2010年12月14日

ストックホルムでの自爆「テロ」にまつわる不可思議な点


ストックホルムのドロットニング通り(Drottninggatan)とオロフ・パルメ通り(Olof Palmes gata)の交差点で、1211日夜、1人の青年が車を使って自爆し、亡くなりました。
この事件は他国でも大きなニュースになりました。

ところで、この事件にはおかしな点がいくつかあるので、それらを列挙したいと思います。
いずれも噂レベルでなく、大手メディアが報じたものです。

【不可思議な点】
軍の関係者は事件が起こることを知っていた?
とある軍関係者が知人に対し、「ドロットニング通りは危ないから近づかない方がいい」という旨のショート・メッセージを数時間前に送ったとの報道がありました。

青年の携帯電話からスウェーデン保安警察、通称Säpoとスウェ─デンの通信社 、TTに犯行予告が送られたのは12分前。どうして数時間も前に現場が「危ない」、と分かったのでしょうか。(ちなみにこの通りは街の中心地にあるショッピング・ストリート。)
分かっていたのなら、なぜ何の対策もしなかったのでしょうか。

これに対し、ベアトリス・アスク(Beatrice Ask)法務大臣は「メディアの言うことだから、信用できない」との返答をしています。

しかも大手紙Svenska Dagbladetからは「軍関係者は爆破前に警告していた(Försvarsanställd varnade före dåden)」という題の記事が検索できなくなっています。キャッシュでは見れますが。

不自然な録音の声
自爆をしたとされている青年が犯行について事前に語っていた録音があります。
少し穿った見方かもしれませんが、私は内容よりも、その音声の不自然さが気になりました。
ひずみがある、と言っているのですが、なぜひずみが生じたのでしょう…

【この事件によって何が起ころうとしているのか?】
FBIスタッフをスウェ─デンに派遣
事件後、アメリカのFBIは応援部隊を送るとSäpoに申し出ました。Säpoはこれを承諾。FBI爆弾処理班の7人がスウェ─デンに入国します。実に迅速です。アスク法務大臣からは「国際間で警察の協力体制が機能している良い例だ」とのコメント。世界のどこかで自爆テロが起きる度に、アメリカはFBIのスタッフを送ってくれるのでしょうか。

警察の権限強化
ある専門家は、この事件で「数十人から数百人が巻き込まれる可能性もあった」としながらも、自爆テロによって負傷する確率は「衛星か隕石が頭に落ちてくるのと同じくらい」とニュース番組で発言しました。
(つまりこの事件、ハザードは高いがリスクは低い)

しかし、新聞ではこの専門家の話の前半しか取り上げられていない。また、ほとんどの識者、政治家の今回の事件に対する見解は「危機的状況であり、治安強化が必要」。

現在、通信傍受の権限はスウェーデン国防電波局(FRA)にあります。FRA法によると、建前として、国外からの通信のみが傍受可能であり、スウェ─デン国民の通信を傍受するのは違法ということになっています(でも、そんな区別は無理。Gmail.comだって国外からの通信に含まれてるのだ…)

しかし、この事件を機に警察に傍受権を与え、国内の通信傍受もできるようにしようという発言が法務大臣からありました。また、野党である社会民主党も、選挙前は通信傍受法そのものの廃棄を訴えていたのに、Säpoに傍受・監視の権限を拡大しようという公式発言がありました。

どの国でもそうですが、こうした事件が起きると、治安強化という名の下でいろんな政策が通りやすくなります。警察を増やしても、根本的な解決にならないということで北欧社会はもともとやってきたはずなんですけどね…。(厳罰化の世界的な広がりについては社会学者ロイック・ヴァカンの本がおすすめです。)

イスラム教系移民に対する差別
自爆をした青年がイスラム教徒だったことから、イスラム教徒に対する差別が高まるのではとの危惧もあります。
9月の選挙で議会入りを果たしたスウェ─デン民主党(移民排斥政策を提唱)の党首秘書官Alexandra BrunellはTwitter上で「#ついに(#Äntligen)」というハッシュをつけたツイートをしました。1人の人間の命が失われた事件に対して、です。これにはさすがに各方面で反感を買いましたが。

WikiLeaks関連の報道、SVTで昨日はゼロ
リーク公電が注目される中、この事件によってメディアの関心は若干ウィキリークスからそれてしまったような感じがします。日にちが経ったからニュースで取り上げるのが減る、というのはそれほどおかしなことではないとは思います。しかし、この事件は、ほとんどメディア・スクラムの様相を呈してきています。

このタイミングでこの事件が起きたことは偶然なのでしょうか。

[追記]
在ストックホルム日本大使館からは以下のメールが送られているそうです。


ストックホルムで起こった自爆テロについて以下のとおりお知らせいたします。

1.報道によれば、12月11日午後5時ごろ、ストックホルム中心部のオーロフ・パ
ルメ通りで、クリスマス前の買い物客でにぎわう中、 連続して2回の爆発があり
、1人が死亡、2人が負傷する事件が発生しました。
最初にガス缶を積んだ自動車が爆発し、数分後に約300メートル離れたブリッガ
ル通りで2度目の爆発が発生しました。

2.上記事件の背景は現時点では不明ですが、爆発の直前に、スウェーデン軍の
アフガニスタンへの派兵やスウェーデン人作家が過去 にムハンマドの風刺画を
描いたことを引き合いに犯行をほのめかす内容の電子メールが、警察及び報道機
関あてに送付されており、 この事件との関係も言及されています。
また本件に関し、警察の発表によりますと自爆テロの可能性が高く、ビルト外
相はテロ事件であるとの見方を示しています。

3.在留邦人の皆様におかれましては、テロ事件や不測の事態に巻き込まれるこ
とのないよう、最新の関連情報の入手に努め、テロの 標的となりやすい場所(
不特定多数が集まる場所、政府・警察関係施設、公共交通機関、観光施設など)
を訪問する際には、周囲の 状況に十分注意を払うなど慎重な行動をとるように
してください。
また、テロ事件が発生した場合の対応策を再点検し、状況に応じて適切な安全
対策を講じられるよう心掛けてください。
さらに、緊急事態に備え、連絡手段を常時確保できるよう心がけてください。

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