日本でも記事が出た、米地方裁判所によるツイッターへの個人情報開示請求。
ウィキ側の情報提出を要求か ツイッターに米捜査当局(共同)
日本語では小林恭子さんの英国メディア·ウォッチでもっと読めます。
米司法省が、ツイッターに対し、アサンジやアイスランド議員の個人情報開示を要求
ニュースの出所はアイスランド議員のブリギッタ・ヨンスドティルの
ツイート。
(彼女は
SVTのドキュメンタリー『WikiRebels』にも出てました。)
※@nofrillsさんのまとめ(Togetter)→
米司法省Twitterにユーザー情報開示を請求
そして
Salon紙が裁判所命令文書を独占入手↓
DOJ subpoenas Twitter records of several WikiLeaks volunteers
A copy of the Order served on Twitter, obtained exclusively by Salon
(Twitterに出された命令のコピーはSalonが独占入手した。)
この文章の後にその
PDFへのリンクがありました。
一次資料が大事と思い、そちらを翻訳しました。議論の参考になれば幸いです。
法律文書は原文も分かりにくいので、訳文は分かり易さを重視して訳しました。
(なお、こちらは法律の専門家ではないので、もし間違いなどあったらご指摘頂けると助かります。迷った箇所などは[]で原文、又は説明を挿入しています。)
***
東ヴァージニア地区 合衆国地方裁判所
アレキサンドリア管区
MISC. NO.[miscalleneous number]10GJ3793
秘匿条件つきで申請[Filed Under Seal]
命令
今案件は合衆国法典
第18編2703条[政府によるアクセスの要件]の2703条(d)に従って当裁判所が処理することになった。2703条d項は、(電子コミュニケーション·サービスや遠隔計算システムを提供しており、カリフォルニア、サンフランシスコにある)Twitter,Inc.に対し、特定の記録やその他の情報(添付Aで明示)を開示するよう請求するものである。請求者は特定の明確な事実を提示しており、それによって求められている記録や情報は進行中の犯罪捜査に関連し、重要であると信じるに足る合理的な根拠を示した、と当裁判所は決定を下した。
求められている情報は進行中の犯罪捜査に関連し、重要であると思われ、この捜査や請求や命令に関わる誰かに当命令について事前に通知することは、捜査に深刻なダメージを与えることになると思われる。
合衆国法典第18編2703条の2703条(d)に従って、Twitter,Inc.は当命令の日付から3日以内に、アメリカ合衆国に添付Aで明示された記録やその他の情報を引き渡すことが命じられた。
さらに、裁判所書記官は連邦検事事務局にこの請求と当命令の複写3部を提出することも命じられた。
さらに、請求と当命令は当裁判所が命じない限り公表不可[sealed]とし、
当裁判所が許可しない限り、Twitterは、登録加入者又はいかなる人物に対しても、当裁判所の請求と命令が存在すること、及び捜査が存在することを明かしてはならない。
アメリカ合衆国下級判事 Theresa Buchanan
2010/12/14
添付A
入手可能であれば、以下の情報を提出すること。CD-ROM、電子メディア、Eメール(tracy.mccormick@usdoj.gov)上の電子データが好ましいが、そうでなければ703-299-3981へのファックスで。
A.次の顧客、もしくは登録加入者(WikiLeaksに登録されている、もしくは関係のあるアカウント)のアカウント情報;2009年11月1日から現在までの期間における rop_g; birgittaj; Julian Assange; Bradley Manning; Rop Gongrijp; Birgitta Jonsdottir
1.登録加入者の名前、ユーザーネーム、仮名[screen name]、またはその他の人物証明
2.連絡先住所、現住所、会社住所、Eメール·アドレス及びその他連絡先情報
3.接続記録、セッションの時間及び持続時間の記録;
4.サービス[利用時間]の長さ(開始日時を含む)、使用されたサービスのタイプ
5.電話番号、又はその他の登録加入者が特定できる番号(一時的にアサインされたネットワーク·アドレスも含む);及び
6.そうしたサービスに対する支払い方法と出所(クレジット·カード番号や銀行口座番号を含む)と請求書記録
B.A部にあるアカウントと時期に関するすべての記録と情報
1.上記当該アカウントへ、又はそれらのアカウントからのあらゆる接続におけるユーザーの活動記録(日時、[時間の]長さ、接続方法、転送データの容量、ユーザー·ネーム、[データ等の]送信元・宛先のIPアドレス含む);
2.コンテンツ外の情報で、上記当該アカウントによって、又はそれらのアカウントのために蓄積[記憶/stored]された通信やファイルの内容に関連・付随するもの(例えば、送信元・宛先のメールアドレスやIPアドレス)
3.上記当該アカウントに関連するメモや通信記録。
***
今回の件は、WikiLeaksだけでなく、ネット上での個人情報保護が以下に脆弱なものかを明らかにしたと思います。
Facebookのプライバシー侵害のことは
年末にも書きましたが、それはFacebookだけでなくTwitter(利用規約の「ユーザーの権利」を是非一読してみてください)、Googleなども、ユーザーの情報を勝手にどうとでも使えます。
(例えば最近のGoogleに関するニュース→
Google violates laws: police ストリート·ビューの写真を取る際に、通信データも採集&保存していた)
そして、個人情報収集を秘密裏に行えるような法整備がなされていることも重要です。
今回は使われなかったけれど、例えば
National Security Letter (Wikipedia)
これも個人情報を提出させるだけでなく、命令が出たことも言ってはいけないという代物です。
このLetterは2003〜2006年の
3年間だけでに19万通以上発行されているとのこと。
EPIC(Electronic Privacy Information Center)の
記事も参考になると思います。
ただ。今回の裁判所決定を議員に事前に通達できるようTwitterが努力したことは評価するべきでしょう。
情報収集の対象にもなってるRop Goggrijpのブログ
エントリのsecond PDFは"order to unseal the order"(緘口令解除命令)で、Twitterが地裁に抗議しなかったらこのことは明るみに出ることすらなかったのが分かります。
(ちなみにRop Gonggrijpは、1993年にオランダで
XS4ALL ("Access for all")という言論の自由が確保されたプロバイダー(Free Speech ISP)を創設したうちの1人。時を同じくしてジュリアン·アサンジもオーストラリア版Free Speech ISPである
Suburbiaをスタートさせました。)
大企業と国家は市民から不可視になり、市民が国家及び大企業から丸見えになる。
その流れの中で、今回の事件が「発覚した」ことはとても重要だと思います。
[追記]
nofrillsさんからツイート(
こちらと
こちら)をもらい、「添付」のB2部分を修正しました!ありがとうございます!B2は、この命令文がフォロワーにも影響があるという根拠となっている重要な部分です。他の方でも、修正すべき箇所を教えていただけると助かります★
[追記2]
Fast companyの
記事を元にした日本語エントリ(Long Tail World)で緘口令解除令の経緯が書かれています!
政府からの召喚状、ツイッターがとった対抗策:Twitter's Move to Overturn WikiLeaks Subpoena Gag Order
なぜTwitterは緘口令に対抗できたか、ということですが、
グーグルからツイッターに引き抜かれれた法務顧問Alexander Macgillivray(...)氏の母校はインターネット法の頭脳を輩出する名門ハーバード大学バークマンセンターで、創設者は 他ならぬペンタゴン白書のリーカー、ダニエル・エルズバーグを擁護したチャールズ・ネッソン教授。(同エントリより)
さらに同記事では、
電子フロンティア財団(
Electronic Frontier Foundation/EFF)と法律スクールのコラボ企画
Chilling Effects clearinghouseを牽引している
Wendy Seltzerとの関係にも触れています。
EFFは当ブログでもたまに
引用していますが、ネット上の言論の自由を技術面と法律面から守ろうとするアメリカのNPOです。
[追記3]
関連記事が吉田秀さんのブログ「
気まぐれ翻訳帖」で翻訳されています!
→
気まぐれ翻訳帖・ツイッターの頑張り