2010年12月9日

建前の復権:WikiLeaksの意義 〜アサンジ氏のインタビューより〜


フォーブスでのインタビューの翻訳が日経新聞で読めるようになっています。



以下、告発の意義を語っているところの抜粋。

WikiLeaksの根本的な意義

今回の案件[注:公電のこと]も、同じようなものになるだろう。言語道断な法令違反や倫理にもとる行為もいくつか明らかになるが、それに加えて、その背後にある意思決定の構造、社内の経営倫理といったものも明らかになる。そこに非常に大きな価値がある。
イラク戦争の機密文書についても同じで、多数の犠牲者を生んだ注目すべき[注:報道価値の高い]事件の記録も含まれているが、そこから戦争の全体像が分かることに大きな意義がある。

企業に関わるリークが50%くらいだというWikiLeaksが、健全な市場を作る一助となる

不誠実な企業が誠実な企業よりも内部告発によってマイナスの影響を受けるということは、誠実なCEOが誠実な会社を経営しやすくなることに他ならない。それが我々の基本的な考え方だ。オープンで誠実な企業と、閉鎖的で不誠実な会社とのせめぎあいの中で、我々は後者に対して社会的評価の面でとほうもない負荷をかけようとしている。

最終的には、質の高い製品を作る誠実な企業が、質の低い製品を作る不誠実な企業に対して競争優位に立てる状況が生まれるのだ。また従業員を大切にする企業の方が、大切にしない企業よりも有利になる。

私に特定の思想や経済思想の持ち主というレッテルを貼るのは誤りだ。私は様々な考え方を学んできたが、その1つが米国流のリバタリアニズム(絶対自由主 義)、市場重視のリバタリアニズムだ。このため、こと市場に関してはリバタリアンの立場をとるが、政治学や歴史の知識もあるため、自由市場は自由になるよ う働きかけなければ最終的に独占が生じることは理解している。ウィキリークスは資本主義をより自由で、倫理的にするためのものだ。

***

この数十年間、国連の舞台などで人権とか自由についてのいろんな取り決めが行われた。それは、多くの場合、建前となってしまうかもしれないけど、でもそれでうまく事が運ぶこともある。
今の現状、例えばWikiLeaksへの露骨な圧力とかを見ると、もうその建前すら無視され崩壊しつつあるんだなってことが、はっきりしてしまったような気がする。

一国レベルの法律も国際法も、1人の人間を捕まえるためにこれだけ『例外』を作れる。1つのウェブサイトを閉鎖するためにこれだけの『例外』が許される。そしてACTAを始め、この建前をも反故にしてしまうような新たなルール作りが進行している。

ウィキリークスは建前を現実世界で通じるものにしようとしているんだと思う。
今まで決めてきたルールに本質的に忠実であろうとしているだけなんじゃないか。

誠実な行いが評価され、不誠実な行いが正される、そんなことがまったく当たり前でない世の中を、どうにかして変えたいという意志が原動力。そのためには、なんとなく企業が悪いとか、政府が悪いと言うのではなく、誰のいつのどんな意思決定が、どんな結果を招いているのかをきちんと指摘することが必要。

だから、ウィキリークスを支援する人を名指しで評価し、反対に潰そうとする人を名指しで非難することも大事だと思う。

それにしても、この人は本当に頭がいい!と心底思った。
PCだけじゃなく、数学、物理も学んできたとかもそうだけど、話の運び方が巧みで。
インタビューとかチャット上の質問とか、ほとんど即答しなきゃいけないような場面でも、完全に理路整然と無駄なくしゃべってる。小論文でも読んでるような気分になる。
あと、言葉のセンス。ガーディアンの一問一答で、「各国政府が権力基盤をfiscalise[会計化]してきた」みたいなことを言ってたけど、うまい造語だと思った。アサンジさんが発明した言葉じゃないんだろうけど、現代政治を一発で表現する動詞だと思った。
WikiLeaksの意義をいろんな人が書いているけど、結局この人の表現が一番説得力があって洗練されてると思う。

あんまり彼本人に関心を寄せてはいけないとは思いつつ、スゴいと思わずにはいられない…。

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