2010年12月21日

老舗リークスとウィキリークス

[追記]
今年4月、ガーディアン紙がすでにCryptomeのウィキリークス・リークについて詳細にまとめていました!
Who watches WikiLeaks?(これ訳した方が早かった…)
norfillsさんのツイートで知りました。

***

とある新聞のコメント欄に、
「なんでウィキリークスなんてのがこんなに騒がれてるのか、俺にはちっとも分からんよ。だって、こんなの新しくも何ともないだろ。」
とありました。

私はまた、お馴染みの「ウィキリークス意味なし」論者か…と思っていたのですが、よく読んでみると、

告発サイトなんてものは前からあったのに、何で今さらウィキリークスだけがこんなに注目を浴びてるの?ということをこの人は言いたかったようでした。

告発サイトは確かに昔からありました。
(ウィキリークスはプレゼンがとてもうまかった、ということは大きいとお思います。アサンジも表に立つ人間という点では、かなり好ましい見た目と話術がありますし。)

そういった老舗リークスとも呼べるようなサイトの代表格がCryptomeです。



Cryptomeは1996年から、在野の研究者と、設計者のJohn YoungとDeborah Natsiosによって運営されいて、2010年11月までに58,000のファイルを公開してきました(25ドルでそのアーカイブDVDも売っています)。

サイトいわく、
Cryptomeは政府が発行を禁じているドキュメントを受け付けます。特に、表現の自由、プライバシー、暗号、民間及び軍両用のテクノロジー、国防、諜報、密約(公開または機密になっている書類)についてのドキュメント。ですが、それらに限られているわけではありません。

とのこと。

戦争関連のリークは、特に注目を集め、その結果、政府からもマークされるようになりました。
(サーバーダウンとか、FBIがやってきたりとか)

先輩にあたるCryptomeを、当然ウィキリークスも認知していたわけで、ウィキリークスとCryoptome設計者のYoungは2006年から2007年にかけてメーリング・リストを通じた交信がありました。

全部をきっちり読んだわけではないのですが、どうやら最初は協力的だったYoungが徐々にウィキリークスのやり方が気に入らなくなったようで、その結果、「秘密のメーリング・リスト」でのやり取りを、なんと自分の告発サイトで公開してしまったのです。

Youngはウィキリークスのやり方はCIAとかソロスのやり方と一緒だ、と非難しています。
「中国の反政府活動家がこっそり米国や中国からたんまりもらっている[ウィキリークスだって、裏からもらってるんじゃないか?ということが言いたい]。何が連帯だ!」

「お前らは詐欺師だ!俺はこのメールを公開するからな!」

とかなり強い調子。

それに対してアサンジは
「ジョン、それはやめてくれ。君はこのメールを受け取ってるんだから、隠し事なんてしてないって分かるだろう。」
「我々がCIAの手下だって君が思ってるとしても、メーリング・リストにいる人間全員をそういう風に扱う(晒す)べきじゃない。」
と答えてます。

まあ、結局Youngは公開したわけですが。

これを読んでいると、初期の手探りの状態も垣間見れます。(誰がメンバーなのかお互い分からない、そのことを楽しみながらもちょっと不安である、とか、自分の電話番号は公開しないで~とか)

あのダニエル・エルズバーグにもコンタクトをしていたようです。
リークの達人であるあなたに指示を仰ぎたい、そして保護者の立場になってほしいとお願いしています。ちなみに、そのメールには、2006年の時点ですでに13ヶ国から100万以上のドキュメントを受け取っていると書かれています。

なかなか返事が返ってこないもんだから、「ああ、ちゃんと届いてるかな。迷惑メールに分けられてるとかないかな。誰かエルズバーグのメール・ボックスをチェックしないか。」と心配していたよう(笑)

2007年の1月にやっと返事が来たと思ったら
「いやー、君らのサイトは相当やばいね。幸運を祈るよ。あと、サイトで僕を引用してくれたのは嬉しいけど、あれ、本当はアビー・ホフマンが言ったんだよ。自分はバカで傲慢だったかもしれないなあ。でもあの時ほど僕はもう若くないから。」
とだけ書かれていました。

個人的に印象的だったのは、アサンジの「言葉づかい」に対する洞察。

「僕たちは言葉づかいについて一貫性を持つべきだ。単語やフレーズは、使われ方や経験と共鳴して、意味を抽出する。たとえば、『よくある質問』のところで、『倫理的なリーク』というフレーズがたまに使われているが、僕たちはこのフレーズを常に使うべきなのか?『リーク』という言葉自体はネガティブな意味をを帯びる。『倫理的』は非常にポジティブだ。『倫理的なリーク』はポジティブ。だけど、『リーク』に『倫理的』をくっつけている限り、『リーク』だけ切り離したとき『リーク』は非倫理的ということになる。このフレーズや他の言葉から離れてみることはできないだろうか?『倫理的リーク・ムーヴメント』。力強い。だけど、このフレーズで僕たちのヴィジョンの熱気は消えてしまわないだろうか。

僕らなりの『イラク自由作戦(Operation Iraqi Freedom)*』の言葉を、僕たちは見つけなければ。もっとも病的で邪悪な僕たちの敵でさえも、夜には思わず口ずさんでしまうようなそんな祈りと浄化の言葉を。

僕らには新たなフレーズが必要だ。『リークまとめ役』、『メール送信ボランティア』、『倫理的漏洩者』『WLサーバー・オペレーター』などなどに替わるフレーズが。」

*訳注:「不朽の自由作戦」への挑戦として。

以下、原文。
> We should be consistent in our use and invention of language. A word or
> a phrase extracts meaning from its resonance with other usages and our
> experiences.  For instance in the FAQ we sometimes use the phrase
> "ethical leaking". Should we always use this phrase? 'leak' by itself
> carries a negative. 'ethical' a strong positive. 'ethical leaking' a
> positive. But it does isolate 'leaks' as being non-ethical unless we
> stick 'ethical' on them. Can we make a movement from this phrase and
> others? 'The ethical leaking movement'. Powerful. Can it survive the
> heat of our vision?

> We must find our own 'Operation Iraqi Freedom' s -- blessings and
> sanctifications that even our most diseased and demonic opponents will
> find themselves chanting to each other in the night.
>
> We need a phrases for 'leak facilitator', 'mail drop volunteer',
> 'ethical leaker', 'wl server operator' etc, etc.

言葉が思想や運動を形作る、ということを大事に考えている人なのだなと感じました。
また、リークが誰かを傷つけるかもしれないということに対して、決して無頓着でなかったということも感じ取れます。

ちなみに、これに対して仲間の1人は、
確かにWLが批判されるとすれば、無差別なリークという点かもしれない。でもWLが倫理的だということを強調しておくのはいい考えだとおもうけど。
と応答しています。

話が脇道にそれて申し訳ないのですが、wikileaks.infoというWLのコピー・サイト(ミラーでなく)を巡る議論があるようです。

このMLを見ると、wikileaks.infoはwikileaks.orgと同時にできたことが分かります。

今確実に分かっていることというと、
wikileaks.infoは

非公式サイト
wikileaks.orgのドメインがリダイレクトされている
今のところ有害サイトではない(将来的な可能性は示唆されている)
ロシアの犯罪集団のサーバー(Webalta、通称Wahome)にある
wikileaksは認知してきた(少なくともアサンジがガーディアンで公開ツイート・チャットに参加した12月3日までは)

などです。

このロシアのサーバーというのがSpamhausが懸念している一番の原因と思われます。
実際、有害サイトは多いので。
でも、どんなサイトでも放置状態、規制がないので、「危ない」サイトにとっては使い勝手がいいのも確かです。だからなのか、Anonymousもこの危険なサーバーを利用しています。
これ以上のことは、分かりません。
点と点をつなげていろんなことを想像できますが、はっきりしたことが言えない今、とりあえずは、このサイトについてはここまでにしておきます。

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