2010年12月17日

スウェ─デン議会選挙がウィキリークスに与えた影響 #cablegate #09STOCKHOLM141


[追記]
とんでもない誤訳をしてました。公電の題名、AARGH! SWEDISH PIRATES SET SAIL FOR BRUSSELSのAARGHは海賊(党)の雄叫びで、これを書いた人間の悔恨の叫び(もぉぉぉぉ!)ではないです。訂正しました。 

[追記2]
 公電の特定タグは09STOCKHOLM141と判明。
また、海賊党の公式ホームページに、公電に関する英語の記事が載りました。

 
***

海賊党がアメリカにとって脅威だったのは間違いありません。
彼らは、まったく自由なインフラ作りを呼びかけたわけですから。

今回リークされた外交公電によって、アメリカの海賊党を潰したいという意図が白日の下さらされました。

海賊党に関する公電を紹介します、と言った翌日、偶然にもガーディアン紙で海賊党関連の公電が取り上げられました。
どんな内容の公電に関心があるかというのを読者に募集したところ、海賊党関連のものも多かったようです。(問い合わせたのはネット・ユーザーが多いから、ということかもしれませんが)
WikiLeaks cables: You ask, we search

ガーディアンで取り上げた公電は
「がおぉぉぉ!スウェーデンの海賊がブリュッセルに出航した(AARGH! SWEDISH PIRATES SET SAIL FOR BRUSSELS)」というタイトルのもの。

パイレート・ベイを閉鎖に追い込んだ政府決定が気にくわない若者が支持したという分析があり、

著作権や特許権関連の法律を変革し、盗聴法案に反対である海賊党は、選挙の勝ち組だと書かれています。(公電ではwiretapping lawと率直な表現が使われているのが面白いです。)

すでに記事の翻訳が!
→ 海賊党の成功、スウェーデン政府に対する若者の不信 (ウィキリークス・ウォッチ・ジャパン)



さて、実はもうひとつ海賊党関連の公電があるのですが、チェックしたら、実はこれ、まだウィキリークス本家に上がってないのです。
SVT(スウェーデン・テレビ)のニュース映像でのみ、テキストが見れたのですが14日に期限切れとなってしまいました。
この放送されたテキストをあるブロガーが転載し、それをTassaが訳したというわけです。

そのブログはこちら→ Krafsklotter

ウィキリークスにまだアップされていない公電ですが、

・SVTが放送したということ
・ガーディアンの関連記事
・公電が打たれた時期の政治状況

を考慮すれば、これは本物だと思います。
(SVTがウィキリークスに申し込んで、公電25万を取得し、独自取材で発見したということだと思います。)

ただ、本家にないものなので、アップされるまでは転載するかは個人の判断にお任せします!

また、件のブロガーは何かのソフトウェアを使って、テキストをコピーしたと見え、欠けや変な表記が混じっています。また、公電は完全なものではありません。

SVTがカラーにした部分を本翻訳文でもカラーにしています。

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要約。

スウェーデンが2009年の監視国(Watch List)という立場でなく、スペシャル301条を率先して進めていく立場を取り続けることを、ストックホルム大使館は推奨している。我々は、国際知的財産連盟(IIPA)と米国製薬工業協会(PhRMA)が異なる勧告を出していることを認識している。スウェーデン政府は、昨年我々と話し合ったスペシャル301条イニシアティブ行動計画の6項目のうち5項目を達成した。また、スウェーデンおけるインターネット上の海賊行為を是正強化するためにスウェーデン政府がやり遂げなければならない微妙な国内政治問題がある。大使館[訳注:原文ではpost]からの勧告は以上の2点に基づいている。スウェーデン政府は、善意を持って、非常に否定的なメディアの風潮と若者の間で盛り上がっている運動に取り組むこと。例えば、我々が特に注意したいリスクがある。それは、ファイル共有問題に関するメディアの否定的な見方が、2009年6月の欧州議会選挙で海賊党に有利に働くというリスクだ。

2.(SBU) この公電は、スペシャル301条2008年レビュー(B参照)の結果、我々がスウェーデン政府に提示したスペシャル301条イニシアティブ行動計画の達成率を再検討したものである。大使館【post】はスウェーデン政府内と非常に建設的に関係を築き、ス政府高官の重要人物とも通じており、良好な関係を持っている。昨年のレビュー後にあった行動により、法的枠組みを強化され、海賊行為に立ち向かうより良い法的手段もが整った。パイレート・ベイ公判はストックホルム地裁で現在審理中である。公判最終日は3月4日で、判決は3月25日あたりに出ると言えるだろう。

3.(SBU)[ストックホルム大使館]は、現時点でウォッチ・リストはスウェーデンに対し逆効果だと思っている。ウォッチ・リストに入ることに対する、政治的及びメディアの否定的な反応は考慮に入れなければならない。この件に関する主要責任者である法務大臣は、しかと覚悟しており、何が喫緊の問題かということも分かっている。ネット上の海賊行為を抑える適切な次の段階については、現在、企業・エネルギー・通信省と争議している。今や、知的財産権強化法[IPRED法のこと]の実施はついに4月1日施行されようとしており、 パイレート・ベイ訴訟の最初の地裁判決もすぐであるから、法務大臣の注意は他の重要問題に向けられている。とりわけISPの責任問題や追跡能力を上げるさらなる手段についてである。(法務大臣に牽引されている)ス政府は、この問題を推進するために繊細でバランスのとれた行動をとらなければならない。時期は、スウェーデンがEU議長国になる直前、オバマ政権の初期、欧州議会選挙の選挙活動が始まる頃だ。

要約終わり。


背景 ----------
4.(U) 国際知的財産連盟(IIPA)は、スペシャル301条年次報告をアメリカ合衆国通商代表部(USTR)に送った。報告では、ネット上で広がる海賊行為や、スウェーデンで問題になっている犯罪的著作権侵害を是正する効果的な法執行が難しいということが認められている。またIIPAは、スウェーデンが2009年、スペシャル301条にの監視国となるよう要請した。産業界からの要求があったにもかかわらず、スウェーデンは2008年には監視国と指定されなかった。むしろ、比較的最近になって徐々にスペシャル301条イニシアティブとして名前が上がるようになっていた。イニシアティブの一部として、大使館【post】はスペシャル301条行動計画をス政府に伝え、そこには米国政府が2008年中に達成を望む6項目も載っていた。



行動計画の進捗状況報告
5(U) 2008年スペシャル301条イニシアティブ行動計画には6つの特定領域における勧告が入っていた。ス政府は、程度は異なるが、このうち5つの領域で役割を果たした。6領域における進捗状況について次の6-11のパラグラフにある。
6(SBU)産業協議会/ISP[インターネット・サービス・プロバイダー]の責任:2008年の秋/冬に、ス政府は産業協議会を開いた。一連の協議会は、プロバイダーと著作権団体による自主的な産業協定について議論するという明確な目的があった。産業界関係者が伝えたところによると、プロバイダーは自主的に何か行動することは気が進まないようだ(プロバイダー側は[気が進まないのではなく]できないと言っている)。2008年秋の協議会第1ラウンドは何の成果もなく終わった。法務大臣は現在ス政府内で、第2ラウンドで承認が得られるよう動いている ーー つまり、自主的な協定ができない場合は立法化すると脅しをかけている。産業・エネルギー・コミュニケーション省大臣が率いる中央党にはある程度の抵抗があり、交渉はス政府高官レベルで行われている。

7(U)差止請求権:まったく成果がなかった1項目は STOCKHOLM 00000141 002 OF 003 行動計画第 2項、差止請求権である。スウェーデンの現行法の中に適当な手段があると、ス政府は主張しており、新法導入をするつもりはない。(それとは反対に、レンフォース[Cecilia Renfors*]委員会の勧告、つまりファイル共有問題について調査を委任された政府研究によって、産業界の主張は裏付けられたことに留意。ス政府はレンフォース勧告は実行されないということを明言している。留意点、以上。)

*Cecilia Renfors...スヴェア上訴審裁判所(高裁にあたる?)の裁判長。2007年に『ネット上の音楽と映画 ー 脅威、それとも可能性?』というレポートを発表している。

8(U)知的財産権強化[IPRED]法の実施:225日に法案は議会で承認され、新法は2009年4月1日から発効となる。微妙な政治的要因により、連合政府にとって法案をまとめる最終作業は非常にデリケートなものとなった。多くの議論や交渉が公で行われ、個々の議員には相当なプレッシャーがあった。ゆえに、法案可決はス政府の勝利であり、その勝利は表面上よりもずっと大きいものだ。もともとの法案と比較した場合、主な変更は、本法律は溯及効がないということ。つまり、IP番号から特定される個人が誰か、ということを提出するよう裁判所が指示を出せるのは、法律施行後の著作権侵害に限るということである。もうひとつの変更は、裁判所は比較評価基準[proportionality assessment]を作成するということ。つまり個人情報にアクセスするための著作権保有者のニーズと、IP番号をから特定される人物のプライバシー保護とを、はかりにかけるということ。法律が定めるところでは、一定規模の侵害でなければ、裁判所が[個人]情報を提出するような決定は出せない。 普通、そのような場合は、あるひとつの映画なり楽曲が繰り返しアップ・ロードされるような侵害が起こった時である。そういったことはたいてい、著作権保有者に深刻な損害をもたらすからである。著作権で保護されているものを相当な規模でダウン・ロードした場合も同じ決定がなされるだろう。侵害の規模がわずかで、部分的なダウンロードであるとすれば、裁判所の評価プライバシー保護が優先されるべきであり、個人情報は提出されるべきではない、というのが法律で定めてある。ス政府は、法律がどのように使われているかを監督、評価し、重大な著作権侵害が起こった場合、実際に使われることを保証するといった規定を法案は含んでいる。こうした監督行為は法律が施行されと同時にただちに開始される。

9.(U) 警察や検察にIP番号から個人を特定する権限を与えるのは、低級な(つまり懲役刑でなく罰金が求められるような)著作権犯罪に絡んでいるときである。法務大臣は法整備の変更を目標にしてきた。そうやって警察と検察がIP番号から個人を特定するための情報にアクセスできるようにするために。こういった種類の犯罪(懲役でなく罰金刑が課される)に対するスウェーデン語のよくある表現は、「低級な犯罪[crime of lower dignity]」である。現在、法を施行する役人たちがこうした情報を得ることができるのは、侵害が懲役刑に当たるようなときだけである。ス政府は法整備の変更に賛成し、このような変更を実現するのに必要な段階を提案するための研究の一部をなしている。提案された変更は最近ほかの研究と区分けされ、早くも2009年1月下旬にアスク法務大臣に報告された。法整備の経過は遅く、がっかりさせられもするが、ス政府はすでに法律強化に必要な変更については賛成している。


10.(SBU)警察と検察: 現在、
知的所有権と著作権問題に専門的に従事しているフルタイムの検察官が2人いる。警察はというと、訓練は受けてきたが、知的所有権と著作権問題のみに注意を向けることは許されていないと我々は理解している。彼らは、処理すべき優先事項がある地域で通常業務に戻っている。2人の検察はこのことが問題であると警告している ーー 捜査員の応援なしで、残務処理に追われている ーーということも我々は理解してきた。検察官らは知的所有権にとりわけ従事してきた捜査員の応援を頼んでいるが、今日、そのような捜査員はいない。スウェーデン警察庁長官がこの捜査員不足に対しどう対処しようとしているかを、法務大臣は長官に繰り返し尋ねてきた。ス政府はその必要性を分かってはいるものの、来年の予算案は、厳しい経済情勢のため、法案可決のための分はそれほど増えないであろう。この分野における追加予算が重要な影響をもたらすだろうということを強調するために、大使館[post]はス政府と産業界と一致協力できる。

11.(SBU) 公教育:2008年秋、ス政府は特に若者に向けた新しい情報教材を発行した。教材はスウェーデンの学校に広範に配布されるだろう。アスク法務大臣の職員は目下、閣僚が公の議論に入っていくことについての是非を検討している。知的財産権強化法とパイレート・ベイ訴訟に対しネガティブな(STOCKHOLM 00000141 003 OF 003 )注目が集まったことを考えれば、この決定はまったく目立っていない。ス政府は数年前-- leadingQticians [ママ(おそらく指導的立場の政治家)]が議論をしなかった時 --すでに絶好の機会を逃してしまったのではないかという危惧を抱いている。 現時点でデリケートな問題にどう取り組むか。

パイレート・ベイ ----------
12.(U)2006年5月31日にパイレート・ベイを強制捜索した後、ネット海賊行為の問題が激しくスウェーデンで議論された。報道では、当時、また現在も、権利保有者と米国政府による影響力に関して好ましくないとしている。パイレート・ベイ強制捜索は、ス政府が米国政府の圧力に屈したというように語られた。逆効果でないにしても、この微妙な状況によって、大使館が知的財産権問題における公的役割を果たすことは難しくなった。裏では、大使館はすべての利害関係者とうまくやっている。捜査の18ヶ月後、検察は、パイレート・ベイのビット・トレントのウェブページを管理したために、著作権侵害を助長したという理由で4人に対する起訴状を提出した。訴訟は現在トックホルム地裁で審理中であり、公判は3月4日に完了する予定だ。判決は3月25日頃と予想される。つまり、スペシャル301条のレビュー終了前だ。しかし、どのような結果になろうとも高裁に控訴という形をとるだろうと確信している。これは、最終的な評決が数年間は分からないままだということを意味する。

米国製薬工業協会(PhRMA)問題 --------------------------
13.(U)
米国製薬工業協会(PhRMA)も、スウェーデンをスペシャル301条の監視国に指定することを要請している。要請はス政府の製薬市場における規制緩和への決定と、再構築に投資するという目的でスウェーデン市場での特許医薬品の値下げ計画が伝えられたことに、要請は基づいている。値下げは、10%になると考えられている。

14(U)社会福祉省によると、ス政府は特許医薬品の値下げは計画していないが、[自由]価格システムに基づいた価格モデルを維持するつもりのようだ。中央政府機関である歯科・医薬品(TLV)医薬品値上げの原則を提案し、どのように製薬市場の収益性が算出され追跡調査されるかを提案するよう命じられた。TLVは今年41日、ス政府に提案の発表を行う。
15(U)3月2日の現時点で、ス政府が実際に10%の全般的な値下げすることが確認できるような決定や文書は何もない。ゆえに大使館としては、スウェーデン製薬業界の規制緩和を考慮して、同国がスペシャル301条のウォッチ・リスト(監視国)に載ることを勧告しない。しかしながら、4月1日のTLV報告書の結果として、特許医薬品の全般的な10%値下げが決定された場合、大使館はス政府に対し、再びこの問題についての高位高官レベルでの提唱を行うだろう。

***

この公電、何も知らないTassaにとって、翻訳するのは非常に難しかったのですが、かなり興味深いです。

補足すると、スペシャル301条はアメリカ合衆国の知的財産権に対する対外制裁に関する条項です。

知的財産権保護について問題のある国を、問題のある順に
「優先国」 (priority foreign country)
「優先監視国」 (priority watch list)
「監視国」 (watch list)
の3段階に指定。

海賊党などの台頭により、スウェーデンは監視国指定されそうになっていたというわけです。

この公電はガーディアンが公表した公電(09STOCKHOLM355)より前に打たれたと思われます。
「ああー、海賊党なんて変なの出てきちゃったよー。厄介だなあ。」と思ってたのが、この公電。
09STOCKHOLM355公電は、「うわ!欧州議会に海賊入ってきやがった!」と事態の「悪化」を嘆いています。

2010年のスウェーデン議会選挙前に、海賊党はウィキリークスと協定を結んでいます。
その意義について、「P2Pとかその辺のお話」さんの
スウェーデン海賊党、Wikileaksと手を結ぶ から引用↓

「Wikileaksにとって、スウェーデン海賊党からの支援は、重要な意味を持つ。もし、海賊党が来月の総選挙にて議席を獲得した場合、同党はスウェーデン政府内部からサイトを運営することになるのだが、法的手続きにより同サイトを停止しようとしても、議員特権を行使してはねつけることができるようになるのだ。」

しかし、今年9月の選挙活動期間中、普通の人は海賊党の「か」の字も聞かなかった。。
結果、海賊党は議席獲得最低得票率4%に及ばず、議会入りを果たすことはできませんでした。

もし、議会入りが実現していれば、ウィキリークスがサーバーをあっちゃこっちゃ移す必要もなく、公電公開はもっとスムーズに行われていたでしょう。

まさかスウェ─デンの国政選挙がウィキリークスの運命を左右することになるとは、さすがにTassaも思い至りませんでした。次の選挙は4年後です。遠いなあ…。

※ちなみに知的財産権強化法(IPRED法)ついてのエントリーも同ブログで読めます!(すごい…)

2 件のコメント:

  1. Nice work! (Although I am not able to proof-read it. :))

    Cheers!

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  2. Thanks! And sorry that I did't reply earlier (in case you come back here).
    I hope my translation has no serious mistake X(

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