2011年2月3日

ウィキリークスを平和賞に推薦したのは誰? #wl_jp


ちょっと嬉しいニュースです。
ノルウェーの国会議員が2日、米外交公電などを公表している内部告発サイト「ウィキリークス」を今年のノーベル平和賞候補に推薦した。(中略)ウィキリークスを推薦したのは、ノルウェーの連立与党の一つ、左派社会党のスノーレ・バーレン議員(26)。同議員は自身のブログで「(同サイトは)汚職や戦争犯罪などを公表することで、人権や自由を求める闘いに貢献している」と推薦理由を説明した。

お若いですね。Wikipedia情報で恐縮ですが、この方、ピアニストで歌手でもあるそうです。しかも、19歳で市議会議員になってる!(北欧の選挙権&被選挙権は18歳から)

彼の主張は、本人のブログで短くまとめられていました↓
Why I have nominated Wikileaks for the Nobel Peace Prize 
(Snorre Valen)

以下その翻訳です。

なぜ私はウィキリークスをノーベル平和賞に推薦するのか

言論を発する人があなたと同じ意見を持っているとき、言論の自由を支持することは常に簡単です。これは、政府が失敗しがちな自由主義と民主主義というものにおける「試金石」なのです。例えば、西側諸国は「友好的な気質」を持った抑圧的な政権を容認する長い歴史を持っています。インターネット企業は検索エンジンを検閲して、中国を支援しています。そして、多くの国々が「メッセンジャーを撃とう」とすることで、公共の利益となる資料を公開しているウィキリークスの明白な権利に対向しています。
政府によって機密とされる資料を公開することは、新聞やメディアが何十年と実践してきた明らかに正当な行為です。こうしたやり方で、世の中の人々は政府が説明責任を負わなければならないような権力の濫用を認識してきたわけです。インターネットでこのことは変わらない ー むしろ、インターネットに接続しているヴァーチャルな個人誰もが貢献できるという意味では、ネットによって情報がより手に入れやすく、広めやすくなり、より民主的になってきます。
それにもかかわらず、多くの人がウィキリークスのような組織が出てくると、情報の自由という地図を描き直そうとします。通常は言論の自由を守っているような政治権力や政治機関が、突然、ウィキリークスが示す危険、安全保障への脅威を、そう、「テロ」という言い方をしてまで警告し出すのです。そうすることで、彼らは民主主義の価値観と人権を守ることに失敗しています。実際、彼らは逆のことに貢献してしまっているのです。どんな犯罪が世の中に知られてはいけないかなんていうことを規制するのは政治家の特権ではないし、そうであってはいけない。規制がなかったから、メディアを介してそうした犯罪が知らされるようになってきた歴史があるわけですし。
劉暁波は、中国における人権、民主主義、言論の自由のために闘い、昨年ノーベル平和賞を受賞しました。同様に、ウィキリークスは腐敗や戦争犯罪、拷問(その他多くのこと)を公開 ーー 時にはノルウェーの仲間も ーー することで、世界的にとても価値あるとされることのための闘いに貢献してきました。最も新しいところで言えば、チュニジアの大統領一家が経済をどう取り決めてきたかを明らかにすることで、ウィキリークスは24年間も続いてきた独裁体制を停止することに小さな貢献を果たした。
そういった情報を公開する権利を禁止したり反対することは犯罪です。いくつかの(あるいはすべて)の公開されている資料の中身について私たちがどう考えるかということに関係なく、その権利は守られるべきものなのです。ウィキリークスをノーベル平和賞に推薦することを私は誇りに思います。
スノーレ・ヴァーレン、国会議員/国会議事堂

***
去年、劉暁波さんの受賞の際、アメリカは中国の弾圧を批判する一方で、同時 にウィキリークスの活動も妨害しており、そのダブル・スタンダードっぷりに非難の声もありました。もし、本当にウィキリークスが受賞するようなことになっ たらアメリカはどうするのでしょう?各国にボイコットを呼びかけるのでしょうか。そしたら日本はどうするのでしょう?さてさて、どうなることやら。

ヴァ─レン氏

日本に関するリーク 〜その8〜 #wl_jp

一昨日、東京発の公電が2つありました!
1つは核拡散や他国との関係についてです。重要そうなのですが、かなり長めで「ううっ」っとなっていたところ、ウィキリークス・ウォッチ・ジャパンで抄訳がすでに掲載されていました(いつも早い!)。

もう1つはすごく短いのですが、Australia Groupのある活動に参加することに日本はOKだという内容。

#09TOKYO1598

(S)在東京大使館は2009年2月9日、永井克郎外務省総合外交政策局国際テロ対策協力室長とタニグチ・サトシ軍縮不拡散・科学部生物・化学兵器禁止条約室企画官に、件の別公電を渡した。彼らはオーストラリア・グループ情報交換総会のことは承知しており、日本は参加するものと考えていると言った。

Australia Groupて何ですかと、思ったら、かなり沢山の関連公電を目にしました(中身は未読)。Wikipediaによると、数ヶ国で形成される非公式な団体で、1985年に設立されたそうです。 目的は化学・生物兵器が拡散しないよう、コントロールが必要な輸出業者を洗い出すこと。毎年パリで会議が開かれており、この公電が書かれた2009年は9月に会議があったそうです。題目は「エンド・ユーズ[注:最終的な買い手のことと思われる]の管理実施に関する最良手順のガイドライン(Best Practice Guidelines for Implementing End-Use Controls)」 ←これはベルリン発の公電(#09BERLIN992)にありました。

そして、2008年の会議の模様を詳述してある公電(#08PARIS750)が、テレグラフ紙に掲載されていました。
AUSTRALIA GROUP: PLENARY MEETING, PARIS, APRIL 14-18, 2008

長すぎて、きちんと読めてないのですが、オリゴヌオコレチドの扱いについてだとか合成生物学(synthetic biology)の技術をどう管理するかとかが議論されているようです。私には何のことやらさっぱり…化学の勉強をしておけば良かった。

ロシアの輸出における不透明さが非難されていたり、総会前後で二国間取引が行われていたり、といったことも述べられていました。

以下、日本に言及がある部分の抄訳。

日本は、ガイドライン['Guidelines For Screening Suspicious Orders' ]はスクリーニングの実施に際し各国の裁量権を最大限まで認めるようにするべきだと提案した。

米国、クロアチア、EU議会、ドイツ、日本、オーストラリアは非参加国に対するアウトリーチ活動[注:組織外へ影響力を高める活動と思われる]について報告した。

日本は、経済産業省によって管理されている内部コンプライアンス・プログラムを概説したプレゼンテーションを行った。産業界へのアウトリーチは、産業界において輸出管理の重要性に対する意識を高め、輸出法や輸出規制を周知させた。これによって、輸出管理法に該当する商品の80%が、経済産業省に登録されていて、積極的に内部コンプライアンス・プログラムを使用している企業によって輸出された、と日本は報告した。また日本は、無形技術移転の機密技術のコントロールにおける進捗状況を説明した。経済産業省は、研究機関、大学、民間企業へのアウトリーチ・プログラムを実施するための計画を立てた。経済産業省は、これらの組織において技術の管理や機密度に対する意識が欠如しているという事実に直面しており、輸出法及び規制を説明し、学術機関や民間企業が日本の国家保障に責任を負っているということを強調するために、同省は教育や訓練を行っている。

外務省のHPにも説明があったので秘密組織とかではないですよ→オーストラリア・グループ(AG:Australia Group)の概要

でも何で「非公式(informal)」組織が実質的な輸出のコントロールができるのか。その法的な正統性はどうなのか、気になります。(もっとも、この公電によれば、日本は同組織の決定が法的拘束力を持たないように、と主張しているようだけど。)

あと、Aftenpostenからの公電で言及があったウラン精鉱を輸出しているとかいう疑惑の会社を外務省などがチェックする、というのは、どうなったんだろう。おそらく、その会社を監視するのも、この オーストラリア・グループの活動の一環ということなのかもしれません。

2011年2月2日

アサンジのお母さん 〜60 minutesより〜 #wl_jp


日曜日にCBS News60 minutesというインタビュー番組にジュリアン・アサンジが出演しました。
この番組に触れたニュースもあったので、ご存知だった方も多いと思います。

報道で話題になっていたのは「ストックされている情報は10万人が鍵のかかった状態で持っている。もしウィキリークスがいかなる手段を用いても情報を公開できない事態になった場合は、鍵を10万人に送信して情報が公開される仕組みになっている。」という部分でした。
組織がなくなっても、人々の意志が情報公開を継いでくれる、というわけですね。

ただ、このことは割と前にも言っていたので、私が驚いたのは別のことでした。

それはアサンジ氏のお母さんのことです。
活動家だったらしいということは聞いたことがあったのですが、まさに「この子供にしてこの母あり」というエピソードが語られていました。

彼女は活動家で、英国主導のオーストラリア奥地で行われた核実験に関する情報を集めて、科学者らを手伝っていた。ある晩、ジュリアンが母と2人でいたら当局の人間に尋問された。

アサンジ:「ちょっと奥さん、夜中の2時に子供と一緒に外出してるなんて…。母親として、どうなんですかね。政治活動から外れといた方がいいんじゃないですか。」と。そして母は、実際その後10年間、政治活動はしなかった。僕に何も起きないようにとね。僕の人生で体験した最初の「権力と機密の濫用」です。

核実験のことはもう探るな、とお母さんは子供を盾に脅されたわけです。しかも子供の目の前で。
他に印象的だった内容は以下の通りです。

ウィキリークス自身の秘密主義が批判されているというコメントに対し、

「私たちが望んでいるのは政府の透明性であって、[一般の]人々の透明性ではない。」という回答。

個人情報はネットなどで漏洩しまくる一方、政府や企業の情報公開が進んでいない/後退していることを簡潔に批判しているなあ、と関心。

「機密が要らないと言っているわけではありません。そうではなく、国家省庁の内部の人間が、腐敗や濫用があると認めた時に、内部にも外部にもその事態についての説明責任を果たせるような仕組みがない場合、その情報は公開されるべきだということです。私たちはそのパイプ役なのです。」

活動のイデオロギー(共産主義とかなの?何なの?という疑問)に関して、

「私たちは自由報道活動家(free press activist)です。鯨を守れとかそういうことではなく。捕鯨支持なのか、反対なのか、それを判断するための情報を提供するということが要なのです。なぜか。公正な市民社会をつくるには生の判断材料が必要だからです。」

全体的にとても良いインタビューだったと思います。インタビュアーのSteve Kroftは、インタビュー後には「ウィキリークスはやっぱ報道機関だな。」と考えを改めたそうです。
すごくいろんなこと(ウィキリークスに直接、もしくは緩やかに関連したこと)が進行しています。公電も出続けています。
正しい情報はマシな世の中を作るきっかけになると、改めて感じさせる出来事が多くなるかも。

[追記]
よく考えたら、アサンジのお母さんもアサンジだった…。きゃー。
ジュリアンのお母さん、が正解。