民に対するさらなる爆撃を続けています。地震が起きてから、事態は悪化しています。国連はリビア上空を飛行禁止区域にして市民への爆撃を止めようという措置を取りました。反政府勢力がコントロールを握っていた街のほとんどは壊滅状態で、今ではベンガジのみになっています。そこも攻撃されるかもしれません。その一方で、国連によるリビア政府軍側への空爆など軍事力行使の承認もなされています…。

参照:
安保理、リビア飛行禁止決議採択 軍事力行使を承認(共同)

リビア反体制派に最後通告 カダフィ大佐、攻撃警告(東京新聞)

2011年3月16日

みなさまのご無事を祈ります。

ツイッターで有益な情報を流しているみなさまに頭が下がります。
何もできなくてごめんなさい。

いざ、こういう事態になったらただオロオロするだけで、電話も必要以上にかけてはいけないし、情けないですね。

お願いだから、政府には国民を信頼して、本当に必要な情報をしっかり出してほしい、それだけです。

(もんじゅの時みたいにウィキリークスに載るようなことはやめてほしい…。あと、個人的には、「こんな時に〜」という言い方で、個人の思想や発言が変に制限されないことを願います。いつでも、いや、こんな時だからこそ憲法21条の精神を!)

原発のこと、いろいろあるけど、とにかく今は職員の人たちに頼るしかなく、申し訳ないです。
福島原発にいる彼らが元気に帰ってくることを願ってやみません。
そして日本にいるみなさまのご無事を。

http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-12307698
2252: Kirby Kemper, a nuclear physics professor at Florida State University, has praised the Fukushima workers who have stayed behind to battle the fires and leaks. "There are 40 people or so that are in the process of risking their lives trying to pump sea water into these plants. They are real heroes. If they get the plants full of sea water, then things will cool down and we'll be OK," he told Reuters.

(日本時間・7:52)フロリダ国立大学のKirby Kemper原子核物理学教授は、火事と放射能漏れと闘っている残された40人の福島原発職員を称えた。同教授はロイターに語った。「40人くらいが残っているのだが、これらの施設に海水注入しながら自らの命を危険に晒している。彼らは本物の英雄だ。海水注入が満杯になったら、冷却されるはずで、私たちは大丈夫だ。」

P.S.
いろんなツイートが紹介されていますが、リビアの方から電話をもらったというさんのツイートが温かかったです。リビアも今、政府軍による市民への爆撃が続いているようです。
スウェーデンでも日本のニュースが非常に大きく取り上げられていますが、こちらのニュースは明らかな人災。止められる犠牲は止めてほしいです。

リビア政府軍、アジュダビア制圧-ベンガジ直接攻撃可能に (WSJ)

2011年2月27日

『ウィキリークス WikiLeaks アサンジの戦争』を読んで


ウィキリークス関連本がたくさん出ているようです。
メディア、ネット、政府や企業の透明性・説明責任などなど、いろんな問題に関わるウィキリークスという現象を議論することはとても大事だと思うので、出版業界も注目しているということは良い傾向だと思います。
多くの人がこういった問題に関心を持てば、企業や政府も「今までみたいにウカウカしてられないな〜。」と思ってマシな経営、マシな政治を始めるかもしれません(てか、それがそもそものウィキリークスの目的)。

そんな中、講談社の青木様より『ウィキリークス WikiLeaks アサンジの戦争』([著]『ガーディアン』特命取材チーム/デヴィット・リー、ルークハーディング[訳]月沢 李歌子、島田楓子)をご恵投たまわりました。
犬にくれるなんて、進歩的!多謝!(ルドルフとイッパイアッテナにも教えてあげなくちゃ!)
この本は英ガーディアン紙の視点からウィキリークスやそのリーク内容、共同作業の過程が描かれています。
ガーディアン紙は、アフガニスタンやイラクの戦争記録(War Log)や米外交公電の資料をあらかじめウィキリークスから手に入れ、独自の分析をしてきていて、英国内のメディアではウィキリークスともっともつながりの深い新聞。
(ガーデイアンのオンライン・本屋さんのページ→ WIKILEAKS: Inside Julian Assange's War on Secrecy

本当の「書評」を書くのは本一冊書くのと同じくらい難しいので、以下はあくまで「読書感想文」です。

***

まず、個人的には正直、ちょっとガッカリ。すでに知っている情報が多かったから。
とりわけ英語圏の関心ある読者にとってはそうだと思う。

そうは言っても、日本語になっていなかった「舞台裏」の話は多いし、あまり日本語のメディアで報道されなかった公電についての言及もかなりある。そういった意味では、ガーディアンがこの本を書いたことより、この本が日本語に翻訳された意義の方がむしろ大きいと思う。
出典もガーディアンだけでなく他紙の記事やドキュメンタリーなどいろいろで(だから参考文献が欲しかった!)、今までの経緯のまとめという点で有難い一冊。
ストーリー自体が面白いから、エンターテイメント性も高い(でも、たま〜に話が重複したり、脈略なく関係ない話がいきなり出てきたりするのはちょっと読みづらい…)。

私がこの本を読みたかった一番の理由は、ガーディアン紙とウィキリークスとの間に起きた亀裂について知りたかったから。
具体的に言えば、シュピーゲルも含め大手メディアとウィキリークスとの間に交わされた報道協定について、それからその亀裂は現在どのように報道に影響しているのか。

過去の記事などを読むと、両者とも相手が協定を破ったと主張していて、これは協定の内容が明確にならない限り水かけ論だな〜、と。
なので、本書で報道開始日時以外の協定内容が明らかにされ、個々の読者が両者の言い分をより公平にジャッジできるようになる、と私は期待していた。
しかし、「これが協定内容だっ!」といった感じで出ることは最後までなかった。
もしかして協定内容は秘密にしておくということが協定に含まれてるとかだったりして…(それではまるで米国流の箝口令ではないですか!)。
真相は未だ分かず。
ちなみに、ガーディアンの公電編集が偏向しているという指摘が、ロシアのプラウダ紙によってなされている(Whom do The New York Times and The Guardian work for?)。
プラウダ紙がどういう新聞かということを考慮するとしても、具体的な公電に指摘が及んでいるこの記事は要検討。

報道協定の内容だけでなく、いくつかのことが説明不足のように感じた。急いで書いたんだから、仕方ないんだろうけど…。
例えば、ウィキリークスが使っている暗号技術の話がちょっとおざなりな感じ。
書くならもうちょっと読者に分かるような書き方をした方がいいのかなーと。
暗号技術について書かないなら書かないで、成立させる書き方もできるような。
あと、人物相関図とか年表とかがあったらよかったかも。
特に日本の読者にとってはカタカナの登場人物がこれだけ出てきたら、混乱する気がする。
脇役(?)も面白い人たちが多いので、ひとりひとりの背景をもう少し詳しく書けば読みやすくなったような(私のお気に入りは、ちょっとしか出てこないけどオランダのハッカー、ロップ・ゴングリップ。なんかこの人とは友達になってみたい。本書には書かれてないけど、自由なISP作ったり、すごいことやってる人なのに、偉ぶってないし、自分は「臆病者だ」と認めてるところは親近感持ってしまう)。

スウェーデン・ラジオ(Sveriges radio)はWikiLeaks特設ページに年表があり、関連記事がリンクされている。これは、すごく親切。こういうのがあると良かった。

逆に言えば、ウィキリークスの本当の資本は、描写しきれないほど沢山の「協力者」たちなのだということだと思う。
協力者は政治家からハッカー、記者、そしてもちろん一番大事な内部告発者と多岐に渡り、ウィキリークスという現象自体が不可避的にいろんな分野に影響を及ぼしていることも示している。
プレイヤーが多様になると、利害の対立も起きてくるだろうけど、それって同時に監視の目が増えることにもなるわけで、いかさまも難しくなるかもしれない(談合がしづらい)。

本書の魅力は、ガーディアン内部での緊張感やわくわく感が伝わってくるところ。
時に、正直で、とても人間味あふれる書き方。ところどころで「既存の大手メディアだってこれだけ大事な役割を果たしてる」とか、「WL前から他メディアと協力する伝統はある」という主張が織り込まれているのはご愛嬌(ま、実際そうだし)。
意外にも、アサンジのことをそこまでけなした書き方でもなかったのも、なんかホッとした。
それから、記者たちが慣れないセキュリティ対策にわくわくしたり、四苦八苦してるところが妙に可愛らしいかった(笑)。

最後に、翻訳業界の慣行をまったく知らない者としてのつぶやき。
原書でイントロダクション(序文)になっているところをエピローグに変えてしまうのは、ちょっとどうかと…。
せめて、どうして構成を変えたのかという意図を説明した一言を添えるとか。
自分の論文が要約された時、構成を変えられたという苦い経験もあるので、筆者を尊重するなら構成をそのままにするべきだと思う。

***

ソーシャル・メディアの登場によってネット上での情報の流れが加速する中、「ウィキリークス」という現象をきちんと1冊の本という形で記録しておくことは非常に大事だと思います。
なんだかんだ言って、本書がこの現象を理解するための数少ない参考文献であることは間違いないです。
少しでも多くの人に読まれ、建設的な議論に発展することを願っています。

2011年2月21日

恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利

あまりにも多くの重大なことが起きています。
今回、ソース提示できてなくてごめんなさい。
大体、SVTやスウェーデンの大手紙で見たものです。WL公電は以前ツイートしたものです。

現在、ニュースはSVTなどのTVで見る程度です。
それでも、規模は異なるものの、イラン、モロッコ、イエメン、バーレーンなどなどのデモの様子がさかんに伝えられています。革命が一段落ついたかに見えたチュニジアでも、「非常事態」ということでデモが禁止されたりして、まだまだしっかり様子を見ていなければならない感じです。

何か役に立つことを書きたいと思ってきましたが、たくさんの人が亡くなっていく現実に言葉が出てきませんでした。

でも、今日のリビアのニュースは本当にひどい。
ひどすぎて、何か言わないと頭がおかしくなりそうです。
デモ参加者への対応、リビアは他の国に比べても始終厳しいものでした。ですが、そのせいで、国連でのリビア代表がカダフィ政権の正統性を否定し、もはや政府を支持する立場でないことを表明したり、兵士達が軍を離れデモに加わるといったことも起きました。すでにいくつかの都市では民衆側がコントロールを握ることに成功したといったニュースも聞きました。

少しの希望も、今日のニュースでかき消されました。
カダフィ政権は自国領土に空爆を開始したのです。

最初から体裁を取り繕うこともしなかったカダフィ政権。もしかしたら、自分の意志でなく自国領土に空爆させられる兵士たちもいるかもしれない。(空爆開始後、2機の飛行機が戦線を離脱。マルタ島に逃げ込んだそうです。でも、ベルルスコーニの「カダフィから何も聞いていないから、特に同国に干渉するつもりはない。」との旨の発言があったばかり。イタリアでも心配です。)
そして何よりここまで自分の国に裏切られた、国の未来を信じて亡くなった人たち。

だから、これを書いて何になるって問いからは逃げられないのですが。
とにかく怒りと悲しみだけ。亡くなった方達の冥福なんておこがましくて祈れません。そんなものより、もっと彼らが望んでたことが叶わない限り。

日本はこんな政権から「信頼」を得ていました。WLの公電()で、リビアの外相にあたるムサ・クサ氏が言った「EUともしうまくやっていけなくても、いざとなったらアメリカや日本、ロシア、シリアに頼る」という発言が記録されています。そこまでの信頼関係があったなら、人道的な見地からなぜ今まで日本は何もしてこなかったのか。そして、日本は今からでも遅くないからリビアを強く批判するべきです。「平和的な革命を」なんておざなりな台詞を言うんじゃなくて。有志議員ででもいいから集まって正式な声名を出すなり、カダフィの口座を凍結するとか、分からないけど、何か行動を起こすことを要求します。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

この、私たちの国の誓いを守ってください。

2011年2月3日

ウィキリークスを平和賞に推薦したのは誰? #wl_jp


ちょっと嬉しいニュースです。
ノルウェーの国会議員が2日、米外交公電などを公表している内部告発サイト「ウィキリークス」を今年のノーベル平和賞候補に推薦した。(中略)ウィキリークスを推薦したのは、ノルウェーの連立与党の一つ、左派社会党のスノーレ・バーレン議員(26)。同議員は自身のブログで「(同サイトは)汚職や戦争犯罪などを公表することで、人権や自由を求める闘いに貢献している」と推薦理由を説明した。

お若いですね。Wikipedia情報で恐縮ですが、この方、ピアニストで歌手でもあるそうです。しかも、19歳で市議会議員になってる!(北欧の選挙権&被選挙権は18歳から)

彼の主張は、本人のブログで短くまとめられていました↓
Why I have nominated Wikileaks for the Nobel Peace Prize 
(Snorre Valen)

以下その翻訳です。

なぜ私はウィキリークスをノーベル平和賞に推薦するのか

言論を発する人があなたと同じ意見を持っているとき、言論の自由を支持することは常に簡単です。これは、政府が失敗しがちな自由主義と民主主義というものにおける「試金石」なのです。例えば、西側諸国は「友好的な気質」を持った抑圧的な政権を容認する長い歴史を持っています。インターネット企業は検索エンジンを検閲して、中国を支援しています。そして、多くの国々が「メッセンジャーを撃とう」とすることで、公共の利益となる資料を公開しているウィキリークスの明白な権利に対向しています。
政府によって機密とされる資料を公開することは、新聞やメディアが何十年と実践してきた明らかに正当な行為です。こうしたやり方で、世の中の人々は政府が説明責任を負わなければならないような権力の濫用を認識してきたわけです。インターネットでこのことは変わらない ー むしろ、インターネットに接続しているヴァーチャルな個人誰もが貢献できるという意味では、ネットによって情報がより手に入れやすく、広めやすくなり、より民主的になってきます。
それにもかかわらず、多くの人がウィキリークスのような組織が出てくると、情報の自由という地図を描き直そうとします。通常は言論の自由を守っているような政治権力や政治機関が、突然、ウィキリークスが示す危険、安全保障への脅威を、そう、「テロ」という言い方をしてまで警告し出すのです。そうすることで、彼らは民主主義の価値観と人権を守ることに失敗しています。実際、彼らは逆のことに貢献してしまっているのです。どんな犯罪が世の中に知られてはいけないかなんていうことを規制するのは政治家の特権ではないし、そうであってはいけない。規制がなかったから、メディアを介してそうした犯罪が知らされるようになってきた歴史があるわけですし。
劉暁波は、中国における人権、民主主義、言論の自由のために闘い、昨年ノーベル平和賞を受賞しました。同様に、ウィキリークスは腐敗や戦争犯罪、拷問(その他多くのこと)を公開 ーー 時にはノルウェーの仲間も ーー することで、世界的にとても価値あるとされることのための闘いに貢献してきました。最も新しいところで言えば、チュニジアの大統領一家が経済をどう取り決めてきたかを明らかにすることで、ウィキリークスは24年間も続いてきた独裁体制を停止することに小さな貢献を果たした。
そういった情報を公開する権利を禁止したり反対することは犯罪です。いくつかの(あるいはすべて)の公開されている資料の中身について私たちがどう考えるかということに関係なく、その権利は守られるべきものなのです。ウィキリークスをノーベル平和賞に推薦することを私は誇りに思います。
スノーレ・ヴァーレン、国会議員/国会議事堂

***
去年、劉暁波さんの受賞の際、アメリカは中国の弾圧を批判する一方で、同時 にウィキリークスの活動も妨害しており、そのダブル・スタンダードっぷりに非難の声もありました。もし、本当にウィキリークスが受賞するようなことになっ たらアメリカはどうするのでしょう?各国にボイコットを呼びかけるのでしょうか。そしたら日本はどうするのでしょう?さてさて、どうなることやら。

ヴァ─レン氏

日本に関するリーク 〜その8〜 #wl_jp

一昨日、東京発の公電が2つありました!
1つは核拡散や他国との関係についてです。重要そうなのですが、かなり長めで「ううっ」っとなっていたところ、ウィキリークス・ウォッチ・ジャパンで抄訳がすでに掲載されていました(いつも早い!)。

もう1つはすごく短いのですが、Australia Groupのある活動に参加することに日本はOKだという内容。

#09TOKYO1598

(S)在東京大使館は2009年2月9日、永井克郎外務省総合外交政策局国際テロ対策協力室長とタニグチ・サトシ軍縮不拡散・科学部生物・化学兵器禁止条約室企画官に、件の別公電を渡した。彼らはオーストラリア・グループ情報交換総会のことは承知しており、日本は参加するものと考えていると言った。

Australia Groupて何ですかと、思ったら、かなり沢山の関連公電を目にしました(中身は未読)。Wikipediaによると、数ヶ国で形成される非公式な団体で、1985年に設立されたそうです。 目的は化学・生物兵器が拡散しないよう、コントロールが必要な輸出業者を洗い出すこと。毎年パリで会議が開かれており、この公電が書かれた2009年は9月に会議があったそうです。題目は「エンド・ユーズ[注:最終的な買い手のことと思われる]の管理実施に関する最良手順のガイドライン(Best Practice Guidelines for Implementing End-Use Controls)」 ←これはベルリン発の公電(#09BERLIN992)にありました。

そして、2008年の会議の模様を詳述してある公電(#08PARIS750)が、テレグラフ紙に掲載されていました。
AUSTRALIA GROUP: PLENARY MEETING, PARIS, APRIL 14-18, 2008

長すぎて、きちんと読めてないのですが、オリゴヌオコレチドの扱いについてだとか合成生物学(synthetic biology)の技術をどう管理するかとかが議論されているようです。私には何のことやらさっぱり…化学の勉強をしておけば良かった。

ロシアの輸出における不透明さが非難されていたり、総会前後で二国間取引が行われていたり、といったことも述べられていました。

以下、日本に言及がある部分の抄訳。

日本は、ガイドライン['Guidelines For Screening Suspicious Orders' ]はスクリーニングの実施に際し各国の裁量権を最大限まで認めるようにするべきだと提案した。

米国、クロアチア、EU議会、ドイツ、日本、オーストラリアは非参加国に対するアウトリーチ活動[注:組織外へ影響力を高める活動と思われる]について報告した。

日本は、経済産業省によって管理されている内部コンプライアンス・プログラムを概説したプレゼンテーションを行った。産業界へのアウトリーチは、産業界において輸出管理の重要性に対する意識を高め、輸出法や輸出規制を周知させた。これによって、輸出管理法に該当する商品の80%が、経済産業省に登録されていて、積極的に内部コンプライアンス・プログラムを使用している企業によって輸出された、と日本は報告した。また日本は、無形技術移転の機密技術のコントロールにおける進捗状況を説明した。経済産業省は、研究機関、大学、民間企業へのアウトリーチ・プログラムを実施するための計画を立てた。経済産業省は、これらの組織において技術の管理や機密度に対する意識が欠如しているという事実に直面しており、輸出法及び規制を説明し、学術機関や民間企業が日本の国家保障に責任を負っているということを強調するために、同省は教育や訓練を行っている。

外務省のHPにも説明があったので秘密組織とかではないですよ→オーストラリア・グループ(AG:Australia Group)の概要

でも何で「非公式(informal)」組織が実質的な輸出のコントロールができるのか。その法的な正統性はどうなのか、気になります。(もっとも、この公電によれば、日本は同組織の決定が法的拘束力を持たないように、と主張しているようだけど。)

あと、Aftenpostenからの公電で言及があったウラン精鉱を輸出しているとかいう疑惑の会社を外務省などがチェックする、というのは、どうなったんだろう。おそらく、その会社を監視するのも、この オーストラリア・グループの活動の一環ということなのかもしれません。

2011年2月2日

アサンジのお母さん 〜60 minutesより〜 #wl_jp


日曜日にCBS News60 minutesというインタビュー番組にジュリアン・アサンジが出演しました。
この番組に触れたニュースもあったので、ご存知だった方も多いと思います。

報道で話題になっていたのは「ストックされている情報は10万人が鍵のかかった状態で持っている。もしウィキリークスがいかなる手段を用いても情報を公開できない事態になった場合は、鍵を10万人に送信して情報が公開される仕組みになっている。」という部分でした。
組織がなくなっても、人々の意志が情報公開を継いでくれる、というわけですね。

ただ、このことは割と前にも言っていたので、私が驚いたのは別のことでした。

それはアサンジ氏のお母さんのことです。
活動家だったらしいということは聞いたことがあったのですが、まさに「この子供にしてこの母あり」というエピソードが語られていました。

彼女は活動家で、英国主導のオーストラリア奥地で行われた核実験に関する情報を集めて、科学者らを手伝っていた。ある晩、ジュリアンが母と2人でいたら当局の人間に尋問された。

アサンジ:「ちょっと奥さん、夜中の2時に子供と一緒に外出してるなんて…。母親として、どうなんですかね。政治活動から外れといた方がいいんじゃないですか。」と。そして母は、実際その後10年間、政治活動はしなかった。僕に何も起きないようにとね。僕の人生で体験した最初の「権力と機密の濫用」です。

核実験のことはもう探るな、とお母さんは子供を盾に脅されたわけです。しかも子供の目の前で。
他に印象的だった内容は以下の通りです。

ウィキリークス自身の秘密主義が批判されているというコメントに対し、

「私たちが望んでいるのは政府の透明性であって、[一般の]人々の透明性ではない。」という回答。

個人情報はネットなどで漏洩しまくる一方、政府や企業の情報公開が進んでいない/後退していることを簡潔に批判しているなあ、と関心。

「機密が要らないと言っているわけではありません。そうではなく、国家省庁の内部の人間が、腐敗や濫用があると認めた時に、内部にも外部にもその事態についての説明責任を果たせるような仕組みがない場合、その情報は公開されるべきだということです。私たちはそのパイプ役なのです。」

活動のイデオロギー(共産主義とかなの?何なの?という疑問)に関して、

「私たちは自由報道活動家(free press activist)です。鯨を守れとかそういうことではなく。捕鯨支持なのか、反対なのか、それを判断するための情報を提供するということが要なのです。なぜか。公正な市民社会をつくるには生の判断材料が必要だからです。」

全体的にとても良いインタビューだったと思います。インタビュアーのSteve Kroftは、インタビュー後には「ウィキリークスはやっぱ報道機関だな。」と考えを改めたそうです。
すごくいろんなこと(ウィキリークスに直接、もしくは緩やかに関連したこと)が進行しています。公電も出続けています。
正しい情報はマシな世の中を作るきっかけになると、改めて感じさせる出来事が多くなるかも。

[追記]
よく考えたら、アサンジのお母さんもアサンジだった…。きゃー。
ジュリアンのお母さん、が正解。

2011年1月28日

もしエジプトに電話される方などいれば

まとまったことを書く時間がなくご無沙汰しています。
オープンリークスのHPが更新されたり、ウィキリークスもいろんな公電が出てきているのですが…。
(追記:エジプトに関連した公電も意図的に増やしているよう。記事もあります。
→ムバラクの秘密警察による虐待と弾圧の証拠:Egypt - Evidence of torture and repression by Mubarak´s Police)

チュニジアに続き、エジプトでデモが拡大しています。
ネット・アクティビスト、いわゆるハクティビストがTor(ネット上の匿名化技術)などを使ってエジプトの人たちの通信支援をしてきたのですが、現在ネットそのものが完全に遮断されています。

そこでハクティビストたちも、基本に帰れということで、ハム無線や衛星の利用が試みられています。
インターネットもエジプト国外の電話番号を使ったダイヤルアップ接続ができます。
なので、もしエジプトに電話される方や、そういった知り合いの方がいる方などがいましたら、何らかの方法でダイヤルアップ接続ができることを教えてあげてください!
(ただし、電話代はかかるのでそのことも注意してください!理論的にはコレクトコールみたいにして、エジプト側にいる人間が払わないですむようにできるはずなんですが、私はやり方が分かりません…)

以下のHPに接続方法と使える電話番号一覧が書いてあります(英語)。
Back to Basics: Using dial up internet

それに加えて、スウェーデンのハクティビスト集団Telecomixもダイヤルアップ用の番号を取得した模様です。
詳しくは"Internet Access"の項を参照してください:
http://werebuild.eu/wiki/Egypt/Main_Page

現地の情報はアルジャジーラがずっとライブで放送しています。
http://english.aljazeera.net/watch_now

Appelbaum(@ioerror)のツイートを見た感じだと、どうやらエジプトの文化大臣の携帯電話番号を手に入れたようです。(携帯で居場所とかいろいろ分かるらしい。これでムバラク大統領の場所も分かったりして!)

「エジプトでトラッキングすべき重要人物の携帯番号が分かる人、俺に送ってくれ。トラッキングするから」 (2時間前のツイート)



ちなみに約1週間前にヨルダンやアルバニアでもデモがあったというニュースがありました(BBC)。
Jordan protests: Thousands rally over economic policies

Albanian PM Berisha defiant after three die in clashes

アルバニアについてのニュースは聞かないのですが、ヨルダンでは今日も3000人以上のデモがあったそうです。
Jordanian protesters demand political reforms (ロイター)

[追記]
エジプトで、何が起きているか。写真の力強さを改めて教えてくれます。
Jan 28 The Egypt Protests

アルジャジーラはエジプト関連の写真や映像にクリエイティブ・コモンズのライセンスをつけているそうです!
Al Jazeera Releases Egypt Coverage Under Creative Commons (UPDATED)

写真はFlickr経由。
チュニジア、ガザ、イラク、レバノンの映像もCCライセンス(改変禁止・クレジット表示の条件つき)の下で、掲載されています:
http://cc.aljazeera.net

みんなのためになる情報は共有しよう、1人でも多くの人に伝えよう、というアルジャジーラの報道姿勢に、素直に感動します。

By Al Jazeera English (via Flickr)

2011年1月16日

日本関連のリーク 〜その7〜 (15公電のツイート・メモなど)


[追記]
下記でツイートした公電の一部が翻訳されています!
アイスランドはナガスクジラの捕獲を日本輸出のためだけに行っている (ウィキリークス・ウォッチ・ジャパン)

[追記2]
アイスランド発の公電が公開されたことと、ツイッターがアイスランド議員などの情報提出を迫られたことは、なんとなく関係があるのかしら…と、まず考えられる。タイミング的にです。確証はないです!

***
 一昨日、「日本」のワードを含む複数の公電が一挙にアップされたことを@tokyorichさんのツイートで知りました。
少しは報道されるかと思いきや、ネットで調べた限りではヒット数はゼロ。なので、詳しく書きたい所なのですが、ちょっと時間がないので、日本にどう言及されたかというツイート(半分以上が@tokyorichのツイートの翻訳)のコピーをとりあえず並べておきます。

文書番号の最初の数字が公電が書かれた年(09なら2009年)。
その後に発信先の大使館が続きます。
以下、@tassaleaskより。
***
#09REYKJAVIK25 #wl-jp 捕鯨委員会で日本に気を遣いすぎてるとアイスランドがシロナガスクジラ漁を始めるかもしれない。翻訳RT RT@tokyorich Too much respect… #wikileaks http://bit.ly/eRs1pz 
#09REYKJAVIK104 #wl-jp 日本が捕鯨交渉で特別視される理由が、アイスランドには分からない。翻訳RT@tokyorich Iceland does not see why Japan should…#wikileaks http://bit.ly/hgQ4sX

#09BERLIN1054 #wl_jp 民主党の勝利に対するドイツ・メディアの反応。(鳩山の不可能な公約。国民の期待を裏切ることになるのでは…などの予測) 参照RT@tokyorich #wikileaks http://bit.ly/eYocLt

#09MONTREAL80 #wl_jp 日本と他27ヶ国は北朝鮮による航空上の安全保障の脅威に大混乱。(2009.03)翻訳RT@tokyorich So Japan and 27 other countries… #wikileaks http://bit.ly/hQAGI0

#09REYKJAVIK122 #wl_jp 日本はアイスランドのシロナガスクジラ肉をそのまま買ってくれるかな?翻訳RT@tokyorich Is Japan taking on Icelands's fin... #wikileaks http://bit.ly/fKEJed

#08REYKJAVIK105 #wl_jp アイスランドの捕鯨は日本への輸出にかかってる。翻訳RT@tokyorich Icelandic whaling may depend on exports to… #wikileaks http://bit.ly/h5WgvJ

#08REYKJAVIK110 #wl_jp IWCの交渉が意味することは、捕鯨の現状維持の正当性。(アイスランド)翻訳RT@tokyorich IWC negotiations… status quo… #wikileaks http://bit.ly/hTo8OJ

#06BRASILIA1089 #wl_jp エタノールとバイオ燃料における日本・ブラジル間の協力関係について米大使館が注視。翻訳RT@tokyorich ...on Ethanol and Biofuels. #wikileaks http://bit.ly/fhDvDb      

#07SAOPAULO165 #wl_jp 2007年、日本はエタノールを代用燃料として考えていた。 翻訳RT@tokyorich ...ethanol as an alternative fuel in 2007. #wikileaks http://bit.ly/fsRlA0

#08SAOPAULO269 #wl_jp 2007年、日本はブラジルから3億6千3百万リットルのエタノールを輸入した。翻訳RT@tokyorich Japan imported 363 million... #wikileaks http://bit.ly/hbtJhf

#08RIODEJANEIRO205 #wl_jp ブラジルの半官半民石油会社Petrobasが三井と提携。 翻訳RT@tokyorich ...Petrobas is working with Mitsui #wikileaks http://bit.ly/go6n5z  

ついでに1月5日付けでアップされた公電。#09MOSCOW2541 #wl_jp シェル代表曰く、サハリンからの液化天然ガスは米国でなく日本に輸送している。公電自体の主題はロシアの石油会社ガスプロムは将来的に見ても芳しくないということ。

#09HANOI809 ノン・ドゥック・マイン・ベトナム共産党書記長の来日時、麻生元首相との会談での投げやりな態度の描写あり。http://is.gd/RPc6X7(WL)、http://is.gd/AMWvaH(外務省HP)

#08REYKJAVIK71 #wl_jp アイスランド駐在の日本大使が、、国際機関やNGOと協力して、アイスランドによるパレスチナへの救援物資輸送作業を監督する件に触れられている。http://is.gd/WlbNNw

日本についての言及もあるけど、それより気になることが書かれていた…

#09REYKJAVIK41 とある反NATOデモでは参加者が1人だった。彼は駐禁を取られた(笑 "one protest had 1 participant - an anti-NATO demonstrator..." http://is.gd/y2ZrWK    

***

さて、2時間前にAftenbladet紙が東京発のSecret公電を公開しました。(今回ウィキリークスがリークした公電ではもっとも機密度が高いのがSecret。)
これは、かなり重要そうです。時間ができ次第、続きを書きたいと思います。
(日本のメディアで報道&検証されることを期待してます!)

とりあえずはツイートのコピーだけで。

***
#wl_jp 東京発。Baiken-Uという日本が95%所有するコンソーシアム(共同企業体)が、イランへウラン精鉱(yellowcake)を売ろうとしているとの疑惑について。http://is.gd/B9QLSn(Aftenposten) 

#wl_jp(続 き)AP通信での記事が元になっているが企業名を明かしたニュース・ソースは今のところ見つからない。公電の内容はアメリカが、この疑惑の検証を日本に依 頼。外務省の協力を得ながら経済産業省が調査することになった。(公電の時期は2009年12月と2010年4月)

#wl_jp 公電で言及されている記事はおそらく、これ:Intel report: Iran seeking to smuggle raw uranium http://is.gd/DUIejG  
 

2011年1月10日

ダニエルとジュリアンの違い (オープンリークスとウィキリークス)#wl_jp

三木直子さんのブログでOpenLeaks と カリスマ(あるいはその欠如)というエントリを読みました。
(三木さんは去年のChaos Computer Club主催のカンファレンスでウィキリークスが行った講演内容を翻訳し、字幕もつけて下さったプロの翻訳家さんです→26C3 字幕つきYoutube画像 とてもいい内容なので是非ご覧になって下さい。)

このエントリにコメントしようと思ったら長くなりすぎたので、自分のブログに載せることにしました。

***
ダニエルの講演を聴いて思ったのは、アサンジの方がある意味より現実的で、ダニエルの方が完璧主義なんじゃないかということです。

彼にしたら、組織の活動と目的が、組織構造そのものや技術的なシステムと一貫していなければならないのかなって。
彼の信念は、一言で言えば、Distributedなのかと(日本語で言うなら「脱中心」のがピンとくるかもしれません)。インターネットの本来の力を信じ、「サイバースペース独立宣言」(EFFの原文: A Declaration of the Independence of Cyberspace)に見られるような昔ながらのオタク気質(いい意味です!)が彼には残っているのかなと。

変なたとえですけど、成田空港建設をめぐる三里塚闘争に、仮にこの2人が加わっていたとしたら、 ダニエルは海外に行くときは陸路とか航路を使って意地でも飛行機に絶対に乗らないタイプ。でも、アサンジは乗れる。プラスになると判断すれば、飛行機に乗ってでも活動を続けるタイプ。

つまり、アサンジはより現実的な人間で、そういう点では妥協できてしまうのかな、と。
彼は「脱中心」とは別のコトにプライオリティがあるような気がするのです。それは告発の効果を最大化すること。言い換えれば、公益の高い情報がなるべく多くの人に伝わることです。それは、彼のジャーナリストとしての経験も影響しているのかもしれません。
もっと言うなら、真実を伝えるということにかけては、彼も完璧主義なのかもしれません。周りの反対を押し切って、実名をすべて出そうとしていたという所を聞くとそんな感じがします。
(それが倫理的にどうなのか、まだ私は判断できませんが)

ウィキリークスがこれからどうなるかは分かりません。
でも、現時点で一定の成功(私は大成功だと思う)を収めたことは間違いないです。知名度が上がったことで(パブリシティ)、情報を多くの人に届けることができたーーCryptomeなど多くのリーク·サイトができなかったことはここにあると思います。それは、初期、ウィキリークスという組織自体の秘匿性を維持したおかげもあると思います。Cryptomeの創設者などはそれを批判したわけですが、組織を維持し、かつパブリシティを高めるためには結果的に良かったということも示したのではないかなぁと。(あと、三木さんがおっしゃられてるようにやっぱりアサンジのカリスマ性も否めない)

一方、オープン·リークスはすでに知名度を持って出発するわけですから、彼らのやり方は現在の状況にかなっていると思います。
これがうまく行けば、彼らが目標とする現実世界を反映した脱中心の組織·システムができあがるのですから、すごいプロジェクトだと思います。

ウィキリークスもオープン·リークスも、大きな不正/義がどんどん不可視化されていく世界を変えようとしている点では同じです。
彼らを対立するものとして眺めるのではなく、どちらのいい所も私たちが享受できればいいと思います。欲を言えば、どちらも何らかの形で支援できれば、なおいいですけど。

残された大きな課題のひとつは内部告発者の保護、直近の問題はマニング兵士の救出だと思います。(彼はウィキリークスの被害者ではなく、米国の非民主的な体制の被害者であることは強調しなければなりませんが)

以上、翻訳家でも技術屋でもジャーナリストでもない犬の遠吠えでした。

追伸
ダニエルは名字(Domscheit-Berg)のタイプが面倒くさいのでダニエルとしました。
なぜか私、ダニエルはダニエルと呼べるけど、アサンジをジュリアンとは呼べない。。
これもカリスマゆえなのでしょうか…?(笑)

***
[追記]
当サイトでのオープンリークスについてのエントリ(2010/12/11)

オープンリークス自身がリンクを貼っていたサイトに関する詳細な記事(英語)↓
From Wikileaks to OpenLeaks, Via the Knight News Challenge

Julian Assange & Daniel Domscheit-Berg

2011年1月9日

ツイッターへの個人情報開示を請求した裁判所命令の翻訳 #wl_jp

日本でも記事が出た、米地方裁判所によるツイッターへの個人情報開示請求。
ウィキ側の情報提出を要求か ツイッターに米捜査当局(共同)

日本語では小林恭子さんの英国メディア·ウォッチでもっと読めます。
米司法省が、ツイッターに対し、アサンジやアイスランド議員の個人情報開示を要求

ニュースの出所はアイスランド議員のブリギッタ・ヨンスドティルのツイート
(彼女はSVTのドキュメンタリー『WikiRebels』にも出てました。)
※@nofrillsさんのまとめ(Togetter)→米司法省Twitterにユーザー情報開示を請求

そしてSalon紙が裁判所命令文書を独占入手↓
DOJ subpoenas Twitter records of several WikiLeaks volunteers

A copy of the Order served on Twitter, obtained exclusively by Salon
(Twitterに出された命令のコピーはSalonが独占入手した。)

この文章の後にそのPDFへのリンクがありました。
一次資料が大事と思い、そちらを翻訳しました。議論の参考になれば幸いです。
法律文書は原文も分かりにくいので、訳文は分かり易さを重視して訳しました。
(なお、こちらは法律の専門家ではないので、もし間違いなどあったらご指摘頂けると助かります。迷った箇所などは[]で原文、又は説明を挿入しています。)

***
東ヴァージニア地区 合衆国地方裁判所
アレキサンドリア管区

MISC. NO.[miscalleneous number]10GJ3793

秘匿条件つきで申請[Filed Under Seal]

命令

今案件は合衆国法典第18編2703条[政府によるアクセスの要件]の2703条(d)に従って当裁判所が処理することになった。2703条d項は、(電子コミュニケーション·サービスや遠隔計算システムを提供しており、カリフォルニア、サンフランシスコにある)Twitter,Inc.に対し、特定の記録やその他の情報(添付Aで明示)を開示するよう請求するものである。請求者は特定の明確な事実を提示しており、それによって求められている記録や情報は進行中の犯罪捜査に関連し、重要であると信じるに足る合理的な根拠を示した、と当裁判所は決定を下した。

求められている情報は進行中の犯罪捜査に関連し、重要であると思われ、この捜査や請求や命令に関わる誰かに当命令について事前に通知することは、捜査に深刻なダメージを与えることになると思われる。

合衆国法典第18編2703条の2703条(d)に従って、Twitter,Inc.は当命令の日付から3日以内に、アメリカ合衆国に添付Aで明示された記録やその他の情報を引き渡すことが命じられた。

さらに、裁判所書記官は連邦検事事務局にこの請求と当命令の複写3部を提出することも命じられた。

さらに、請求と当命令は当裁判所が命じない限り公表不可[sealed]とし、
当裁判所が許可しない限り、Twitterは、登録加入者又はいかなる人物に対しても、当裁判所の請求と命令が存在すること、及び捜査が存在することを明かしてはならない。

アメリカ合衆国下級判事 Theresa Buchanan

2010/12/14

添付A
入手可能であれば、以下の情報を提出すること。CD-ROM、電子メディア、Eメール(tracy.mccormick@usdoj.gov)上の電子データが好ましいが、そうでなければ703-299-3981へのファックスで。

A.次の顧客、もしくは登録加入者(WikiLeaksに登録されている、もしくは関係のあるアカウント)のアカウント情報;2009年11月1日から現在までの期間における rop_g; birgittaj; Julian Assange; Bradley Manning; Rop Gongrijp; Birgitta Jonsdottir

1.登録加入者の名前、ユーザーネーム、仮名[screen name]、またはその他の人物証明
2.連絡先住所、現住所、会社住所、Eメール·アドレス及びその他連絡先情報
3.接続記録、セッションの時間及び持続時間の記録;
4.サービス[利用時間]の長さ(開始日時を含む)、使用されたサービスのタイプ
5.電話番号、又はその他の登録加入者が特定できる番号(一時的にアサインされたネットワーク·アドレスも含む);及び
6.そうしたサービスに対する支払い方法と出所(クレジット·カード番号や銀行口座番号を含む)と請求書記録

B.A部にあるアカウントと時期に関するすべての記録と情報

1.上記当該アカウントへ、又はそれらのアカウントからのあらゆる接続におけるユーザーの活動記録(日時、[時間の]長さ、接続方法、転送データの容量、ユーザー·ネーム、[データ等の]送信元・宛先のIPアドレス含む);
2.コンテンツ外の情報で、上記当該アカウントによって、又はそれらのアカウントのために蓄積[記憶/stored]された通信やファイルの内容に関連・付随するもの(例えば、送信元・宛先のメールアドレスやIPアドレス)
3.上記当該アカウントに関連するメモや通信記録。

***


今回の件は、WikiLeaksだけでなく、ネット上での個人情報保護が以下に脆弱なものかを明らかにしたと思います。
Facebookのプライバシー侵害のことは年末にも書きましたが、それはFacebookだけでなくTwitter(利用規約の「ユーザーの権利」を是非一読してみてください)、Googleなども、ユーザーの情報を勝手にどうとでも使えます。
(例えば最近のGoogleに関するニュース→Google violates laws: police ストリート·ビューの写真を取る際に、通信データも採集&保存していた)

そして、個人情報収集を秘密裏に行えるような法整備がなされていることも重要です。
今回は使われなかったけれど、例えばNational Security Letter (Wikipedia)
これも個人情報を提出させるだけでなく、命令が出たことも言ってはいけないという代物です。
このLetterは2003〜2006年の3年間だけでに19万通以上発行されているとのこと。
EPIC(Electronic Privacy Information Center)の記事も参考になると思います。

ただ。今回の裁判所決定を議員に事前に通達できるようTwitterが努力したことは評価するべきでしょう。
情報収集の対象にもなってるRop Goggrijpのブログエントリのsecond PDFは"order to unseal the order"(緘口令解除命令)で、Twitterが地裁に抗議しなかったらこのことは明るみに出ることすらなかったのが分かります。

(ちなみにRop Gonggrijpは、1993年にオランダでXS4ALL ("Access for all")という言論の自由が確保されたプロバイダー(Free Speech ISP)を創設したうちの1人。時を同じくしてジュリアン·アサンジもオーストラリア版Free Speech ISPであるSuburbiaをスタートさせました。)

大企業と国家は市民から不可視になり、市民が国家及び大企業から丸見えになる。
その流れの中で、今回の事件が「発覚した」ことはとても重要だと思います。

[追記]
nofrillsさんからツイート(こちらこちら)をもらい、「添付」のB2部分を修正しました!ありがとうございます!B2は、この命令文がフォロワーにも影響があるという根拠となっている重要な部分です。他の方でも、修正すべき箇所を教えていただけると助かります★

[追記2]
Fast companyの記事を元にした日本語エントリ(Long Tail World)で緘口令解除令の経緯が書かれています!
政府からの召喚状、ツイッターがとった対抗策:Twitter's Move to Overturn WikiLeaks Subpoena Gag Order

なぜTwitterは緘口令に対抗できたか、ということですが、
グーグルからツイッターに引き抜かれれた法務顧問Alexander Macgillivray(...)氏の母校はインターネット法の頭脳を輩出する名門ハーバード大学バークマンセンターで、創設者は 他ならぬペンタゴン白書のリーカー、ダニエル・エルズバーグを擁護したチャールズ・ネッソン教授。(同エントリより)

さらに同記事では、電子フロンティア財団Electronic Frontier Foundation/EFF)と法律スクールのコラボ企画Chilling Effects clearinghouseを牽引しているWendy Seltzerとの関係にも触れています。
EFFは当ブログでもたまに引用していますが、ネット上の言論の自由を技術面と法律面から守ろうとするアメリカのNPOです。

[追記3]
関連記事が吉田秀さんのブログ「気まぐれ翻訳帖」で翻訳されています!
気まぐれ翻訳帖・ツイッターの頑張り

やっぱりここは、Crypto-anarchismだよ!

2011年1月6日

便利なサイトいろいろ(リーカー向け)#cablegate #wl_jp

ウィキリークスを含めたいろんな告発サイトを読み、その情報を広める人たちをリーカーと私は勝手に呼んでいます。
(漏洩者/告発者はSourceだから、間違いではないかと…)

そんなリーカーに便利なサイトを今日はご紹介。

まずはCable Search
Googleアラートを使って、例えばWikiLeaksのサイトとJAとかJapanなどのキーワードを設定すると、キーワードが含まれた公電がアップされた際に通知メールが届きます。
これはこれで便利なのですが、実は検索があまり正確でない。見落としがあるのです。
でも、Cable Searchはかなり正確。
重要度が分かる格付けシステム付きだし(ただし日本関連の公電はほとんど評価されてないです)。
でも正確過ぎるという難点も。例えば、Japanが本文に入っている公電が全部出てくるので、そこまで関係ないブラジリアやマドリッドからの公電もヒットしてしまう。
ちなみにこのサイトは、Eccar(European Centre for Computer Assisted Research/コンピューターによる調査のための欧州センター)とVVOJ(オランダ-フラマン語圏の調査報道ジャーナリスト連合)のコラボだそうです。

次ににも言及したCable Tags
ほとんどのタグや本文内の略語の正式名称が、ここでカバーされているようです。

3つ目はPrivet Bank
Tassaはスウェーデンの犬ですが、こちらはウクライナの猫によるサイト。(ページの一番下までスクロールすると、今日のミルクを得るためにキーボードの上で頑張る猫の同志がいます。)
Crypto, Covert, Cy, Spanky, Cyndiという名前の5匹の猫だそうです。

由来はこちら→Crypto cat(NSAのサイトへジャンプ)

WikiLeaksからアップされた公電が、実は削除されたり編集されているということにお気づきでしょうか?ざっと見た感じ、個人名を匿名にしたとか、そういう変更が多いようです。
そんな削除された公電や編集前の公電も保存&公開&比較しちゃってるのがこのサイト。
このサイトの一番の利点は、Aftenposten紙やGuardian紙などが独自公開した公電もチェックでるということです。現時点でそういった「非公式」公電は300以上あります。
このサイト、もともとは銀行関連のリークをしているサイト。
ウクライナ最大のPrivat Bankにちなんで、Privet Bankというサイト名にしたと思われます。
(Privetはロシア語で「こんちは!」とか「やあ!」、英語で言えば「Hi!」の意味。Privet Bankは「やあ、銀行」となる。ちなみにウクライナでは東部ではロシア語、西部ではウクライナ語が使われることが多い。)

最近、飽きてきた猫たちは新しい遊びを始めたそうです↓
Talking Cats Play Pattycake(Youtube) 

4つ目はDazzelpod
これもPrivet Banksと同じく、公電のすべてのヴァージョン(編集過程)が分かるようになっています。例えば、同じ文書番号でも#1、#2と異なるヴァージョンがある公電もあります。こちらの方が、見やすいです。
ただしこちらはWikiLeaksがアップした「公式」公電しか見れません。

5つ目はKABELS
こちらも公電検索エンジン。
オープン·ソースで早い、見やすい、安全(全般的にSSLで、ログやトラッキングの記録は残らない)!

6つ目は翻訳コラボ·サイトCrowd leak
ハクティビスト集団AnonymousによるOperation leakspin作戦の進化型。
Operation leakspinは公電リークへ世間の注目を集めるための作戦の総称で、公電の翻訳·分析·要約などを呼びかけていました。(公電翻訳をしているTassaも知らず知らずに作戦に参加していたということに!)
この翻訳&要約をもっと洗練された形にしたのがCrowd leak。独自の記事もあります。写真付きで見やすい!
でも、最終更新が1月3日なのが気になる…。
サイト名はCrowdjournalism(Crowdsourced journalism)にちなんでいます。

誰もがニュース/知識の創造に参加、修正ができる、草の根ジャーナリズムの流れの一環。権力や企業寄りのバイアスが少ないという点が利点だと主張しています

ちなみにLeakspinは、ロイツマガールの別称リークスピン(Leekspin/長ネギスピン)をもじったものだそうです。リークスピンはフィンランドの民謡とアニメ『BLEACH』の映像を組み合わせたフラッシュ動画らしいです。Anonymous、幅広いな…。

他の犬猫も頑張ってるのだねぇ…

2011年1月4日

日本に関するリーク 〜その6〜 #10CANBERRA93 #cablegate #wikileaks #wl_jp

Gått nytt år!
あけましておめでとうございます。

年が明けて日本関連の公電がアップされました。

捕鯨関連の公電5件です。
3件は東京発、1件はワシントン発、そしてほとんどの大手メディアが見落としたと思われるキャンベラ発の1件。
キャンベラからの公電は、以前にもご紹介したTokyo Digital Journalismで指摘がありました↓

The fifth leak on whaling

東京発の公電の大まかな内容については大手メディアも報道しており(例えばWSJはまとまってたし、シーシェパードからコメントも取っている良記事)、またウィキリークス・ウォッチ・ジャパンでも公電冒頭の要約部分が邦訳されているので、そちらを参照してください。

こちらでは、キャンベラ発の10CANBERRA93の冒頭要約部分と日本に言及のあるパラグラフ2と3の一部を訳しました。

***
作成日:2010-02-05
機密度:CONFIDENTIAL//NOFORN

1.(C/NF)要約:ピーター·ギャレット環境·遺産·芸術大臣は、2月4日、コーラルトライアングル・イニシアティブ(CTI)と南極地方の保全·軍事兵站、そしてBleich大使との現在の捕鯨関連交渉において、アメリカとの協力関係強化を話題にした。ギャレットは、オーストラリアが捕鯨に関する現在[提示されている]の協定を受け入れることはできないだろう、と考えている。また、アメリカとオーストラリアは、CTI最重要援助国として、CTIの下で良い結果を出す努力をもっとしなければならない、ともギャレットは感じている。ギャレットは、オーストラリアから南極への飛行便の開始を強調し、S氏か議会議員を入れての[南極]訪問に関心を示した。彼はまた、国際生物多様性年におけるアメリカから出てきているイニシアティブに関するさらなる議論にも関心を示した。

2.(C/NF)ギャレットはBleich大使に、捕鯨に関する米豪間の「ありのままの[robust]」やり取りに感謝しており、彼も率直に話せる気分になる、と語った。ギャレットの考えでは、国際捕鯨委員会(IWC)と関連団体で交渉されている現在の協定は、最終的にはオーストラリア政府に受け入れられることはないだろう言った。いくつかの領域で協定は足りないところがあるからだ。ギャレットは交渉過程はほぼ停止しており、「本当の」提案は何も上がっていない、と言った。オーストラリア議会で話し合われている法案(今年の捕鯨シーズンに向けて日本が計画している「スパイ飛行」の役割を吟味するよう、2月4日緑の党[Green Party]が提案した)は、オーストラリアでの反捕鯨感情を強め、政府が現在の提案を受け入れるのは難しくなるだろう、とギャレットは言った。彼はまたこうも言った、2月22日のIWCの小作業部会ブリーフィング[説明会]はNGOや国際社会に対し議論の状況への注意を換気することになるだろうが、これは交渉上、オーストラリアの政策にとって重要だろう、と。

3.(C/NF)[前略]…[外務貿易省(DFAT)大臣の]Wattはさらに言った。現在の評価として、日本の岡田外務大臣の訪問日程は2月22日のNGOへの説明会に近過ぎるので、日本政府と込み入った話をする機会は得られないだろう、と。
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「スパイ飛行」とは、日本がオーストラリアの飛行機をチャーターして反捕鯨団体を監視することです。
この事実が発覚して、スパイ飛行を禁止する新たな法律の提案が出されたそう。

WSJでも取り上げています(英語)。
WikiLeaks Japan: Japanese ‘Spy Flights’ Pressure Whaling Deals 

[追記]
その記事の日本語訳も出ました!
日本の反捕鯨船偵察飛行で対日感情悪化-ウィキリークス