予告しておきながら伸び伸びになってしまったアメリカのインターネット支配についてと、それに対するカウンター・ムーブメントのお話です。
ルート・サーバはアメリカがほぼ独占している
アメリカのインターネットにおいて覇権を握っているといったようなことを、ちっらと前に書きました。
その理由のひとつは
ルートサーバにあります。
ルートサーバとはドメイン名空間の頂点にある情報を保持するサーバだそうです。
(ウィキペディアより。なにせTassaはPC素人。否、素犬。)
世界に13あるうち10のルート・サーバをアメリカの企業や軍が所有しています。
ドメイン・ネーム・が始まった当初は、ストックホルム、アムステルダム、そして東京のルート・サーバ3つだけでした。
(ちなみにストックホルムのルート・サーバは大学が実験的に始めたもの。東京のも
大学間のプロジェクトによるもの。)
一部の人には常識なのかもしれませんが、私は知らなかった。
EveryDNS.netはwikileaks.orgのドメインを潰したことは記憶に新しいです。
しかし、たとえこの会社のような個々のDNSサービス会社がドメイン潰しを拒否したとしても、最終手段としてルート・サーバから働きかけることができるそうです。
つまり、どんなに末端のDNSサーバ会社が頑張っても、その気になればルート・サーバから切断してしまえる。
2008年、ウィキリークスがスイス銀行に関するリークをした時、カリフォルニアの裁判所である決定がなされました。
以下、BBCの記事「
Whistle-blower site taken offline」より引用&大意訳。
***
[…]同サイトのドメイン名を管理しているDynadot社は、サーバからウィキリークスのすべての
トレース(形跡)を抹消することを裁判所が決定し、メイン・サイトは切断された。
また、当裁判所で新たな決定が下されるまでは、wikileaks.orgのサイトや他のサイト及びサーバにアクセスできるようなドメイン名を阻止するよう、裁判所はDynadot社に指示した。
他の決定は、現在のドメイン名が別のドメインとして登録されないようドメイン名をロックすべしという決定もなされている。
ウィキリークスは決定は憲法違反であり、サイトは強制的に検閲されている、と主張した。
[以下省略]
[…]the main site was taken offline after the court ordered that Dynadot, which controls the site's domain name, should remove all traces of wikileaks from its servers.
The court also ordered that Dynadot should "prevent the domain name from resolving to the wikileaks.org website or any other website or server other than a blank park page, until further order of this Court."
Other orders included that the domain name be locked "to prevent transfer of the domain name to a different domain registrar" to prevent changes being made to the site.
Wikileaks claimed that the order was "unconstitutional" and said that the site had been "forcibly censored".
***
ドメイン名を他のDNSサービス会社に移すのを阻止することはDynadot社ひとつではできません。考えられる方法はいくつかありますが、たとえばルート・サーバからドメイン名を潰すことも可能です。
(と、知り合い談。詳しい人、教えて下さい~。)
2008年のこの時は、ウィキリークスがドメインを喪失する前に、すでに情報が出回ってしまったために、サイトを潰しても情報を止めることはできませんでした。
[追記]
日本語で読める当時の記事がありました→
内部告発サイト『Wikileaks』が強制的に閉鎖――国外サーバーで対抗(ワイアード)
同じくミラーが増殖した今の状況では、ルート・サーバから切断しようとしても情報の削除はより困難になったと言えるでしょう。
ルート・サーバをアメリカがほぼ独占している状況を見ると、「硬直した資本主義は寡占へと向かう」のはインターネット界でも同様であることが分かります。
一方で、インターネットは自由に情報を共有しやすいインフラでもあり、多くのハッカーやPCオタクはそういった自由な気質を好むように思われます。
なので、一部の企業が制限できるような不自由なネット環境はイヤだ!とそれに対抗しようとする勢力もまたインターネットで生まれたわけです。
海賊党の登場
そういったグループのひとつが、
海賊党(Pirate Party)です。
スウェーデンの海賊党は
WikiLeaksとの公式協定も結んでいます。
(とりわけネットにおける)情報の民主化が喫緊の問題であり、それ以外のことには関わらないという政策理念を持っています。
でも、言論の自由があらゆる社会問題を論じることの根本にあり、インターネットが普及したことを考えれば、これは大げさでないと思います。
こちらのサイトで海賊党に関する記事の翻訳が沢山あります(このサイト、本当にすごいです)↓
P2Pとかその辺のお話
そんな海賊党がスウェ─デンで誕生したのは2006年。そして知名度を上げてきた2009年に欧州議会選挙がありました。若者を中心に多くの支持を集め、議席を獲得。
今年のスウェ─デン議会選挙
ところが2010年、スウェ─デン議会選挙のあった今年、海賊党はまったくと言っていいほど話題になりませんでした。
注目を集めたのは、
スウェ─デン民主党という反移民政策を訴えている政党。彼らの作った
選挙用コマーシャルは過激と話題になりました。チャンネル4ではCMに一部ぼかしでも入れないと流せないという事態に。とは言え、賛否両論ありながらも、しっかりその名を知らしめたスウェ─デン民主党。議会での議席を獲得するための必要最低得票率を満たし、20議席をスウェーデン議会に置くことになったのです。
そこで、私が思ったのは単純に、「他の少数派政党に対していくら何でも不公平なんじゃないか」ということ。ニュースで毎日これでもかというくらい「宣伝」してもらったわけですから。確かに海賊党が2009年のEU議会選挙で、同じようにメディアの注目を集めたのは間違いありません。なので、新しめの党が注目を集めるものだ、といえばそれまででしょう。
スウェ─デン民主党に対するメディア・スクラムの裏に何があったのかは分かりません。しかしながら、海賊党が注目を集めなかったのはあながち偶然ではない、ということが今回のリーク公電で明らかになったのです。
その公電について明日、詳しく書こうと思います。