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2010年12月31日

インターネット原理主義 〜年末の長いつぶやき〜

TIMEの今年の人(Person of the year)は、Facebook創業者、マーク・ザッカーバーグでした(読者投票は2万票にも届かず10位)。
一方、読者投票で38万票以上を取り1位となったウィキリークスの編集長、ジュリアン・アサンジは選ばれませんでした。
票差は実に36万以上…。

その件で秀逸なツイート:

"Share government's secrets, go to jail. Share normal people's secrets, TIME man of the year!"
(政府の秘密をシェアすれば投獄。一般人の秘密をシェアすればTIMEの『今年の人』!)
anasqtiesh via @nofrills

Facebookの人権侵害
Facebookの情報が企業や政府にダダ漏れだということは前から割と問題になっています。
(詳しくはCriticism of Facebook @Wikipedia)

例えば、友人がアメリカに行った時の話。
友人は旅行がてら小遣い稼ぎもしようと思ってたらしく、そんなことをFacebookに書いたらしい。
アメリカに着くと、入国審査で「本当に観光目的なのか」をしつこく聞かれる。
友人がそうだと言うと、なんとプリント・アウトされた友人のFacebookのページを目の前に置かれ「じゃあ、これはどういうことだ!」と問い詰められた。
結局、友人は送還された。。

この話を聞いた時、驚くよりも「やっぱりそうなってきたのか…」という諦め、それから恐怖を感じました。

警察や諜報機関に重宝される(ギャグじゃないよ…)だけでなく、企業もまたfacebookの恩恵を受けています。勝手に自分の写真がどこかの広告に使われていたり、プライバシー保護の設定が頻繁に変わったり。(どんだけ変わってるかチェック!)

ちなみにElectronic Frontier FoundationがFacebookのプライバシー・ポリシーがどれだけ悪化しているかを検証しています。→Facebook's Eroding Privacy Policy: A Timeline


現在の利用規約の2.1

Facebookで、またはFacebookに関連して投稿したIPコンテンツを使用する、非限定的、譲渡可能、サブライセンス可能、使用料なしの、全世 界を対象としたライセンス(以下「IPライセンス」)を弊社に付与します。このIPライセンスは、コンテンツが他の人と共有され、その人がそのコンテンツ を削除していない場合を除き、ユーザーがIPコンテンツまたはアカウントを削除したときに失効します
写真もプロフィールも企業や警察に配り放題。
Facebookで誰とも共有されない写真とかないって…。アカウント削除も難しいし。
そもそも企業への情報流出はミスでも何でもなく、ビジネス・モデルに織り込み済みの現象なのです。

さらに4.登録とアカウントのセキュリティには
Facebookでは、ユーザーの皆様に実名および実在の情報を提供していただいています。
とな。つまり、ニックネームとかはそもそもありえない。
4.3
アカウントが弊社によって停止された場合、弊社の許可なく新たなアカウントを作成することはできません。
一度消したら、2度と使えない。
4.7
ユーザーは連絡先情報を正確かつ最新の状態に保つものとします。

こういったことでパーソン・オブ・ザ・イヤーってことなのでしょうか。

(ちなみにmixiの利用規約は一応まともで、「ユーザーご本人の同意を得ずに第三者に提供することは原則としておこないません」となっています。ただし、ゲームなどのアプリケーションは第三者がやっているため、そっちから漏れることもあります。ってか実際ありましたね。→ミクシィ、4200人の情報が3日間「露出」

ネットの魅力はDistributed(分散型)であること
こうした問題の原因のひとつ、それは、Facebookが中心型だということ。
一ヶ所に情報が蓄積され、その莫大な情報によってFacebookが権力と化す。まさに中央集権!

インターネットの本来すごいトコって、双方向どころか複数方向でのやり取りが可能だということだと思います。
BitTorrent(日本ならWinnyも)に代表されるPeer to Peer(P2P)はその最たる象徴。
中心がなくても成立する構造です(特にピュアP2P)。


そりゃ、アナーキーです。

んでもって、イデオロギーとしてのアナーキーでなく、そこにもうシステムとしてちゃっかりしっかり存在し機能しているアナーキー。
さらにはオープン・ソースコピーレフトCreative commonswikiなどなど、
知的財産所有権にカウンターパンチ!
それによって下手したら何千年続いてきた私的所有の概念にローキック!
(ウィキリークス、東京発の公電2717点にOIIP[International Information Programs/国際情報プログラム]のタグがついているのもうむうむと納得してしまう。)

あと、みんなで作ったりやり取りした方が早いし効率的だし面白いじゃん!という至極当たり前なコトがAndroidとかLinuxなどなどの発展を見ると本当に実感できます。受動的なユーザーにでさえ。

クローズド・ソースを死守しようとするMicroSoftやAppleは企業に嘘ついたり脅したりまでしてWindowsやMacを使わせようとしてます。
あの老舗リークス、もといCryptomは、MicroSoftが個人情報を当局に売り渡すだけでなく、読み方ガイドまで作ってあげていたことを暴露しています。
(暴露→サイト閉鎖→利用者怒る→プロバイダー謝る、の過程も含めてちゃっかり公開されてます)

一方、Linuxの生みの親、リーナス・トーバルズは他のOSを敵視するなんて的外れなことはせず、「OS縁の下の力持ち」論を語っています
リーナス・トーバルズ氏「OSは誰からも見えない存在になるべき」

とにもかくにも、理念と実践が一致しちゃう、それがインターネット。(だって実践が先立ってるから)

今さら、何をそんなことと思う人も多いかもしれないけど…。
ちゃんと考えるようになったのはここ1、2年なんだもので…。

Youtube(またはニコニコ動画)とFacebook(またはmixi)を使ってるだけじゃネットの魅力の半分も分かりません。
なぜならそれらは中心型だから。いやはや、勿体ない。

そんな中、SNSも中心型をやめて分散・水平ネットワーク型にしようぜぃという動きが当然ながら出てきました。いわゆるDistributed social network
いろんなプロジェクトがある中、ついに本格的に始動したのがDiaspora
私はまだ使ってないから、どんな感じかは何とも言えないけど、分散型ソーシャル・ネットワークっていうアイディアには大賛成。

ちょっとでも意識的にオープン・ソースのものを選ぶだけでも、もうそれだけで人はネット活動家を自称していいと思います。
あと、crypto-anarchismによってちょっとシャイで臆病な人も、情報発信するネット活動家にもなれます。
(Tassaもチキンです。犬ですが。)

OSはLinuxを使い、ブラウザはFireFox、SNSはDiaspora(例えばですよ)。
そうしたらもう立派なインターネット原理主義者(かもしれない)。。

2011年はインターネット原理主義がはびこりますように。
よいお年を!




※ネット活動家の読み物
Christopher Kullenberg 2010. Det nätpolitiska manifestet[ネット・ポリティクス宣言]. Ink bokförlag.
テッサ・モーリス=スズキ (2004) 「知の囲い込み」(『自由を耐え忍ぶ』第4章)岩波書店

2010年12月24日

知的所有権を克服できるか #cablegate #wl_jp


まず、嬉しいお知らせ。
ついに国連が、米州人権委員会と一緒にウィキリークスに関する共同声明を発表しました。
同サイトのアメリカの、私企業に働きかけて同サイトをシャットダウンするような強引なやり方をはっきり非難し、情報アクセス権など言論の自由を守れとしっかりくっきり言明しています。邦訳はこちら

で、本題。
アメリカがスウェーデンの知的所有権・著作権強化に影響を与えようとしたことが分かる公電を以前のエントリで紹介しました。

その公電自体はウィキリークスには、まだアップされていなく、SVTで伝えられただけでした。とあるブログで原文の一部を紹介していたのですが、1219日に、海賊党の党首、Rick Falkvingeのブログで全文が公開されました。

前回のエントリを上書き(全訳アップ)したので興味のある方はご覧になって下さい。

611が、アメリカがスウェーデンに課した6箇条の内容となっており、前回はその部分が欠けていました。アメリカが、インターネットの規制に関してどのような具体的な指示を出したかが書かれています。

そして興味深いのは、1415段落。特許医薬品の値下げについてアメリカが好ましく思っていないことが書かれています。端的に言えば、アメリカの製薬会社が稼げるようにしたいから。一見、インターネットと何の関係もなさそうなこのテーマも、知的所有権という大きなテーマでつながっています。

知的所有権や著作権は私的所有の極致です。情報や音楽といった無形のものまで線引きされるわけですから。でもネットという場は囲い込み(エンクロージャー)には向かない。(海賊党のTrobergとアサンジの写真にはCopy-rightの代わりに、Creative commonsのマークが燦然と輝いている。)だから、私的所有の矛盾が一番現れる場所なのかなと。
(医療知識も共有され、公平に提供されるべきなのですが、いったん市場化してしまうと難しい。ヒポクラテスの誓いなんて簡単に破られている現実…)

そのネットを無理やり私的所有の枠に当てはめようと、アメリカはずっと「努力」してきました。ACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)含め、言論の自由を追い詰める政策が世界規模でとられてきました。青少年健全育成条例もその流れのひとつ。子どもが重要な鍵を握るのは、件の公電の11を見れば一目瞭然。知的所有権の普及教育がミッションの1つとなっています。(こういった議論に関する素敵なエントリ→青少年条例案・GFWほか各人権侵害政策の現状

件の公電(20093月)には、知的所有権(IPR)が専門の警察官はスウェーデンにはいないとなっています。しかし、その「努力」のかいあって、20096月には15人のファイル共有問題専門の警察官が誕生しています。
参照記事Fler poliser satts in mot fildelare(Svenska Dagbladet)
(ちなみに記事によると、この15人はそれぞれ違う部署から引っ張られてきたそうです。その部署の穴はどうするんだ…と、まず思ってしまう。)

そういった文脈で考えても、冒頭で触れた共同声明の意義は大きいです。とても。
とりわけ、4と5はプロバイダーなどの私企業の恣意的な決定でユーザーの権利を侵すことはできないとはっきり述べている。

この路線が各国で受け入れられれば、今回のウィキリークス騒動の最大の成果となるかもしれません。そしてその成果が、もう出始めているかもと思わせるニュース↓

P2Pとかその辺のお話)

深刻なリークもあり、やるせない気持ちにもなる中で、180°とはいかなくても、30°くらいは世界はひっくり返るかもと思わせてくれた共同声明でした。